急速に発展する建設分野での生成AI援用の現在地を多分野に渡り追跡(第十回)|深堀り取材【毎月3回更新】

本稿でも繰り返し、報告しているように、建設業においてもAIの援用範囲は多方面へと急速な拡がりをみせている。今回は、工事の進行を逐次的に時間軸で管理する工程表の作成・管理・運用業務へのAI援用の実際を報告する。
それらは、見積書や図面などの案件情報をAIが解析して工程表を自動生成する「工程表AIエージェント」、工程線をクリックするだけで、その工程の数量・歩掛を確認できる「歩掛AIデータベース機能」である。
見積書や図面などをAIが解析+工程表を自動生成する「工程表AIエージェント」の提供開始
コンクルー(中央区: 代表取締役CEO 白澤光純氏)では、中小建設会社のためのAIオールインワン業務管理ツール「コンクルーAI」の新機能として、見積書や図面などの案件情報をAIが解析し、工程表を自動生成する「工程表AIエージェント」の提供を開始した。

工程表の作成は、図面や見積を基に工種・タスクを個別に洗い出し、期間や順序を組み立てていく時間のかかる「打ち込み作業」を伴う。加えて、適切な工程の粒度や期間配分は、担当者の経験や勘に依存しやすく、ベテランに業務が集中し、経験の浅い担当者では精度にばらつきが出るなど属人化の課題があった。それらの課題は、対応できる案件数、そして売上機会を制限する一因となっていた。
「工程表AIエージェント」は、見積や図面、工事関連ファイルをアップロードするだけで、AIが内容を解析し、大項目から具体的なタスクまで工程表を自動生成する機能を持つ。自社の過去案件を踏まえた解析にも対応し、従来、手作業で行っていた工程の打ち込み時間を大幅に削減する。これによって工程表作成の負担軽減と段取りの標準化を通じて中小建設会社の生産性向上に貢献していく。
◇料金
月額9,900円〜(税込10,890円/月): 1名利用の最小構成。利用人数に応じてプランが異なる。
◇無料トライアル

蓄積された自社の過去案件を参照して工程表を作成+工程表にはAIが参照した根拠を表示
「工程表AIエージェント」の機能をより詳細にみてみよう。
「コンクルーAI」に蓄積された自社の過去案件を参照して工程表を作成するため、経験の浅い担当者でも、自社で実績のある工程構成・期間配分を基に組み立てることができる。これによってベテラン担当者がもつ段取りの感覚を特定の個人に依存させずに、データとして社内に引き継いでいくことが可能になる。
生成された工程表には、AIが参照した根拠が表示される。その工程・期間が提案された根拠をその場で確認できるため、出力をそのまま使うのではなく、現場の実態に即した工程表へとブラッシュアップしていく使い方にも対応している。
更に、生成された工程表は、案件管理・見積・発注・写真図面管理・協力業者管理などをひとつに統合した「コンクルーAI」上で作成される。そのため、工程表を基にした協力会社への発注や日程調整、現場の進捗・原価の管理まで別ツールへの転記することなくシームレスに繋げられる。
コンクルーでは、これまで見積業務を行う「見積AIエージェント」、案件情報を整備する「案件入力AIエージェント」を提供してきた。今回の「工程表AIエージェント」の提供によって、見積から受注後の段取りへと繋がる工程作表成のプロセスを自動化し、業務の流れを更に効率化できる。
AIエージェントの開発を通して次世代の統合型AIプラットフォームの実現に取り組んでいく
コンクルーでは、「コンクルーAI」におけるAIエージェントの開発を通して、中小建設会社の業務プロセス全体を自動化・最適化することを目指している。今後は、煩雑な事務作業を従来比1/10へと削減し、人手をできるだけ介さずに業務が進む、次世代の統合型AIプラットフォームの実現に取り組んでいく。
従来まで提供してきた「案件入力」「見積」の各AIエージェントに続き、今回の「工程表AIエージェント」によって案件の受付から見積、工程作成までをAIが一気通貫で支援できるようになった。更に、発注、原価・予算管理、協力会社との調整など建設業の主要業務を担うAIエージェント群を順次拡充していく。
各エージェントが案件データを共有しながら連携・協調し、状況に応じて次のアクションを提案・実行することによって部分最適ではなく、業務プロセス全体の最適化を推進し、現場とバックオフィスがAIと協働する次世代の業務運用を実現していく。
工務店や設備工事会社など主に従業員15名以下の中小建設会社に特化した「コンクルーAI」
「コンクルーAI」は、工務店やリフォーム会社、設備工事会社など、主に従業員15名以下の中小建設会社に特化したAI搭載のオールインワン業務管理クラウドだ。ITに不慣れでも即日、活用できるシンプルで直感的な操作性とわかりやすいデザインを特長としている。
案件管理・顧客管理・見積作成・原価管理・電子発注・写真図面管理・工程管理・協力業者管理・チャット・報告書作成・経営ダッシュボード・入出金管理など、あらゆる機能をひとつのプロダクトに統合している。また、協力業者向けモバイルアプリも、無料で提供されており、現場と事務所、社内と社外の連携をシームレスに行うことができる。
協力業者から受領した紙やPDFの見積書を自動で読み取り、自社の顧客向け見積書や予算管理に転記するAI機能を始め、各業務の実務に即したAIエージェントを搭載している。
クラウド化による業務の効率化に留まらず、AIによる自動化によって経営層から営業、現場担当者、事務員までの業務負担を大幅に軽減する。2024年8月の製品リリース以降、全国の中小建設会社で導入が進められている。
工程線に総施工量や自社歩掛などが自動で紐付けられる「歩掛AIデータベース機能」提供
KENCOPA(渋谷区: 代表取締役CEO安村荘佑氏)では、建設業務特化型AIエージェント「Kencopa工程AIエージェント」の新機能として「歩掛AIデータベース機能」を実装した。

新機能「歩掛AIデータベース機能」では、AIによって工程表が生成された時点で、各工程線にはAIが設計図書などの資料から読み取った総施工量や標準歩掛・自社歩掛が自動で紐付けられる。これによって工程線をクリックするだけで、その工程の数量・歩掛を確認でき、任意の値を入力・上書きすることも可能だ。その結果、従来、別々に管理されがちだった「工程」と「歩掛」が一つのデータとして自然に繋がる。
工程線と歩掛が一度、紐付けられれば、そのデータは会社全体のデータベースへ自動で蓄積されていく。担当者が特別な入力作業を意識しなくても、日々の工程作成・運用を通じて、自社の歩掛が現場横断で溜まり続ける状態を実現できる。
全社横断で各現場の歩掛が可視化されることによって工期見積もりの精緻化、工期短縮、生産性向上などのさまざまなメリットが得られる。個人の経験として閉じられていた歩掛が会社全体の資産へと変わり、見積もりの再現性と技術継承を同時に後押しする。
歩掛AIデータベース機能のデモ動画(作成: KENCOPA)
工程と歩掛の自動紐づけ+全社データベースへの自動蓄積+全社横断での歩掛の可視化
新機能「歩掛AIデータベース機能」の優れた特性を図版と共に詳細にみてみよう。
工程と歩掛の自動紐づけを実現している。AIによって生成された工程表は、直感的に操作できる工程アプリとして使えるだけでなく、工程と歩掛が紐づいたデータベースとしても活用できる。そこでは、工程線をクリックすると、AIが資料から読み取った総施工量及び標準歩掛・自社歩掛が自動で紐づいており、加えて任意のデータ入力も可能だ。

全社データベースへの自動蓄積ができる。一度、工程線と歩掛が紐づくと、そのデータは会社全体のデータベースへ自動で蓄積される。このように日々の工程表作成を通じて、独自の歩掛が現場横断で蓄積される。

全社横断での歩掛の可視化・活用ができる。全社横断で各現場の歩掛が可視化されることによって、工期見積もりの精緻化、工期短縮、生産性向上などさまざまなメリットが得られる。


設計図書と工程・歩掛・工事データを合わせた独自のナレッジデータベースの蓄積を実現
建設業務特化型AIエージェント「Kencopa工程AIエージェント」は、工程表作成、実施工程運用に要する時間短縮だけでなく、自動で蓄積される設計図書と、工程・歩掛・工事データを合わせた独自のナレッジデータベースの蓄積によって省人化と技術継承を同時に実現する。
設計図書(図面・仕様書・見積調書)をアップロードするだけで、自社歩掛や過去工事を学習したAIが工程表を対話生成する(特許申請中)。
作成後はAIが生成した工程表をたたき台に、アプリ上で直感的に編集・運用が可能だ。出来高線生成、実績入力、実施工程の作成、指定フォーマットとしてのPDF・Excelのテンプレートの登録ができ、各現場に応じて自由に出力が可能となっている。
このように建設業務特化型AIエージェント「Kencopa工程AIエージェント」上で稼働する独自の工程生成エンジンは、建築・土木・プラント・設備など幅広い工種に対応可能だ。

歩掛が「貯まらない」「使えない」などの課題を解決+「次の現場で使える資産」へと展開
新機能「歩掛AIデータベース機能」を実装した背景には、歩掛活用の障害となる多くの課題があった。歩掛は、各作業に要する人工・日数を示す工期見積もりの根幹となる数値だ。自社の現場実態に即した歩掛が蓄積されていれば、工期算出の精度は高まり、見積もりの根拠も明確になる。
一方で、実際の現場では、こうした自社歩掛の蓄積が思うように進まない。歩掛を蓄積しようとしても、入力や整理の手間がかかり、日々の業務の中では溜まっていかない。
一般に公開されている標準歩掛を用いるにしても、現場ごとの条件と合わず、そのままでは適用できない。何よりも工程と歩掛が紐づいていないため、せっかくの実績データが「次の現場で使える資産」になりきれていない。これらの課題が歩掛活用のボトルネックになっている。
結果として、工期見積もりは担当者の経験に依存し、現場ごとに精度がばらつく状態が続くことになる。これでは、自社の中に貴重な実績が眠っていても、可視化・共有されず、技術継承にも活かしきれない。
新機能「歩掛AIデータベース機能」では、工程と歩掛をAIが自動で紐づけ、利用するだけで会社全体に歩掛が蓄積されていく仕組みを構築することによって、従来の「貯まらない」「使えない」課題を根本から解消する。