BIMからデータ、そしてAIへ グローバルBIMが描く建設DXの未来 

buildingSMART International Summit Tokyo 2026の現地取材から、日本におけるBIM活用の現在地とこれからを探る。今回は、BIMの実務支援からIFCによるデータ連携、CDE、建築確認申請のデジタル化に向けた支援まで幅広く取り組むグローバルBIMにインタビュー。国際標準化の動向を踏まえながら、日本のBIMが抱える課題と、データ、そしてAIへとつながる建設産業の未来について聞いた。

プロフィール

矢嶋 和美(やじま かずみ)氏 
株式会社グローバルBIM 代表取締役社長 

一般社団法人 buildingSMART Japan
建築委員会委員長

鹿島建設株式会社で施工管理やBIM推進・生産性向上に携わり、2017年に株式会社グローバルBIM副社長を兼務。2024年に代表取締役社長に就任。

buildingSMART International(bSI)のボードメンバー(理事)を務め、2026年にはbSIフェローに選出。国内外でBIMの普及・国際標準化を推進している。

鹿島建設でのBIM推進経験から、グローバルBIMの事業へ 

――まず、御社の概要をご紹介いただけますか。 

【矢嶋氏】当社はBIMを専業とし、設計・施工段階のBIM活用支援から、IFCを用いたデータ連携、CDE(共通データ環境)の導入、建築確認申請のデジタル化に向けた支援まで取り組んでいます。私は鹿島建設でBIMの推進に携わり、そこで培った経験を生かしながら、グローバルBIMの事業を発展させてきました。

特に、施工現場で培った知見を生かし、設計段階で作られた情報を施工現場で実際に活用できる情報へとつなげていくことも、当社の強みです。

現在は鹿島建設に限らず、さまざまな建設会社や設計事務所などにサービスを提供しています。

――BIMの国際標準化にも、以前から取り組まれてきたのでしょうか。 

【矢嶋氏】グローバルBIMの事業を始める前から、buildingSMART International(bSI)の活動に参加してきました。鹿島建設のBIM責任者でしたので、Strategic Advisory Council(SAC)などで国際的な方向性について議論し、現在はbSIのBoard Directorを務めています。国際標準化に関する知見を国内の実務に生かすことは重要ですが、bSIでの活動と当社の事業活動は明確に区別しています。

日本の施工BIMは高水準、次の課題は「データをつなぐ」こと 

――日本のBIMの現状をどのように見ていますか。 

【矢嶋氏】日本の施工BIMは国際的にも高い水準にあると考えています。一方、設計BIMの活用度には企業間で差があります。今後はモデルを作成するだけでなく、設計・施工・維持管理、さらには建築確認申請へとデータをつなぐことが重要になります。特にIFCの属性情報の正確性や、異なるシステム間での相互運用性が鍵になります。 

 ――設計事務所にとって、IFCへの対応は大きな課題でしょうか。 

【矢嶋氏】IFCは国際標準であり、単なるファイル交換形式ではなく、建築情報を組織や工程を越えて活用するための共通基盤です。基本的な概念は比較的短期間で学べますが、実務で適切な属性を設定し、データ品質の確保や検証まで行うためには、専門的な知識と経験が求められます。 

特に中小規模の設計事務所では、人材や時間の制約があるため、外部専門家との連携も現実的な選択肢です。 

――国際的な認証制度や資格も重要ですか。 

【矢嶋氏】重要だと考えます。ただし、ソフトウェアの所定のIFC入出力機能を対象とする認証と、個人の知識・技能を対象とする教育・資格制度は別のものです。また、個々のプロジェクトで扱うデータの品質については、別途確認・検証が必要です。

両者の役割を理解したうえで適切に活用し、実務で扱うデータの品質を高めていくことが重要です。急激に一律の対応を求めるのではなく、中小事業者も参加できる段階的な支援が欠かせません。

当社は、buildingSMART Internationalの「Professional Certification Program」における認定トレーニングプロバイダーとして、個人を対象としたBIMプロフェッショナル認証トレーニングを提供しています。

グローバルBIM公式では、同社がbuildingSMART Internationalから「BIM国際認証トレーニングプロバイダ」に登録され、資格取得のためのBIMプロフェッショナル認証トレーニングコースを提供していることが確認できます。 buildingSMART International側でもProfessional Certification ProgramはopenBIMに関する個人向け認証制度として位置づけられています。

BIM導入の本当の課題は「ソフト導入」だけではない 

――BIMの導入を進めるうえで、どのような課題がありますか。 

【矢嶋氏】ソフトウェアを導入することと、BIMを業務に定着させることは異なります。設計・施工の仕事の進め方や情報共有の仕組みを見直し、人材を育成する必要があります。導入初期には費用や時間的な負担が増える場合もありますが、その程度や効果が表れる時期は、企業規模や業務内容によって異なります。 

重要なのは目的を明確にし、段階的に活用範囲を広げることです。 

――中小規模の設計事務所にとって、費用面もハードルになりますね。 

【矢嶋氏】BIMソフトのライセンス、PCなどの設備、教育、業務移行のための時間が必要です。ただし必要なPCの性能や導入費用は、扱うモデルの規模やソフトウェア、運用方法で大きく変わります。初期投資と毎年の運用費を分けて考えるべきです。国などの支援策を活用しながら、自社で担う業務と専門企業に委ねる業務を組み合わせる方法もあります。 

――御社では、具体的にどのような支援を行っていますか。 

【矢嶋氏】BIMの実務支援に加え、導入・運用の支援やIFCデータの整備、品質確保などを行っています。また、Catenda Hubを活用したCDEの普及にも取り組んでいます。

CDEはBIMモデルだけでなく、図面、文書、課題などの情報を関係者間で共有するとともに、版管理や承認状況、変更履歴などを管理し、関係者が信頼できる情報を使える環境を整える役割を担います。こうした仕組みを通じて、プロジェクト全体のデータ連携を支えています。

ソフトウェアの選定・運用についても、各社の体制や目的に応じて支援していきます。

BIMからデータ、そしてAIへ 建設産業の次なる変革 

――今回のサミットを通じて、どのような展望を持ちましたか。 

【矢嶋氏】今回の東京サミットには主催側として運営にも携わり、大きな成果を得られたと感じています。建築だけでなく土木やGISなど幅広い分野で、データ連携の重要性が議論されました。国土交通省をはじめとする関係者の参加もあり、建設分野のデジタル化を社会全体の仕組みとして考える必要性を改めて感じました。今後は行政、設計者、施工者、建物所有者が、国際標準に基づく情報を継続的に活用できる環境が求められます。

――今後、グローバルBIMはどのような役割を担いますか。 

【矢嶋氏】BIMの普及そのものが最終目的ではありません。重要なのは、BIMで生み出された建築情報を設計、施工、維持管理、行政手続きまで一貫して活用できるようにすることです。

当社では、建築確認申請のデジタル化を見据え、申請前のIFCデータの品質確保や必要な情報の整備、事前チェックを支援するための仕組みづくりに取り組んでいます。審査そのものを行うのではなく、申請に必要な情報を適切に整え、円滑な手続きにつなげることを目指しています。現在提供しているBIM・IFC関連の支援に加え、建築確認申請のデジタル化を見据えた情報整備や事前チェックの仕組みについても、開発・検討を進めています。

さらに、建設分野でAIを精度高く、信頼性をもって活用するには、情報の品質を確保し、構造化して管理することが重要です。BIMモデルに蓄積された情報を、工程や組織を越えて活用可能なデータとして整え、AIによる業務支援へつなげていく。IFCなどの国際標準とCDEによる情報管理を基盤として、BIMからデータへ、そしてAIへとつながる建設産業の変革を支えていきたいと考えています。

 BuildApp News編集部より 

buildingSMART International Summit Tokyo 2026の現地取材を通じて改めて感じられたのは、BIMをめぐる議論が、単なる導入や3Dモデルの活用から、BIMモデルに蓄積された情報をいかに整え、設計・施工・維持管理などの工程を越えて活用していくかという段階へ進んでいることです。

国際標準に基づくデータ連携、CDEによる信頼できる情報の管理・共有、そしてその先にあるAI活用。矢嶋 和美氏へのインタビューからは、施工現場で培われた知見とBIMを起点に、設計情報を実際の施工やその後の工程で活用できるデータへとつなぎ、建設産業の情報基盤を変えていく可能性が見えてきました。 

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