急速に発展する建設分野での生成AI援用の現在地を多分野に渡り追跡(第三回)

目次
建設現場の安全活動に音声AIを活用して現場の安全管理水準の向上と業務効率化目指す
NTTソノリティと東急建設では、音声AIを活用した建設現場の安全管理水準の向上及び業務効率化を目的として協働で実証実験を開始した。当該実証実験は、NTTソノリティの音声AIを建設現場の安全活動で活用する初めての事例となる。
実証実験では、NTTソノリティが新たに提供する音声AIソリューションを建設現場に導入し、朝礼・危険予知活動・職員安全打ち合わせ・協力会社間の作業間連絡調整における記録業務の効率化と建設現場の安全管理水準の高度化について検証する。

専用マイクと音声活用ソリューションで現場の高騒音環境下での高精度な音声収録を検証
実証実験の内容を列記する。
NTTソノリティ提供の音声AIソリューションの活用については、「音」のテクノロジーを活用したデバイスとソフトウェアによる「音声DX」を通じ、建設現場や接客業務など多様な現場の生産性向上に貢献してきた。実証実験では、騒音対策技術を搭載した専用マイクと新たな音声活用ソリューションを組み合わせ、建設現場特有の高騒音環境下における高精度な音声収録を検証した。
収録された音声は、自動的にテキスト化され、生成AIが要約・評価・レポート作成までを一貫して処理する。現場で自然に発せられる「声」を起点に、気づきや報告を業務レポートへと変換するソリューションの社会実装に向けた第一弾として、東急建設の現場業務に最適化した設定を行い、実態に即したレポートの自動生成及び実用性を検証した。
検証対象業務について、実証実験では、以下の現場業務を対象として検証を実施した。

記録業務の効率化+未記録情報の資産化による安全向上+参加者の安全意識の向上に寄与
実証実験によって見込まれる成果についてみてみよう。
記録業務の効率化が実現する。朝礼・危険予知活動・社員打ち合わせ・作業間連絡調整の4業務において、音声を活用した記録の自動化が可能であることを確認した。これによって従来、担当者が手作業で行っていた記録・整理・報告の各工程を大幅に効率化できる見通しである。
未記録情報の資産化による安全向上が見込まれる。これまで記録されないまま失われていた建設現場の音声情報をデジタルデータとして蓄積・活用する。蓄積されたデータは、安全管理の振り返りや若手社員の教育に活用できる他、過去の事故事例をAIが提示する機能によって経験の浅い社員であっても具体的な安全指示を行える。
安全意識の向上については、朝礼・危険予知活動の内容をAIが評価・可視化する機能によって参加者の安全意識の向上に寄与する。合わせて会話内容が自動で記録・評価される仕組みそのものが作業所長や職長の行動変容を促す効果が期待される。
高騒音環境への対応については、NTTソノリティの特許技術を搭載した専用マイクによって建設現場特有の高騒音環境においても安定した音声収録が可能であることを確認した。これによってAIによるレポート生成の精度向上にも寄与する。
現場での打ち合わせの音声に着目+音声AIで業務効率化と安全管理水準の向上に取り組む
建設業界では、技術者の高齢化・若手人材の不足・労働時間の上限規制によって生産性向上が課題となっている。
一方、建設現場において、作業員の安全を守るための打合せや記録管理は、事故防止の観点から決して省くことのできない重要なプロセスとなっている。打合せの際、発言内容を記録する必要があるが、手作業により記録が抜け漏れすることもあり、安全管理の質の低下に繋がりかねないリスクをはらんでいた。
日々の業務においても、安全管理に費やす時間も長く、現場からは業務効率化を求める声が上がっていた。このような課題に対して、NTTソノリティと東急建設では、建設現場で交わされる打ち合わせの音声に着目し、音声AIで建設現場の業務効率化と安全管理水準の向上に取り組んでいく。
東急建設は、実証実験の成果を検証し、NTTソノリティ提供の音声AIシステムの建設現場への順次導入を開始する。今後は、安全施工サイクルの全工程のデータ化を目指すと共に、外部システムとの連携や生成AIの更なる高度化に取り組んでいく。
今回の取り組みを通じて得られた知見については、建設業界以外の他事業者への拡販も本格化するべく、ゼネコン各社、製造業の生産工場、プラント関連、鉄道運輸関連など幅広い業界への展開を目指す。更には、音声AIを活用した建設現場改革を主導することによって「安心・安全な建設現場の実現」と「建設業界における労働環境の改善」に貢献していく。
新たに生成AIの専門部署「GenAI推進課」を設立+「戸田建設AI基本方針」を策定・公開
戸田建設では、責任あるAI活用の推進と全社的なAIリテラシーの底上げに向けた3つの施策を実施すると公表した。
新たに生成AIの専門部署「GenAI推進課」を設立し、「戸田建設AI基本方針」を策定・公開する他、社内のAIリテラシー格差を是正するため全社員が資格試験「生成AIパスポート」を取得する目標を掲げた。
これらの取り組みは、一部の専門人材に留まりがちなAI技術を全社員が日常業務で使いこなす「AI活用の全社標準化」を実現するためのものだ。計画的なAIリテラシー教育を通じて、安全かつ責任あるAI活用を推進するべく、DX統轄部を中心として以下の3点を柱(施策)として展開する。
安全かつ責任ある AI 活用の基盤となる「戸田建設AI基本方針」を2026年4月1日に策定し、公開した。今後は、この方針に基づき社内ガイドラインの整備・見直しを進めることによって急速に変化するAI技術と、それに伴う利用リスクに対して柔軟に対応していく。
DX統轄部内に専門部署を2026年3月1日付で新設した。ここでは生成AIを安全に利用するためのルール作り (ガバナンスの統轄)、社内向けAIシステムの開発・運用、各部署への活用支援や教育、相談窓口などの役割を担い、AI推進を牽引する「司令塔」として機能する。
全社員が「生成AIパスポート」の資格を取得することを目指す。2026年度には、会社主導による資格団体申し込みの実施など、社内で「取得キャンペーン」を展開して社員の事務的負荷を軽減し、会社を挙げて資格取得を後押しする。

今後は社員一人ひとりが自らの業務をアップデートする「AIへの挑戦」を強力にサポート
現在、あらゆる産業において生成AIの業務活用が進んでいるが、企業がその恩恵を安全かつ最大限に享受するためには、技術進化に伴うリスク管理と全社定着に向けた推進体制の構築が急務となっている。加えて現場レベルで生成AIを使いこなすためには、従業員間のAIリテラシー格差の解消も不可欠である。
今回、策定した施策は、「ルール作り(基本方針)」「推進体制(専門部署)」「全社教育(資格取得)」の3方向から包括的にアプローチすることによって、一部の専門人材だけでなく全社的な基盤を整え、「AI活用を全社標準」にするための重要な第一歩と位置づけている。
今後は、「GenAI推進課」のサポートの基、社員一人ひとりが自らの業務をアップデートする「AIへの挑戦」を強力に後押ししていく。
「生成AIパスポート」の取得はあくまでスタートラインである。現在、単なる汎用ツールの導入に留まらず、内製AIアプリにおいて※)MCP(Model Context Protocol)を活用した社内外のデータ連携も進めており、独自の高度なAI環境の構築を見据えている。このような技術的基盤と社員の創造性や現場の知見を掛け合わせる「AIとの協創」を実現し、建設業における新たな価値創造、飛躍的な生産性と品質の向上に貢献していく。
※)MCP(Model Context Protocol: AIモデルと外部のデータソースを安全かつシームレスに連携させるための標準規格。
