ホーム テーマ BIM 国土交通省関連情報 【BIM事例‐維持管理】奥村組‐③課題A 改修工事用BEP(連載)

【BIM事例‐維持管理】奥村組‐③課題A 改修工事用BEP(連載)

掲載日:2022年11月17日

国土交通省では、令和元年より官民一体でBIMを推進する取り組みをスタートさせており、「建築BIM推進会議」を開催し、議論を進めています。「建築BIM推進会議」について詳しくまとめた記事は、こちらをご覧ください。

ここでは、注目の「令和3年度 BIMモデル事業」の具体事例を連載にて紹介していきます。株式会社奥村組の事例を基に、BIMのメリットや課題分析データなどをまとめていきますのでBIM事例の内容についてぜひ参考にしてみてください。

他の連載記事はこちら

第一回:【BIM事例‐維持管理】奥村組‐①改修工事用のEIRとBEP策定(連載)

第二回:【BIM事例‐維持管理】奥村組‐②課題A 改修工事用EIR(連載)

概要

ここでは、プロジェクト全体の概要や対象となる建築物、事業の目的等についてご紹介します。

プロジェクト概要

奥村組技術研究所内の管理棟、室内環境実験棟における維持管理業務プロセスを検証します。これらの施設は改修工事・新築工事が完了しているため、それぞれ維持管理 BIM モデルを構築します。その上でこのモデルを用いて実際の施設運営の情報を蓄積し、検証をおこなうこととします。

2 棟の施設については、BIM モデルと連携する⾧期修繕計画システム、施設台帳管理システムを構築しました。技術研究所は、これらのシステムを用いて自ら施設管理者として運用し、「専門職ではない担当者」がおこなう維持管理業務における課題の検証を通して発注者メリットを抽出します。

検証をおこなうプロセスは、国土交通省『建築分野における BIM の標準ワークフローとその活用方策に関するガイドライン』の標準ワークフローのパターン②を参考にし、改修工事に特化したワークフローとして新たなパターン⑥(案)を作成しました。

検証は、維持管理 BIM フェーズにおいて実際の増改築工事や設備機器の増設等をおこないながら進めます。技術研究所が発注者として、建築設計部門・施工部門に関わり EIR・BEP の整備を通じてBIM ワークフローを検証していきます。

建築物の用途・規模・構造種別、所在地、新築/増改築/維持管理等の区分等

奥村組技術研究所

●所在地  :茨城県つくば市
●敷地面積 :23,580.25 ㎡
●開設   :1985 年
●特徴   :耐震実験棟、材料実験棟、音響実験棟,管理棟、室内環境実験棟、
       倉庫棟、多目的実験棟、陸上養殖実験棟の実験施設を備える

茨城県つくば市にある技術研究所は、日本初の実用免震ビル「管理棟」や各種実験をおこなう施設として新築した「室内環境実験棟」、その他複数の実験施設から構成される研究所です。

主な研究開発テーマとして、「免震のパイオニア」としてあり続けるための技術の研鑽や応用技術の開発、ICT やロボット、CIM、BIM の活用による工事の急速化・省力化や管理業務の効率化など生産性を向上させる技術の開発、およびバリアフリー化や省エネルギー化・低炭素化などの環境負荷低減を実現する技術の開発が挙げられます。令和 2 年春には技術研究所内の大規模リニューアル工事が完了しました。

調査対象(1)管理棟

  • 竣工   :1986 年
  • 改修竣工 :2020 年 1 月
  • 用途   :事務所
  • 階数   :地上 4 階 PH1 階
  • 延床面積 :1,330.10 ㎡
  • 構造種別 :RC 造(日本初の実用免震ビル)

「管理棟」はオフィスビルであるとともに、免震機能を⾧期観察する実証施設としての役割もあります。たとえば「建物そのものを人工的に揺らす」自由振動実験をおこなうための設備を備えており、免震技術の実証施設として35年以上にわたり様々なデータを蓄積しています。

また、日本初の実用免震ビルである管理棟は内装を全て撤去するスケルトンインフィル化を実施した後、NearlyZEB化を含めた改修工事を実施し、NearlyZEB の認証を取得し一般社団法人環境共創イニシアチブが公募する ZEBリーディング・オーナーに認定登録されています。

当施設は供用していて、維持管理段階にあり、ZEBの運用段階における省エネルギー効果や、快適性やウェルネスなどに寄与する技術の検証をおこなっています。     

調査対象(2)室内環境実験棟

  • 竣工   :2020 年 5 月
  • 用途   :実験施設
  • 階数   :地上 2 階
  • 延床面積 :978.86 ㎡
  • 構造種別 :RC・S 造

室内環境実験棟は、温熱・気流・音環境に関する実験をおこなうことを目的としているため、断続的に施設の改修・更新を続けながら室内環境実験をおこなっています。

快適な空間づくりには、人の感覚に影響を与える、温度、湿度、気流、光、音などを適切に制御する必要があります。当施設は3つの実験室を備え、建物の省エネルギー性や室内の快適性、ウェルネスに関わる様々な要素や、近年ニーズが高まっている室内環境関連の技術を総合的に検証することができます。

プロジェクトで目指すもの

目的

(1)竣工 BIM モデル構築に必要な EIR・BEP の整備とマイニングルール制定
(2)リバースエンジニアリングによる維持管理 BIM モデル構築手法の確立
(3)技術実験と実行を同時におこなう維持管理 BIM モデル構築とシミュレーション
(4)ライフサイクルコンサルティング業務の確立と資産価値の向上
(5)維持管理 BIM システムと NearlyZEB 環境センサーの連携とトータル LCC 算出

解決する課題

(1)EIR・BEP の仕様とコストイメージ
(2)維持管理業務を維持管理BIMシステムでおこなう場合の労務量
(3)実際の維持管理業務における問題点や日常業務での運用課題
(4)ライフサイクルコンサルティング業務における維持管理BIMシステム構築支援方法
(5)維持管理 BIM システムにおけるランニングコスト情報の不足

得られる成果

(1)発注者としての EIR、施工者としての BEP の試案
(2)維持管理業務を維持管理 BIM でおこなう場合の労務削減量
(3)技術実験と連動した維持管理 BIM モデルと維持管理業務の実行結果
(4)ライフサイクルコンサルティング業務結果報告と建物資産価値の評価
(5)点検業務・ランニングコストを含めた維持管理 BIM によるトータル LCC 算出

分析する課題:改修工事用BEP

建築設計三会の設計BIMワークフローガイドラインEIR・BEPひな型案をもとに、改修工事用のEIR・BEPを作成していきます。

「EIR」とは、Employer Information Requirementsの略語で「発注者情報要件」のことを指します。また「BEP」とはBIM Execution Planの略語で、「BIM実行計画」のことです。発注者から入札者に対してEIRが提示され、それをもとに入札者がBEPを作成・提示するという流れが一般的です。前回は改修工事用EIRを紹介しましたが、ここでは主に、改修工事用BEPについてご紹介します。

改修工事用BEPの特記事項

BEPにおいては、既存モデルや改修範囲のモデル化についての表記を盛り込んでいるのが特徴です。また体系的なオブジェクトの命名規則、形状・情報の設定などを定義しています

①改修工事の維持管理BIMを定義

  • 既存情報の入力既存躯体情報、スケルトンインフィル改修範囲
  • 既存モデル、改修モデルの区分形状
  • 情報、既存データ利用の有無
  • 属性の定義、設備オブジェクトの定義(機器名称、品番、メーカー名、性能、系統)
  • 合意形成手法の明確化クラウド共有環境、BIMビューアー、メタバース、VR/AR/MRなど

②維持管理BIM構築を定義

  • 維持管理BIMソフトウェアの指定FM-Integration
  • データマイニングルールの明示、命名規則の定義特に改修年など
  • 目的毎のマイニングの定義⾧期修繕、台帳、保全、点検
  • メーカーBIMオブジェクト使用を定義
  • 維持管理BIM台帳の構築定義図面、仕様書、取説など掲載情報
  • CDE構築クラウド環境AZURE

改修工事用BEPの概要

ここでは、管理棟のリニューアル工事、蓄電池増設工事、照明実験工事など、設計・施工段階でのBIM活用および維持管理BIMシステムの構築をおこなう上でBEPに必要な項目を掲載しています。

①プロジェクト情報、BIM関連体制表、BIM関連スケジュール、BIMの目的

プロジェクト名、体制表、スケジュール、BIMの目的を記載する項目です。「BIM関連スケジュール」の凡例に、維持管理BIMシステム作成者を加えています。

②BIMの活用(現地調査方法、設計施工段階でのBIM活用)

「現地調査方法」は、EIRで提示した既存モデル作成、改修計画に必要な項目として具体的に入力します。管理棟の蓄電池増設工事においては点群測量をおこない、既存機器の大きさや位置を修正して設計BIMへの活用例を記述しました。

また「設計段階でのBIM活用」、「施工段階でのBIM活用」の項目では、EIRで提示した発注者が要望する項目を具体的に入力します。管理棟の蓄電池増設工事では、MR・メタバースを利用した関係者との合意形成や照度シミュレーションをおこなっています。

③維持管理BIMモデル作成

維持管理BIMモデル作成方法を記載する項目です。
「BIMモデル作成範囲」と「BIMモデルデータ構成(形状、属性)」では、EIRで提示されたBIMの入力範囲と入力ル-ルを詳細に規定しています。設計BIMガイドラインの建築要素にはない「内装(種類・材料等)(壁・床仕上げ)」などを適宜追加しています。

また「改修工事特記」を追加して、改修工事用BIMモデルを作成する上での特記事項を記入できるようにしています。その際参考資料「設備モデル作成仕様書」を参照しました。

「改修工事モデルデータ対象部材特記」は、EIRで提示した改修工事のBIMモデル作成において注意が必要な項目に対しての対応を記入します。

「改修年情報の属性入力」「メーカーBIMオブジェクト利用」は、EIRで提示された具体的な対応について記入します。またメーカーBIMオブジェクトの利用に関して参考資料「設備モデル作成仕様書」を参照するようにしています。

④基幹BIMソフト等、参照図書

「基幹BIMソフトウェア」「基幹BIMソフト以外に使用するソフトウェア」「参照図書」を記載する項目です。本事業では、照明シミュレーションにLightningFlowを利用しています。

⑤データ共有環境

「データ共有環境」の主な内容になります。

⑥BIMモデルデータ構成特記事項

BIMモデルデータ構成の特記事項を記載する項目です。本モデル事業では、蓄電池増設工事においてモデル作成対象外としている配線に関してもモデリングをおこなっています。照明シミュレーション、メタバース活用では、IFCデータではなくテクスチャ情報を格納できるFBXデータを利用することをBEPの特記事項として明記しました。

まとめ

BEP改修工事特有のプロジェクト要件と改修工事要件等についてまとめました。EIRと同様にXRやメタバースを用いて合意形成する機会が増えていることから、IFCデータではなくFBXデータを利用しているのが特徴と言えるでしょう。

この記事を書いた人

BuildApp News編集部 - DX事例くん

BuildApp News編集部事例担当です。 建設DXに取り組む企業の事例を紹介しています。

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