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【BIM事例‐情報管理】鹿島建設‐分析課題⑧設計、属性情報の管理プロセス(dRofus)(連載)

掲載日:2022年08月18日

他の連載記事はこちら

第一回:【BIM事例‐情報管理】鹿島建設‐分析課題①BIM を活用した管理領域、OIR の定義(連載)

第二回:【BIM事例‐情報管理】鹿島建設‐分析課題②ライフサイクルコンサルティング業務(連載)

第三回:【BIM事例‐情報管理】鹿島建設‐分析課題③ISO19650 プロセスと情報要件定義(AIR)(連載)

第四回:【BIM事例‐情報管理】鹿島建設‐分析課題④国際標準、オープンBIM、IFCの説明(連載)

第五回:【BIM事例‐情報管理】鹿島建設‐分析課題⑤ソフトウェア・エコシステムの俯瞰(連載)

第六回:【BIM事例‐情報管理】鹿島建設‐分析課題⑥共通データ環境CDE-BIMsyncの説明(連載)

第七回:【BIM事例‐情報管理】鹿島建設‐分析課題⑦CDEの位置付け(連載)

第八回:【BIM事例‐情報管理】鹿島建設‐分析課題⑧設計、属性情報の管理プロセス(dRofus)(連載)

第九回:【BIM事例‐情報管理】鹿島建設‐分析課題⑨引渡、FM 向け、レコードモデルの比較(SimpleBIM の利用)(連載)

第十回:【BIM事例‐情報管理】鹿島建設‐分析課題⑩ライフサイクル BIM 更新プロセス (連載)

「建築BIM推進会議」について詳しくまとめた記事は、こちらをご覧ください。

概要

事業の目的

鹿島建設では、令和3年度 BIM を活用した建築生産・維持管理プロセス円滑化モデル事業(パートナー事業者型)として、「BIM を活用した建物ライフサイクル情報管理とデジタルツイン及びソフトウェア・エコシステムによる支援の検証」を実施しています。

大きなテーマとしては以下2点を掲げています。

  1. ①BIM データの活用・連携に伴う課題の分析
  2. ②BIM の活用による生産性向上、建築物・データ価値向上、様々なサービスの創出等を通じたメリットの検証

さらにテーマを分析する課題として、下記2つの課題を設定。

  • 課題 A) 運営維持段階へ引き渡す BIM の作成、資産情報モデル(AIM)の整備と情報共有プロセスの最適化
  • 課題 B) 運営維持段階で活用するライフサイクル BIM の整備、情報の充実化、更新、情報価値の向上

次世代BIM-FM検証のために必要なBIMに対する情報要求をプロジェクトの初期段階で確定し、BEPに反映させます。BIMに加えてスマートBMソリューションとの連携によってデジタルツインを構築し、建物の情報を一元管理。現在の情報管理プロセスの非効率性と冗長性を継続的に特定・改善し、BIMデータの有効性、恒久性、拡張性、及び、公共性を確保することを目標としています。

物件概要

課題AとBについて、新築・既存物件の場合において検討ができるよう、新築物件の「博多コネクタ」と既存物件の「両国研修センター」を対象物件としています。

新築物件である博多コネクタ(旧名:博多駅前四丁目)は、鹿島建設が中長期的に所有している賃貸オフィスビルです。ビル管理業務(以下 BM 業務)と不動産管理業務(以下 PM 業務)の双方を鹿島建物総合管理が実施しており、当該物件の BM・PM 業務の状況について、定期的に報告を受ける体制を築いています。このため、鹿島グループが連携して組織・AIR を整理し、データベースの構築を行うことが可能となっています。

既存物件で改修工事を行う両国研修センターは、鹿島建物総合管理が所有者で、社員の運営維持管理業務の研修のために利用している施設です。鹿島建設は鹿島建物総合管理とともに、グループ連携の一環として、オープン BIM を活用した FM ソリューション(施設の運営維持管理)や、鹿島のスマート BM(以下スマート BM)との連携等を開発する対象物件として、両国研修センターを 3 年前に選定。その過程において、当該物件の施設管理の最適化の検証に着手しています。

分析する課題:設計、属性情報の管理プロセス(dRofus)

背景

ここではまず、属性情報をメタデータとして一元管理することのメリットを改めて整理していきます。

これまで鹿島建設では、企画から施工まで共通のモデルを作り込んで行くワークフロー(いわゆるワンモデル BIM)ではなく、フェーズや用途に応じて各々の BIM モデルを作成するワークフローを選択してきました。その目的としては、各フェーズや分野において適切なツール、用途に応じた LOD(Level of Development)を選択することを可能とし、モデリングを最小限とすることでデータ量を抑制し、責任の所在を明確にすることが挙げられます。

当ワークフローでは、モデルを分けた分野間の調整を、分野毎の IFC モデルを重ね合わせることにより行ってきました。しかし「意匠設計モデルから躯体施工モデルへ」、「構造設計モデルから鉄骨製作モデルへ」といった、フェーズ間のデータの調整・引き渡しに関しては、2D設計図で行われてきたのが現状です。その背景には、2D 設計図があくまで正であり、BIM モデルは参考扱いとなっていることや、施工モデルを一から生成しても大きな手間とならないなどの理由があるでしょう。しかしモデル入力の二重手間が発生していることに変わりはなく、前工程で入力されたプロパティ情報が有効活用されることはありません。一方で、維持管理モデルは設計・施工モデルデータをベースに構築されるのが一般的ですが、設計・施工は各プロセスの目的に応じてデータが作成されるため、維持管理に必要な情報が十分でないケースが多く生じています。

これらの課題への対処として、設計・施工モデル(PIM)から維持管理モデル(AIM)までの属性情報をメタデータ管理ツール dRofus にて一元管理することを検証しました。ここでは、各フェーズにおいてdRofus のデータベースから必要な属性情報をオーサリングツールに PUSH &PULL し、最適な PIM・AIM を構築・更新していくワークフローを目指しています。

メタデータ管理ツール「dRofus」とは

「dRofus」は、建物の要件定義、部屋単位の仕様に関するデータを計画・管理・更新することができる単一のクラウドベースのデータベースです。ArchiCAD, Revit, IFC と双方向のデータ同期機能を持ち、各オーサリングツールおよび dRofus クライアントソフト、Web ブラウザから建物のライフサイクル全体にわたる建物情報へのアクセスを提供しています。

Model-Driven Design から Data-Driven Design へ

一般的な設計プロセスでは、プロジェクトの要件はスケッチや部屋・エリアリストのExcel、技術的事項が記載された PDF など、様々な形式で保管・共有されます。確定されたプロジェクト要件に基づき BIM オーサリングツールを使用して 3D モデルを構築し、モデルの検証と修正を重ねて精度を高めていきます。この設計プロセスは「Model-Driven Design」とも呼ばれ、今や建設業界の主流となり、オーサリングソフトやモデル共有基盤である CDEなど、BIM モデルを中心としたソフトウェア開発やデータ連携が展開されてきました。

これに対して「dRofus」は、モデリング前にプロジェクト要件と建物データを同一データベースにて定義し、それらを基に予算と面積、各種仕様の観点から検証を行うツールです。BIM モデルによる検証・修正を最小限に抑え、設計プロセスの効率化を図ろうとするものであり、dRofus はこのプロセスを「Data-Driven Design」と位置付けています。建物に関する情報を BIM モデルやドキュメントの形でまとめる従来のプロセスに対し、幾何形状情報以外の情報を中央データベースに集約するという点で、プロジェクト推進手法の考え方が大きく異なっているのが特徴です。

dRofus 建物データベース

dRofus において建物データベースを作成しました。部屋単位で面積、仕上げ、各種設備、建具などの仕様を定義。

またdRofus と ARCHICAD を Add-on で連携させ、dRofus 上で定義した部屋データとモデルデータをマッピングし、同期させました。部屋名、部屋番号、仕上げ、建具等については、dRofusのデータを反映させ、設計面積や天井高さなどについてはモデルデータから正味の値を dRofus にインポートしました。

維持管理の分類体系をdRofusで整理

分類体系の整理

維持管理において資産分類や資産運用の意思決定に用いる分類体系(Uniclass2015、OmniClass 等)を dRofus で整理しました。
今回の対象物件で分類体系として採用した Uniclass2015 は英国の NBS(NationalBuilding Specification)が管理している建設情報分類体系で、施設の構成要素を 12 の分類テーブルで整理したものです。その内、製品オブジェクトは EF(構造や機能)全 76種類、Ss(系統)全 2,086 種類、Pr(材料や部品)全 6,870 種類の3つのテーブルの中から、それぞれのコードを持たせることにより記述が可能に。

分類体系の整理については、プロジェクトの建築仕様に応じて以下の手順に分けられます。

① 分類システムマスターを整理する

② BIM モデル入力する

しかし誰がどのタイミングで①を整理し、誰がどうやって②を入力するかについての確立された方法論や知見がなく、議論が分かれています。本実証研究では、先行事例をもとに、①と②について、誰がどのタイミングで整理しどのように入力するのかを上表にまとめています。

推奨パターンと代替案

過去の海外論文や国内事例の結果をもとに、推奨パターンと代替案を上表にまとめました。

まず1つ目の海外論文の事例では、運用維持管理フェーズに BIM の採用が限定的な理由として「BIMが資産管理や運用保守の情報要件に十分に対応できていないこと」を挙げ、その要因は BIMの構築プロセスに O&M 担当者が関与していないことにあるとしています。そこで、初期設計段階にワークショップを開催し、資産台帳を含む資産管理文書を見直し、維持運用されている資産の種類を把握し分類システムを構築し、そのマスターデータをもとに、設計 BIM モデルを構築することを試みました。

次に2つ目の海外実証 PJ は、BIM による竣工後の建築資産のデジタル化と維持管理・運用の高度化に取り組んだプロジェクトとなっています。竣工後に維持管理 BIM を作成することになったため、施主が分類システムを構築し、弊社が IFC 編集ソフトウェアを用いて As-Build モデルへ分類システムを追加しています。

最後に3つ目の国内の事例は、本実証実験の対象プロジェクトです。本案件でも施工中・竣工後に維持管理モデルの作成に着手したため、施工フェーズ以降に分類システムを構築しBIM モデルへそれらを追加した。2 つ目の海外実証 PJ との違いは、分類システムを建物管理者がまとめた点と、BIM モデルの入力を属性管理ソフトウェアにより行いその情報をBIM モデルと同期させた点です。

分類システムの構築においては、設計モデル作成前に資産管理者や O&M 担当者、設計者を交えて検討することが望ましいでしょう。本実証実験では、竣工後に BIM モデルのオブジェクト名称から資産管理者・O&M 管理者が Pr と Ss を類推することで、分類システムマスターデータの構築を試みました。しかし同じオブジェクト名称でも複数の系統や用途に渡って使われている場合があり、Pr と Ss のマッピングは簡単ではありませんでした。

そのため設計モデル作成前に、必要な Pr と Ss をマッピングしたマスターデータを作成し、設計者がオーサリング・ソフトウェアを用いて BIM モデルに入力していくことが効率的な方法だと言えるでしょう。またBIMモデルへの入力については、dRofus にコードを入力し、その値をオーサリング・ソフトウェアと同期するという方法も可能です。必ずしもオーサリング・ツールを使用する必要が無いため、設計者以外の関係者が入力作業を行うこともできます。本実証実験では、dRofus を用いて、施設管理に用いるセキュリティ、入室可能な時間・曜日、入室立会の要否、共用部/専用部など、ゾーニング要件を各部屋に設定しました。

情報の引き渡し

維持管理 BIM を作成する際は、設計・施工から維持管理への情報の引き渡しを確実に行う必要があります。そのためには、維持管理に必要な属性情報を定義し、誰が入力するのかについて、プロジェクト関係者間でコンセンサスをとることが重要に。本実証実験では、社内で運用保守に必要となる設備属性情報について整理し、dRofus においてパラメーターを設定して属性情報の入力を行いました。

まとめ

メタデータ管理ツール(dRofus)にて属性情報を一元管理し、各フェーズでdRofus のデータベースから必要な属性情報をオーサリングツールに同期し、最適な資産情報モデルを更新していくワークフローを検討しました。

維持管理モデルは、設計・施工モデルデータをベースに構築されるのが一般的です。しかし設計・施工は各プロセスの目的に応じてデータが作成されるため、維持管理に必要な情報が十分でないケースが多く生じている点が課題となっています。

維持管理 BIM を作成するために設計・施工から維持管理への情報の引き渡しを確実に行うには、維持管理に必要な属性情報を定義し、誰が入力するのかについて、プロジェクト関係者間でコンセンサスをとることが重要でしょう。

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