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【BIM事例‐維持管理】奥村組‐⑨課題C 分類定義カスタマイズと自動分類の結果(連載)

掲載日:

国土交通省では、令和元年より官民一体でBIMを推進する取り組みをスタートさせており、「建築BIM推進会議」を開催し、議論を進めています。「建築BIM推進会議」について詳しくまとめた記事は、こちらをご覧ください。

ここでは、注目の「令和3年度 BIMモデル事業」の具体事例を連載にて紹介していきます。株式会社奥村組の事例を基に、BIMのメリットや課題分析データなどをまとめていきますのでBIM事例の内容についてぜひ参考にしてみてください。

他の連載記事はこちら

第一回:【BIM事例‐維持管理】奥村組‐①改修工事用のEIRとBEP策定(連載)

第二回:【BIM事例‐維持管理】奥村組‐②課題A 改修工事用EIR(連載)

第三回:【BIM事例‐維持管理】奥村組‐③課題A 改修工事用BEP(連載)

第四回:【BIM事例‐維持管理】奥村組‐④課題A 設備専門工事会社用の維持管理BIM仕様書(連載)

第五回:【BIM事例‐維持管理】奥村組‐⑤課題A EIR・BEP今後の課題(連載)

第六回:【BIM事例‐維持管理】奥村組‐⑥課題B 維持管理BIMシステムによる長期修繕計画について(連載)

第七回:【BIM事例‐維持管理】奥村組‐⑦課題B モデル活用・連携方法についての分析結果(連載)

第八回:【BIM事例‐維持管理】奥村組‐⑧課題B 長期修繕計画立案とモデル連携についての考察(連載)

概要

ここでは、プロジェクト全体の概要や対象となる建築物、事業の目的等についてご紹介します。

プロジェクト概要

奥村組技術研究所内の管理棟、室内環境実験棟における維持管理業務プロセスを検証します。これらの施設は改修工事・新築工事が完了しているため、それぞれ維持管理 BIM モデルを構築します。その上でこのモデルを用いて実際の施設運営の情報を蓄積し、検証をおこなうこととします。

2 棟の施設については、BIM モデルと連携する⾧期修繕計画システム、施設台帳管理システムを構築しました。技術研究所は、これらのシステムを用いて自ら施設管理者として運用し、「専門職ではない担当者」がおこなう維持管理業務における課題の検証を通して発注者メリットを抽出します。

検証をおこなうプロセスは、国土交通省『建築分野における BIM の標準ワークフローとその活用方策に関するガイドライン』の標準ワークフローのパターン②を参考にし、改修工事に特化したワークフローとして新たなパターン⑥(案)を作成しました。

検証は、維持管理 BIM フェーズにおいて実際の増改築工事や設備機器の増設等をおこないながら進めます。技術研究所が発注者として、建築設計部門・施工部門に関わり EIR・BEP の整備を通じてBIM ワークフローを検証していきます。

建築物の用途・規模・構造種別、所在地、新築/増改築/維持管理等の区分等

奥村組技術研究所

●所在地  :茨城県つくば市
●敷地面積 :23,580.25 ㎡
●開設   :1985 年
●特徴   :耐震実験棟、材料実験棟、音響実験棟,管理棟、室内環境実験棟、
       倉庫棟、多目的実験棟、陸上養殖実験棟の実験施設を備える

茨城県つくば市にある技術研究所は、日本初の実用免震ビル「管理棟」や各種実験をおこなう施設として新築した「室内環境実験棟」、その他複数の実験施設から構成される研究所です。

主な研究開発テーマとして、「免震のパイオニア」としてあり続けるための技術の研鑽や応用技術の開発、ICT やロボット、CIM、BIM の活用による工事の急速化・省力化や管理業務の効率化など生産性を向上させる技術の開発、およびバリアフリー化や省エネルギー化・低炭素化などの環境負荷低減を実現する技術の開発が挙げられます。令和 2 年春には技術研究所内の大規模リニューアル工事が完了しました。

調査対象(1)管理棟

  • 竣工   :1986 年
  • 改修竣工 :2020 年 1 月
  • 用途   :事務所
  • 階数   :地上 4 階 PH1 階
  • 延床面積 :1,330.10 ㎡
  • 構造種別 :RC 造(日本初の実用免震ビル)

「管理棟」はオフィスビルであるとともに、免震機能を⾧期観察する実証施設としての役割もあります。たとえば「建物そのものを人工的に揺らす」自由振動実験をおこなうための設備を備えており、免震技術の実証施設として35年以上にわたり様々なデータを蓄積しています。

また、日本初の実用免震ビルである管理棟は内装を全て撤去するスケルトンインフィル化を実施した後、NearlyZEB化を含めた改修工事を実施し、NearlyZEB の認証を取得し一般社団法人環境共創イニシアチブが公募する ZEBリーディング・オーナーに認定登録されています。

当施設は供用していて、維持管理段階にあり、ZEBの運用段階における省エネルギー効果や、快適性やウェルネスなどに寄与する技術の検証をおこなっています。     

調査対象(2)室内環境実験棟

  • 竣工   :2020 年 5 月
  • 用途   :実験施設
  • 階数   :地上 2 階
  • 延床面積 :978.86 ㎡
  • 構造種別 :RC・S 造

室内環境実験棟は、温熱・気流・音環境に関する実験をおこなうことを目的としているため、断続的に施設の改修・更新を続けながら室内環境実験をおこなっています。

快適な空間づくりには、人の感覚に影響を与える、温度、湿度、気流、光、音などを適切に制御する必要があります。当施設は3つの実験室を備え、建物の省エネルギー性や室内の快適性、ウェルネスに関わる様々な要素や、近年ニーズが高まっている室内環境関連の技術を総合的に検証することができます。

プロジェクトで目指すもの

目的

(1)竣工 BIM モデル構築に必要な EIR・BEP の整備とマイニングルール制定
(2)リバースエンジニアリングによる維持管理 BIM モデル構築手法の確立
(3)技術実験と実行を同時におこなう維持管理 BIM モデル構築とシミュレーション
(4)ライフサイクルコンサルティング業務の確立と資産価値の向上
(5)維持管理 BIM システムと NearlyZEB 環境センサーの連携とトータル LCC 算出

解決する課題

(1)EIR・BEP の仕様とコストイメージ
(2)維持管理業務を維持管理BIMシステムでおこなう場合の労務量
(3)実際の維持管理業務における問題点や日常業務での運用課題
(4)ライフサイクルコンサルティング業務における維持管理BIMシステム構築支援方法
(5)維持管理 BIM システムにおけるランニングコスト情報の不足

得られる成果

(1)発注者としての EIR、施工者としての BEP の試案
(2)維持管理業務を維持管理 BIM でおこなう場合の労務削減量
(3)技術実験と連動した維持管理 BIM モデルと維持管理業務の実行結果
(4)ライフサイクルコンサルティング業務結果報告と建物資産価値の評価
(5)点検業務・ランニングコストを含めた維持管理 BIM によるトータル LCC 算出

分析する課題:分類定義カスタマイズと自動分類の結果

ここでは、課題C「BIMモデルから維持管理BIMへのデータマイニングの検証、自動的に部位部材分類をおこなうルール策定、BELCA分類定義を使用した方法とカスタマイズについての検証」を紹介していきます。

BIMモデルと維持管理ソフトウェアを連携させるIDの割り当てにおいては、自動分類の精度を向上させるマイニングルールの追加・カスタマイズをおこないます。これが分類作業の効率化、維持管理BIMへの移行を円滑にします。

①維持管理活用のためのデータマイニングルールの構築

BIMモデルの部位部材分類フロー

GLOOBEで入力済みのBIMモデルを用い、維持管理BIMとの連携におけるデータマイニングについて、自動的に部位部材が分類できるルールの策定、BELCA 分類定義を使用した方法とカスタマイズについて検証をおこないます。 

また BELCA分類とBIMソフトウェア上のモデル入力方法・単位などの問題点も抽出し、カスタマイズの方法を検討、テンプレートの活用や共有における問題についてまとめます。 

保全のデータマイニングについてはFM-Integrationで設定されている『建築保全業務積算要領』『令和4年度建築保全業務労務単価』から算出された単価と実際の保全費用単価の比較を検証します。

修繕・保全業務の項目数と適用基準

②自動分類方法を検証し効率的に維持管理へつなげるフロー構築とBIMモデルを用いた設計、施工モデルのあり方

(1)データマイニングと自動部材設定、カスタマイズについて

データ連携フローの比較と特徴

連携IDによる分類(消火器と消火器ボックスの例)

BIMモデルに維持管理に必要な情報を紐づけする連携IDを割り当て、BELCA分類定義を用いた 大・中・小項目に分類定義することをデータマイニングといい、維持管理連携フローにおける重要な作業となります。またGLOOBEの自動割当機能による分類を検証、マイニングルールの追加、カスタマイズを通して効率化を図ります。 

(2)マスター編集とBELCA分類に則したモデル入力方法

BELCA分類の計算方法

BELCA分類とは、公益社団法人ロングライフビル推進協会が建物のライフサイクルマネジメントに不可欠な修繕・更新関係のデータとして部位部材・設備機器などの修繕・更新の単価や周期、係数 を整理した分類を指します。  

建物用途等による分類

ここでは、BELCA分類の採用については建物用途等による分類Bを使用し(上図)、入力済みのモデルに可能な限りBELCA分類を割り当てたうえで、実行予算と比較し、モデル入力方法を再検討後にマスター追加もしくは単価・単位修正をおこないます。

※マスターデータの更新周期については分類Bの周期のみの設定となり、分類AやCの更新周期を採用する場合は適宜、周期を調整する必要があります。 

(3)設備モデルの維持管理連携

BELCA分類の設定数値、係数根拠(例:中央監視装置)

設備モデルについては、サブコンモデル(Rebro/CADWe’ll Tfas)からIFCを経由して意匠モデルと合成後、データマイニングをおこない連携を検証します。

設備のデータには、部材コードとしてStem BE-Bridgeがあり、それらのコードは共にC-CADECによりまとめられた形式で、Stem BE-Bridgeでは配管、ダクト類についての仕様が決められています。このどちらかの仕様に基づいた設備オブジェクトであれば比較的容易に維持管理情報として取り込むことができます。 

(4)保全項目のデータマイニング

保全業務の4項目

保全業務のデータマイニング

①同じ BIM モデルを用い、保全項目についても同様にデータマイニング後、維持管理ソフトウェアとの連携検証をおこないます。 

②FM-Integration との連携後『建築保全業務積算要領』『令和 4 年度建築保全業務労務単価』から 算出された保全センター単価と実際の保全費用単価を比較し、実務に生かせる単価設定と、FM-Integration への反映方法を検証します。

FM-Integration「清掃」のマスター情報

(5)FM連携テンプレート活用方法と課題

「修繕」「点検」「清掃」「運転監視」「警備」各自動分類の精度を向上させる割当ルールを追加したFM連携テンプレートの共有、活用方法を検証します。

BIMオブジェクトとして現状の機能では数量を拾えないシール類や、BELCAに分類されていないもの、入力に手間のかかるものについては未反映オブジェクトとしてリスト化します。

③課題分析等の結果

修繕割当ルール追加前の自動分類の比率

        

修繕割当ルール追加後の自動分類の比率

入力済みオブジェクトに対して設定を変えずに修繕の全グループ自動割り当てを実行し、自動分類率の平均を集計した結果は、総オブジェクト数 6,119 に対して27%の2,582となりました。躯体など対象外とするオブジェクトを含め割当ルールの追加・編集をおこない、再度自動割り当てした後は総オブジェクト数3.744、65%まで向上する結果となりました。

オブジェクトの分類と表示項目と割当ルール管理画面

割当ルールの追加・編集については、オブジェクトごとに異なる分類と表示項目に入力されたテキスト情報が条件と一致、もしくは含まれるように設定する必要があります。 

このため維持管理を前提とした BIM モデリングには割当ルールを意識した入力が重要となり、さらに効率的な維持管理BIMへの移行には、一般的な建材のオブジェクト名称、材質情報などが設定された維持管理モデル入力用テンプレートを整備することが今後の課題となります。 

まとめ

ここでは、維持管理活用のためのデータマイニングルールを構築しました。割当ルールを追加することで修繕、保全共に自動分類の割合が増加し、維持管理連携の効率が向上するという結果になりました。モデル入力方法に工夫が必要になるなど手間を要することが課題です。今後は、モデル入力テンプレートと共に維持管理連携テンプレートを整備することが求められるでしょう。

この記事を書いた人

BuildApp News編集部 - DX事例くん

BuildApp News編集部事例担当です。 建設DXに取り組む企業の事例を紹介しています。

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