【BIM事例‐情報管理】鹿島建設‐分析課題⑰BIMに基づくドキュメント管理の有効性(連載)
目次
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第一回:【BIM事例‐情報管理】鹿島建設‐分析課題①BIM を活用した管理領域、OIR の定義(連載)
第二回:【BIM事例‐情報管理】鹿島建設‐分析課題②ライフサイクルコンサルティング業務(連載)
第三回:【BIM事例‐情報管理】鹿島建設‐分析課題③ISO19650 プロセスと情報要件定義(AIR)(連載)
第四回:【BIM事例‐情報管理】鹿島建設‐分析課題④国際標準、オープンBIM、IFCの説明(連載)
第五回:【BIM事例‐情報管理】鹿島建設‐分析課題⑤ソフトウェア・エコシステムの俯瞰(連載)
第六回:【BIM事例‐情報管理】鹿島建設‐分析課題⑥共通データ環境CDE-BIMsyncの説明(連載)
第七回:【BIM事例‐情報管理】鹿島建設‐分析課題⑦CDEの位置付け(鹿島用途)(連載)
第八回:【BIM事例‐情報管理】鹿島建設‐分析課題⑧設計、属性情報の管理プロセス(dRofus)(連載)
第九回:【BIM事例‐情報管理】鹿島建設‐分析課題⑨引渡、FM 向け、レコードモデルの比較(SimpleBIM の利用)(連載)
第十回:【BIM事例‐情報管理】鹿島建設‐分析課題⑩ライフサイクル BIM 更新プロセス (連載)
第十一回:【BIM事例‐情報管理】鹿島建設‐分析課題⑪BIM を活用した FM (連載)
第十二回:【BIM事例‐情報管理】鹿島建設‐分析課題⑫建物アーカイブのデータベース構築、更新作業の削減(連載)
第十三回:【BIM事例‐情報管理】鹿島建設‐分析課題⑬BIMを活用したファシリティーコスト(連載)
第十四回:【BIM事例‐情報管理】鹿島建設‐分析課題⑭BIM に紐づけた FM 業務データの相乗効果による付加価値(連載)
第十五回:【BIM事例‐情報管理】鹿島建設‐分析課題⑮BIMを活用した状態基準維持管理による作業効率向上(連載)
第十六回:【BIM事例‐情報管理】鹿島建設‐分析課題⑯BIMを活用したスペース管理の効率化(連載)
「建築BIM推進会議」について詳しくまとめた記事は、こちらをご覧ください。
概要
事業の目的
鹿島建設では、令和3年度 BIM を活用した建築生産・維持管理プロセス円滑化モデル事業(パートナー事業者型)として、「BIM を活用した建物ライフサイクル情報管理とデジタルツイン及びソフトウェア・エコシステムによる支援の検証」を実施しています。
大きなテーマとしては以下2点を掲げています。
- ①BIM データの活用・連携に伴う課題の分析
- ②BIM の活用による生産性向上、建築物・データ価値向上、様々なサービスの創出等を通じたメリットの検証
さらにテーマを分析する課題として、下記2つの課題を設定。
- 課題 A) 運営維持段階へ引き渡す BIM の作成、資産情報モデル(AIM)の整備と情報共有プロセスの最適化
- 課題 B) 運営維持段階で活用するライフサイクル BIM の整備、情報の充実化、更新、情報価値の向上
次世代BIM-FM検証のために必要なBIMに対する情報要求をプロジェクトの初期段階で確定し、BEPに反映させます。BIMに加えてスマートBMソリューションとの連携によってデジタルツインを構築し、建物の情報を一元管理。現在の情報管理プロセスの非効率性と冗長性を継続的に特定・改善し、BIMデータの有効性、恒久性、拡張性、及び、公共性を確保することを目標としています。
物件概要
課題AとBについて、新築・既存物件の場合において検討ができるよう、新築物件の「博多コネクタ」と既存物件の「両国研修センター」を対象物件としています。
新築物件である博多コネクタ(旧名:博多駅前四丁目)は、鹿島建設が中長期的に所有している賃貸オフィスビルです。ビル管理業務(以下 BM 業務)と不動産管理業務(以下 PM 業務)の双方を鹿島建物総合管理が実施しており、当該物件の BM・PM 業務の状況について、定期的に報告を受ける体制を築いています。このため、鹿島グループが連携して組織・AIR を整理し、データベースの構築を行うことが可能となっています。
既存物件で改修工事を行う両国研修センターは、鹿島建物総合管理が所有者で、社員の運営維持管理業務の研修のために利用している施設です。鹿島建設は鹿島建物総合管理とともに、グループ連携の一環として、オープン BIM を活用した FM ソリューション(施設の運営維持管理)や、鹿島のスマート BM(以下スマート BM)との連携等を開発する対象物件として、両国研修センターを 3 年前に選定。その過程において、当該物件の施設管理の最適化の検証に着手しています。
検証する課題:BIMに基づくドキュメント管理の有効性
資産情報モデル(AIM)を形成するためには、BIM以外にドキュメント情報の整理等も必要です。建物アーカイブにドキュメント(取扱説明書、手順書、画像、360度画像、動画、図面等)を紐づけると、管理が容易になります。ドキュメント管理には、以下が含まれます。
- ドキュメントのバージョン管理
- ドキュメントの履歴から過去のバージョンのダウンロード
- Google ドライブへアップロード・ダウンロード
- ドキュメントのコンテンツ検索
- ドキュメントをメールアドレスに自動送信
サプライヤーや請負業者はこのモジュールを使用して、製品仕様書、納品書、取扱説明書等のドキュメントを提出します。特定のユーザーロールを設定して、特定の建物要素の情報にアクセス権を与えることができます。
検証の内容
バージョン管理、ドキュメント提出と承認プロセスが自動化されるため、具体的な目標として「エラー数が減り、提出、承認、検索等の時間を半減すること」を設定し検証しました。
ドキュメント管理に必要な時間及び費用(人工)
- シナリオ①:単独アプリケーションで管理する場合
- シナリオ②:BIM(建物アーカイブ)に登録してマスター管理
検証結果
FMシステムを導入する前と後の状況を図で表すと、上図のようになります。日常業務では、写真、図面や仕様書、報告書などの数多くの種類が発生します。また、改修工事の下請け業者との書類や工事履歴のやりとりも必要になります。これらを紙ベースで運営すると、コストも時間も掛かってしまいます。
ただし、FM システムを導入する前には準備が重要となります。特に「ドキュメント」については、どの種類を、誰が、どこにアップロードして管理するかといったことを十分に検討し、決定しておく必要があります。
ドキュメント管理
ドキュメント管理には、上図の「モジュール」を使用します。
ドキュメント検索
ドキュメントに日付や「点検写真」といったキーワードを登録すると、そのドキュメントを簡単に検索可能になります。例えば2022 年 1 月 10 日に登録した点検写真の場合、MainManager の検索機能を利用して上図のように検索します。
維持管理ドキュメント
「維持管理ドキュメント」には、維持管理に関わるドキュメントを登録します。ドキュメントの種類には、施工中の 360 度写真や作業の手順書、チェックリスト、オーダーシート等が挙げられます。具体的には維持管理の際、仕上げ情報や壁内の配管やダクトの状況を確認するために使用できます。
労力と時間の定量的な測定事例
シナリオ①:単独アプリケーションで管理する場合
従来、平面図や機器の取り扱い説明書などは、施工者から引き継ぐ完成図書として、紙でファイリングし、管理室の戸棚に保管しています。有事の際は戸棚から関係書類を探して利用しています。
シナリオ②:BIM(建物アーカイブ)に登録してマスター管理
システム上で機器(BIM)と紐づいてドキュメントを管理できるため、ピンポイントでほしい情報を即座に検索して引き出せ、作業性の向上につながります。
【発生例】
巡回時に RF の冷温水発生機のエラーコードを確認。そのエラーコードがどのような事象か確認する事例となりました。
【トラブルが発生した例】
事象:7階の小便器の洗浄水が流れない
原因:センサーの電池切れ、管理室は1階
まとめ
巡回時に RF の冷温水発生機のエラーコードを確認し、そのエラーコードがどのような事象か確認する事例が発生しました。結果として目標の 50%を上回る時間の節約ができたため、BIMの活用はドキュメント管理に役立つことが分かりました。