ホーム テーマ BIM 国土交通省関連情報 【BIM事例‐維持管理】奥村組‐④課題A 設備専門工事会社用の維持管理BIM仕様書(連載)

【BIM事例‐維持管理】奥村組‐④課題A 設備専門工事会社用の維持管理BIM仕様書(連載)

掲載日:2022年11月24日

国土交通省では、令和元年より官民一体でBIMを推進する取り組みをスタートさせており、「建築BIM推進会議」を開催し、議論を進めています。「建築BIM推進会議」について詳しくまとめた記事は、こちらをご覧ください。

ここでは、注目の「令和3年度 BIMモデル事業」の具体事例を連載にて紹介していきます。株式会社奥村組の事例を基に、BIMのメリットや課題分析データなどをまとめていきますのでBIM事例の内容についてぜひ参考にしてみてください。

他の連載記事はこちら

第一回:【BIM事例‐維持管理】奥村組‐①改修工事用のEIRとBEP策定(連載)

第二回:【BIM事例‐維持管理】奥村組‐②課題A 改修工事用EIR(連載)

第三回:【BIM事例‐維持管理】奥村組‐③課題A 改修工事用BEP(連載)

概要

ここでは、プロジェクト全体の概要や対象となる建築物、事業の目的等についてご紹介します。

プロジェクト概要

奥村組技術研究所内の管理棟、室内環境実験棟における維持管理業務プロセスを検証します。これらの施設は改修工事・新築工事が完了しているため、それぞれ維持管理 BIM モデルを構築します。その上でこのモデルを用いて実際の施設運営の情報を蓄積し、検証をおこなうこととします。

2 棟の施設については、BIM モデルと連携する⾧期修繕計画システム、施設台帳管理システムを構築しました。技術研究所は、これらのシステムを用いて自ら施設管理者として運用し、「専門職ではない担当者」がおこなう維持管理業務における課題の検証を通して発注者メリットを抽出します。

検証をおこなうプロセスは、国土交通省『建築分野における BIM の標準ワークフローとその活用方策に関するガイドライン』の標準ワークフローのパターン②を参考にし、改修工事に特化したワークフローとして新たなパターン⑥(案)を作成しました。

検証は、維持管理 BIM フェーズにおいて実際の増改築工事や設備機器の増設等をおこないながら進めます。技術研究所が発注者として、建築設計部門・施工部門に関わり EIR・BEP の整備を通じてBIM ワークフローを検証していきます。

建築物の用途・規模・構造種別、所在地、新築/増改築/維持管理等の区分等

奥村組技術研究所

●所在地  :茨城県つくば市
●敷地面積 :23,580.25 ㎡
●開設   :1985 年
●特徴   :耐震実験棟、材料実験棟、音響実験棟,管理棟、室内環境実験棟、
       倉庫棟、多目的実験棟、陸上養殖実験棟の実験施設を備える

茨城県つくば市にある技術研究所は、日本初の実用免震ビル「管理棟」や各種実験をおこなう施設として新築した「室内環境実験棟」、その他複数の実験施設から構成される研究所です。

主な研究開発テーマとして、「免震のパイオニア」としてあり続けるための技術の研鑽や応用技術の開発、ICT やロボット、CIM、BIM の活用による工事の急速化・省力化や管理業務の効率化など生産性を向上させる技術の開発、およびバリアフリー化や省エネルギー化・低炭素化などの環境負荷低減を実現する技術の開発が挙げられます。令和 2 年春には技術研究所内の大規模リニューアル工事が完了しました。

調査対象(1)管理棟

  • 竣工   :1986 年
  • 改修竣工 :2020 年 1 月
  • 用途   :事務所
  • 階数   :地上 4 階 PH1 階
  • 延床面積 :1,330.10 ㎡
  • 構造種別 :RC 造(日本初の実用免震ビル)

「管理棟」はオフィスビルであるとともに、免震機能を⾧期観察する実証施設としての役割もあります。たとえば「建物そのものを人工的に揺らす」自由振動実験をおこなうための設備を備えており、免震技術の実証施設として35年以上にわたり様々なデータを蓄積しています。

また、日本初の実用免震ビルである管理棟は内装を全て撤去するスケルトンインフィル化を実施した後、NearlyZEB化を含めた改修工事を実施し、NearlyZEB の認証を取得し一般社団法人環境共創イニシアチブが公募する ZEBリーディング・オーナーに認定登録されています。

当施設は供用していて、維持管理段階にあり、ZEBの運用段階における省エネルギー効果や、快適性やウェルネスなどに寄与する技術の検証をおこなっています。     

調査対象(2)室内環境実験棟

  • 竣工   :2020 年 5 月
  • 用途   :実験施設
  • 階数   :地上 2 階
  • 延床面積 :978.86 ㎡
  • 構造種別 :RC・S 造

室内環境実験棟は、温熱・気流・音環境に関する実験をおこなうことを目的としているため、断続的に施設の改修・更新を続けながら室内環境実験をおこなっています。

快適な空間づくりには、人の感覚に影響を与える、温度、湿度、気流、光、音などを適切に制御する必要があります。当施設は3つの実験室を備え、建物の省エネルギー性や室内の快適性、ウェルネスに関わる様々な要素や、近年ニーズが高まっている室内環境関連の技術を総合的に検証することができます。

プロジェクトで目指すもの

目的

(1)竣工 BIM モデル構築に必要な EIR・BEP の整備とマイニングルール制定
(2)リバースエンジニアリングによる維持管理 BIM モデル構築手法の確立
(3)技術実験と実行を同時におこなう維持管理 BIM モデル構築とシミュレーション
(4)ライフサイクルコンサルティング業務の確立と資産価値の向上
(5)維持管理 BIM システムと NearlyZEB 環境センサーの連携とトータル LCC 算出

解決する課題

(1)EIR・BEP の仕様とコストイメージ
(2)維持管理業務を維持管理BIMシステムでおこなう場合の労務量
(3)実際の維持管理業務における問題点や日常業務での運用課題
(4)ライフサイクルコンサルティング業務における維持管理BIMシステム構築支援方法
(5)維持管理 BIM システムにおけるランニングコスト情報の不足

得られる成果

(1)発注者としての EIR、施工者としての BEP の試案
(2)維持管理業務を維持管理 BIM でおこなう場合の労務削減量
(3)技術実験と連動した維持管理 BIM モデルと維持管理業務の実行結果
(4)ライフサイクルコンサルティング業務結果報告と建物資産価値の評価
(5)点検業務・ランニングコストを含めた維持管理 BIM によるトータル LCC 算出

分析する課題:設備専門工事会社用の維持管理BIM仕様書

https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/build/jutakukentiku_house_fr_000142.html

ここでは、設備専門工事会社用の維持管理BIM仕様書についてご紹介していきます。

一般的に設備モデルに関しては、設備専門工事会社が施工段階で設備系BIMソフトウェアを用いて作成していることが多くあります。施工をおこなうための図面作成を目的とし、施工BIMの取り組みとしては躯体モデルとの干渉チェックに利用されています。

今回、管理棟、室内環境実験棟の維持管理BIMの設備モデル作成にあたり、設備専門工事会社用の維持管理BIMモデル仕様書として「設備モデル作成仕様書」を整備しました。これは設備モデルの個々のオブジェクトの仕様書ではなく、設備BIMソフトウェアでBIMデータを作成する上での注意事項をまとめたものになります。そこで、本モデル事業の検証結果を反映してその修正をおこないました。

①設備モデルの階高設定
②各階の設備モデルの配置
③建築モデルと統合するためのモデル上の基準の指定
④維持管理BIM対象外オブジェクトの非表示設定
⑤メーカー部品の適切な利用方法
⑥メーカー部品がない場合の汎用部品作成方法
⑦既存オブジェクトと改修オブジェクトの区別
⑧別図面による同部材の重複入力オブジェクト対応
⑨設備オブジェクトの部品コード(stem、Be-Bridge)
⑩設備モデルの利用目的の明示

整備した「設備モデル作成仕様書」をBEPの「維持管理BIMモデル作成」「BIMモデルデータ構成(形状・属性)」、「メーカーBIMオブジェクト」の参照資料として提示することで、維持管理BIMの設備モデルを適切に作成できます。

ちなみに国土交通省のBIMガイドラインでは「維持管理BIMは設計BIMモデルをベースとし 施工段階で確定していく維持管理・運用で必要な情報(設備施工情報等)を、施工者から順次提供を受けて設計BIMに入力することが必要」とあります。

今回、維持管理BIMの設備モデルに関しては、設備専門工事会社が施工段階で最初から作成したモデルを利用しました。このように設計設備モデルから施工設備モデルへの連携手法が確立していない段階では、設備専門工事会社が作成したモデルを利用するのが効率的と言えるでしょう。

まとめ

ここでは、設備専門工事会社用の『維持管理BIM仕様書』を整備しました。維持管理BIMは、EIRによって示された利用目的・情報に基づき、BEPによって示された方法によって作成されるものです。

そのため、維持管理BIMの作成者は、維持管理BIMに求める発注者の要求(利用目的等)は何か、維持管理で必要な情報(設備施工情報等)は何かをよく理解し、維持管理BIMはどのようなモデリング・入力ルールとするかを検討し、発注者と事前に共有することが重要となるでしょう。

この記事を書いた人

BuildApp News編集部 - DX事例くん

BuildApp News編集部事例担当です。 建設DXに取り組む企業の事例を紹介しています。

あわせて読みたい

BuildApp Newsとは

BuildApp News は
建設DXの実現を支援する
BIMやテクノロジーの情報メディアです。

建設業はプロセス・プレイヤーが多く、デジタル化やDXのハードルが高いのが現状ですが、これからの建設業界全体の成長には「BIM」などのテクノロジーを活用した業務効率化や生産性の向上、環境対応などの課題解決が不可欠と考えます。

BuildApp Newsが建設プレイヤーの皆様のDXの実現の一助となれば幸いです。

注目の記事

BIM の人気記事

もっと見る