【連載】現場でDXを進める時のパートナー(協力会社)との連携|(第3回)東急建設株式会社 酒井氏

現在の現場システムを改善させるDXを進めるにはやはり互いの協力関係が必須と考えます。では、建設現場の協力者とはどれくらいの規模でしょうか。

単に工事だけで見れば、発注者(事業者)から元請け(ゼネコン)へ、元請け(ゼネコン)から工事別に各協力会社へそれぞれ発注し工事が進んでいきます。

しかし、ご存じの通りこの単純なラインで納まらず、それぞれの会社に多くの部署や多くの会社が携わり、無限大の協力関係者が存在しているのもまた事実です。

さて、現状として、この多くの関係者とどのような情報の受託が交わされているのでしょうか。建設全体に関して論じると論点が広がりすぎてしまいますので、今回は、建設現場においてパートナー(協力会社)とどのような情報交換がされているか、また、されるべきかを考えてみたいと思います。

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パートナーと必要な情報交換

まず、工事現場において設計図という図面を基に施工図に置き換わり、建設が進みます。この設計図は、発注者(事業者)の思いがすべて詰め込まれている図面となります。

建築とはこの発注者の思いが詰めこまれており図面通りに造ることが最大の目的です。そしてこの思いを各協力関係者へつなげる(伝える)手段として施工図があります。

施工図においては、その昔手書きによる施工図であり、それが進化することで現代主流となっているCADに改変してきました。そして今2Dから3Dへ移り変わろうとする中でBIMという新たなツールが出てきました。

ただ単に施工図をBIM化するといったことはCADと変わらず何の変化も変革も起こしません。むしろ、施工図にとらわれると生産性に関しては悪くなるのではないでしょうか。

BIMというのは平面から立体へよりリアルな情報にする手段であり、2Dとは比べ物にならないほどのデータ量があります。

そのデータ量を施工図のみに使うのではなくフルに活用するためには、協力会社すべての人がこのデータを理解し使えることが理想ではないかと考えます。

例えば今回実証実験を行ったプレカットについて考えてみると、在来の簡易的なフローとして平面図(総合図)作図⇒部分詳細図(製作図)⇒拾出・発注⇒加工⇒納品⇒施工となります。

このフローにおいて施工図のみをBIMに変えたからと言って変化はしません。ではBIMにするメリットは何であったか考えると、以下の点が挙げられます。

実測データ入れ、それを基に割付を簡単な操作ででき、納まりの悪いところを抽出できる。そしてその割付情報をメーカー側から拾い上げ発注できる。また、割り付けた個々のデータにバーコードによる情報を付けることでデータと現場が同じ情報を持てることになり出来高管理に利用できる。といったところでしょうか。

要するに、それぞれで行ってきた数量の把握や確認も、同じデータを見に行くことで効率もよくなる。

関係者全員が同じ情報を使えることで、現場だけでなく発注者からメーカーそして職方まで同じ情報を持つことができる。

さらにその同じ情報を使うことで、変更等の変化に対し、常に同じ変更情報を共有でき、伝達ミスも削減できる。

これが理想であり、目指すべき姿であると思われます。

可能性を秘めたツール「BIM」

BIMについてはそれ以外でもまだまだ可能性秘めたツールだと考えています。しかしながら、現状を見るとBIMへの移行もまばらで操作に慣れていない。また、そのメリットを見いだせないまま移行している等半信半疑で使っている方が多いのではないでしょうか。

今回検証を行ったプレカットにおいてもBIMデータを基に進めたものの使う側としてはやはり疑問を持っていたのも現実です。

メリットがわかっていてもなかなか実務としては移行しづらいという理由があるのかもしれません。

これらを考えると元請けだけがBIMを利用しても利点がないし、同じ情報源を同じ手段で取りに行くにはやはり関係者すべてがBIMに対し前向きに取り扱わなければならないと思います。

元請け・職方それぞれが単独で取り組んでも現状の2Dの世界と何ら変わらない。
やはりそこをつなぎ結ぶのがサプライチェーンマネジメントであり、その存在が必要不可欠な位置づけになると感じています。