急速に発展する建設分野での生成AI援用の現在地を多分野に渡り追跡(第八回)|深堀り取材【毎月3回更新】

建築基準法第2条第3号において建築設備とは、「建築物に設ける電気、ガス、給水、排水、換気、暖房、冷房、消火、排煙若しくは汚物処理の設備又は煙突、昇降機若しくは避雷針」と定義されている。それら建築設備は、当該建築物の用途、目的に応じて内部装置として機能させなければならない。

一方で、建築物の計画、設計段階で膨大な数量に及ぶ建築設備を拾い出し、積算業務へ繋げるだけでも多大な人力を要している。それらの課題は、建築物が完成した後にも引き継がれ、施設管理業務の多くの部分も人力に頼っている現況がある。

本稿では、電気工事や管工事を行う設備工事業向けにAI搭載の材料拾い出しシステムを開発した事例、生成AI活用によるビル管理の効率化を目指した実証実験の事例を設備工事におけるDXを推進しようとする先進的な試みとして報告する。

AIが図面内の材料情報を自動的に拾い出し+図面確認から数量積算までの作業を効率化

システムズナカシマ(岡山市:)(本社:代表取締役社長伊藤孝氏)では、電気工事や管工事を行う設備工事業向けにAI搭載の材料拾い出しシステム「拾いの匠NX」の提供を開始した。AIが図面内の材料情報を自動で拾い出し、図面確認から数量積算までの作業を効率化することによって設備工事業における積算業務のDXを推進する。

販売開始と共に、全国でのイベント出展を企画しており、電気設備業や水道設備業への展開を進めていく。販売は、システムズナカシマの販売店である全国のOA機器商社や建材卸商社を通じて行い、初年度の販売目標は70社、100ライセンスとしている。

株式会社システムズナカシマ

当社は、グループコンセプト「最適創造カンパニー」のもと、これまで培ってきた技術と知見を基盤に、デジタル技術を活用して既存事業の高度化… 続きを読む

設備工事業向けAI搭載の材料拾い出しシステム「拾いの匠NX」

AIの認識精度を大幅に向上して積算システムと連携+見積作成までシームレスに対応可能

「拾いの匠NX」は、JIS規格の設備図面記号を学習したAIが図面内から機器や部材を自動認識し、個数・長さ・面積など多様な拾い出しを効率化する。拾い出し結果は、部材ごとに目視確認でき、クリック操作で簡単に追加・修正も可能だ。手拾い機能も搭載しているため、AIでの認識が難しい図面やAIの学習データがない記号についても効率よく拾い出し作業を行うことができる。

合わせて、業務支援クラウドサービス「ANDESクラウド」を利用することによって物件情報や拾い出しデータの共有が可能となっている。フロア別や系統ごとに手分けして作業を進められるため拾い出し作業の効率が大幅に向上する。大型案件や短工期案件においても、チーム全体で進捗を可視化することによって作業負荷の平準化と業務スピードの向上を実現する。

「拾いの匠NX」のより詳細な機能を概説する。

PDF図面、紙図面、イメージデータ(TIFF・JPEG・BMP等)の取り込み・編集が可能だ。対応データ形式については、DWG、DXF、JWW、SFC、P21など多くのCAD形式の読み込みに対応している。

建築平面図と電気設備機器要素を自動分割する機能によってAIの認識精度を大幅に向上しており、積算システムと連携し、見積作成までシームレスに対応可能だ。

手拾い機能を搭載しており、AI認識が困難な図面やAI学習データがない記号の拾い出しも可能で、ANDESクラウドと連携し、物件情報や拾い出しデータの共有もできる。

「拾いの匠NX」材料拾い出し一連の流れ

「材料拾い出し業務をスマートに高速化」をコンセプトに新製品として「拾いの匠NX」開発

建設業界においては、工事の見積作成に際して、設計図面から必要な部材や配線長さを一つひとつ確認し、数量を集計する「材料拾い出し業務」が欠かせない。一方で、これらの作業は多くの時間と労力を必要とするだけでなく、担当者の経験や知識に依存する傾向があり、人材不足や働き方改革への対応が求められる中で大きな課題となっている。加えて複雑化する図面への対応や短納期化への要求も高まるなど積算業務の効率化が急務となっている。

これらの課題を解決するため、システムズナカシマでは「材料拾い出し業務をスマートに高速化」をコンセプトにした新製品「拾いの匠NX」を開発した。「拾いの匠NX」は、AIが図面を解析し、コンセント、照明器具、スイッチなどの設備記号を自動認識すると共に、配線の長さや数量を自動で集計する。従来、担当者が目視で確認しながら行っていた拾い出し作業を大幅に削減することによって見積作成までの時間短縮と業務負荷の軽減を実現しする。合わせて、拾い出し結果を一覧化することで確認作業も容易となり、積算業務の標準化や品質向上にも貢献する。

設備工事業でのIT利活用を推進する目的で平成17年に全国設備業IT推進会を立ち上げ

システムズナカシマは、船舶用推進器メーカーであるナカシマプロペラのシステム部門が100%出資子会社として分社化。汎用CAD の開発を中心にスタートし、建設設備業向け専用CAD システムやWEB 対応営業情報管理システムの開発を行っている。

設備工事業でのIT利活用を推進する目的で平成17 年に全国設備業IT推進会を立ち上げ、その後、一般社団法人全国設備業DX推進会に改名、81社の協賛パートナーと共に約6万社の会員に向けてITセミナーやフェアの実施、メールマガジンによるIT活用の促進を行っている。

「COREDO日本橋」を含む複合ビルで生成AIによるビル管理の効率化を目指した実証実験

三井不動産株式会社、キヤノンマーケティングジャパン、MODE, Inc.( 米国カリフォルニア州、日本支店: 千代田区: CEO上田学氏)では、商業施設「COREDO日本橋」を含む複合ビル「日本橋一丁目三井ビルディング」において、生成AI活用によるビル管理の効率化を目指した実証実験を開始した。

三井不動産は、実証フィールドの提供に加え、周辺技術を踏まえた導入可能性の検討、実運用環境における検証及び評価を実施し、実装に向けた知見の蓄積を行いう。

キヤノンマーケティングジャパンは、ソリューション提供からプロジェクト推進・運用支援を担い、資本業務提携を行ったMODEと共にキヤノンの強みである映像やドキュメントを活用し、労働人口減少が進む「※8掛け社会」を見据えた現場業務のDXを推進する。 

今回は、Imageousが提供するサービスも活用してビル設備データの取得・連携を実現する。

※8掛け社会: 2040年には日本国内の生産年齢人口(15~64歳)が現在の8割に減少するいわゆる「8掛け社会」の到来が予測されている。

ビル設備管理効率化に向けた実証実験のイメージ

取得データを統合+生成AI活用で遠隔地監視や異常検知・データ収集支援の有効性を検証

実証実験では、カメラや設備機器、センサーから取得するデータをクラウド上で統合し、生成AIも活用することで、遠隔地からの設備データ監視や異常検知、現場作業者の設備データ収集支援の有効性を検証している。将来的には、複数のビルや施設の設備データを集約し、エリア単位で一括管理することによって安定的なビル管理と街全体の安定運営に資する設備管理DXの基盤づくりを目指す。

三井不動産が運営する複合ビル「日本橋一丁目三井ビルディング」において行った実証実験の内容をより詳細に追跡してみよう。

中央監視システムで管理する約5,000点の設備データに加え、従来、現場で確認していたアナログメーターをネットワークカメラで取得し、分電盤等のデータはセンサーを用いて取得している。取得したデータ及び映像は、クラウド上で統合し、一元的に管理する。

アラート通知及び自動生成した定時レポートを基に、対話形式で関連データを呼び出し、設備の詳細状況を把握することの有効性を検証している。特に漏電や絶縁異常などの重大なトラブルに繋がる事象については、遠隔地から常時状況を把握し、初動対応を可能にする新たな業務プロセスの有効性を検証している。

生成AIを活用した各種データの検索・要約による業務判断の迅速化と運用の高度化を行い、今後は当該実証実験で得られた知見を基に、より一層の高度化・効率化を目指し、連携対象の拡大や業務フローの見直しを進めていく。

実証実験の概要

複合ビルが増加+多様な設備を効率的に管理する新たな仕組みが求められている課題に対応

現在のビル設備管理の現場においては、人手による巡回や目視確認に依存した運用が多くを占めており、今後の労働人口減少を見据え、人手のみに依存しない管理モデルを構築していく必要がある。更に、ビル内には数万点規模の設備データが存在する一方、それぞれが個別に管理されているケースも多く、設備の状態を全体横断的に把握することが難しい状況にある。加えて、オフィス・商業施設・公共機能が一体となった複合ビルが増加しており、多様な設備を効率的に管理する新たな仕組みが求められている。これらの課題を踏まえ、4社は連携し、設備管理の遠隔化・自動化による効率化の実現に向けた実証実験を行った。