BIMサービスプロバイダーとして活動するグローバルBIM社の現在地とは|深堀り取材【毎月更新】

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著者:樋口 一希

建築BIM加速化事業にともない、BIMやDX化への注目および実施速度も本格化しています。今月の第2回は、建設業界におけるBIMシステムの効率的な運用を支援する企業に着目します。

グローバルBIM社のミッション

BIMサービスプロバイダーとして活動するグローバルBIM社は、BIM関連システムの開発・提供やBIM導入支援とあわせて、施工図会社が担う建設現場での総合調整機能を高度化するべく積極的な施策を進めている。

今回は、6月15日付けで代表取締役社長に就任した矢嶋和美氏に、建設業にとって最も重要な生産拠点である建設現場のデジタル化に貢献するグローバルBIM社の現在地を聴いた。

施工図会社に求められる設計図書を読み取り、施工情報を付与して現場へ繋ぐ総合調整力

建設現場においては、設計者と施工者の間を架橋し、設計情報を施工情報へと翻訳する総合調整機能を施工図会社が担っており、施工図は、関係者間の設計意思の確認と情報共有のためのメディアとして用いられている。

現状では多くの場合、設計組織からは2次元の設計図書が提供される。施工図会社では設計図書には描かれていない施工情報を付与した施工図を作成し、意匠・構造・設備間の取り合い調整、不整合部分の見える化によって平面詳細図・躯体図などを作成する。

このように施工図会社には、2次元の設計図書を読み取り、リアルな建設現場へと架橋する高い総合調整力が求められる。また最近では、総合調整機能を高度化するためにBIM関連システムの有効性が認知され、援用されるケースが見られる。

BIMによって統合された建物情報の援用により、生産性向上と施工品質の向上を実現

グローバルBIM社では、BIM関連システムの開発や提供を行うとともに、それらBIM関連システムを自ら援用し、「BIMを基軸とした施工図会社」ともいえる新しい職能を担っている。
国内最大規模となる半導体工場のプロジェクトにおいては、デジタルによる建物情報の見える化、共有化によって総合調整機能を高度化することに成功し、従来のアナログ2次元の施工図方式での手戻りを減少、施工図作成の工数削減を実現している。

従来、施工図会社に対しては、成果物として施工図に対価が支払われていた。半導体工場プロジェクトにおいては、デジタルによる総合調整業務という、新しい職能の「サービス」に対しても対価が支払われている。
BIMによって建物情報を統合管理するデジタル化された建設現場では、作業工数の減少に見られる生産性向上に加えて施工品質の向上にも寄与する。
それらは施主・事業主にとっても、建設費の適正化、見える化を可能とし、元請けの建設会社にとっては現下の人手不足の解消にも貢献する。

合わせて「BIMを基軸とした施工図会社」という新しい職能の認知へと結びつき、事業領域の拡張を可能にする。

「BIMを基軸とした施工図会社」の総合調整機能により、デジタル空間に仮想竣工を実現


RC・鉄骨・設備の統合モデル

シンガポール政府の建築建設局(BCA: Building and Construction Authority)の傘下でBIM教育を行うBCA Academyには、BIM Studioと呼ばれる施設がある。入口のプレートに掲げられていたのが「Build twice,first virtual,then real.」だ。

「二度建てる。最初は仮想的に、そして実際に」。「BIMを基軸とした施工図会社」として機能するグローバルBIM社は、バーチャル空間上に仮想竣工を実現している。仮想竣工によって、デジタル空間上に最初に対象建物を建ててしまうことで、設計段階では早期に納まり上の問題点の発見や不整合を削減ができるし、施工段階でもあらかじめ納まり検証などができているため、より適切な施工計画を遂行できる。
視覚的でわかりやすい3次元モデルによって施主・事業主との合意形成の精度も上がる。

元請けの建設会社にとっては、焦眉の急である時間外労働の削減と人手不足の解消へと結びつき、余裕のある労務状況を実現する。建設業にとって最も重要な生産拠点である建設現場において、BIM関連システムを徹底活用して情報をデジタル化する際に中心的な役割を果たすのが、「BIMを基軸とした施工図会社」だ。

グローバルBIM社では、施工図会社として長年に渡る優れた実績を有するアートヴィレッヂとM&A(Mergers and Acquisitions)での事業譲渡によって合体し、建設業のデジタル化に推進している。