急速に発展する建設分野での生成AI援用の現在地を多分野に渡り追跡:高速生成する技術を開発_NEC/「LightningBIM AI Agent」大型アップデート_Arent|深堀り取材【毎月3回更新】

BIMによる様々な建物3次元モデルを対象とした生成AIの援用がよりリアルな現場領域に拡がりをみせている。
本稿では、独自AIによって高精細な3次元モデルを最短1分ほどで高速生成する技術を開発したNEC、建設業向けAIエージェント「LightningBIM AI Agent」の大型アップデートを行ったArentの事例について報告する。
独自AIで不要な被写体を自動除去+高精細な3次元モデルを高速生成する技術を開発
NECでは、※1)世界で初めてスマートフォンなどに搭載された汎用カメラで撮影した映像のみから独自AIによって不要な被写体を自動除去し、高精細な3次元モデルを最短1分ほどで高速生成する技術を開発した。当該技術は、※2)慶應AIセンターとの共同研究による成果である。
当該技術では、高価な専用機材を用いることなく、電力などのインフラ設備や建設現場など変化の多い環境においても、現場の稼働を止めずに現場状況を精緻に再現した3次元モデルを高速に生成できる。生成した3次元モデルは、一般的なパソコンやタブレットでも手軽に閲覧できるため現場状況を即時に把握できる。これによってリモートでの設備点検や異常時の迅速な判断を可能にする。
NECでは、当該技術をもってインフラ事業者や建設業におけるデジタルツインの導入促進や人材不足の解消、設備の安全性向上に貢献する。2027年度中の実用化を目指している。
※1) 世界で初めて:NEC調べ
※2) 慶應AIセンターとの共同研究による成果: ビジュアルコンピューティング分野の第一人者である斎藤英雄氏との共同研究成果

FM-Baseは、NECファシリティーズ株式会社の登録商標。
効率的な粒の配置でモデルの高速生成を実現+不要な被写体の自動除去による再現性の高さ
今回、NEC が開発した独自AIの技術的な特長を列記する。
効率的・最適な粒の配置による3次元モデルの高速生成を実現している。NECが開発した当該技術は、現場映像内の見た目の複雑さを自動で解析する。見た目が複雑な部分には、3次元モデルを構成する粒を高密度に配置し、見た目が単調な部分は間引くことによって粒の数や密度を最適化する。これによって必要な部分は高精細に、他の部分は簡素化し、精細さを損ねずに3次元モデルを生成できる。従来の※4)ガウシアン・スプラッティングの生成方法に比べ、生成時間を10分の1に短縮し、最短1分ほどで高速生成する。

不要な被写体の自動除去による現場状況の再現性の高さを誇る。3次元モデル生成の過程で、現場映像に映り込んだ作業員や一時的な物体などを自動で検出・除去する。更に現場の状況変化に応じて、除去部分は周囲映像から背景を補完するため、稼働中の現場であっても不要物を除いた現場の状態を精緻に3次元モデル化できる。

※4)ガウシアン・スプラッティング: ガウシアン・スプラッティングは、広がりを持った粒(ガウシアン)の集まりで空間を表現する技術。従来の3次元モデルと比べて軽量で、対象物の色や形状を高精細に再現できる特長がある。これによって設備や機材の細部形状・配置・外観、更にはメーターやボタンといった細かな部品まで歪みや情報の損失を抑えながら正確に3次元表現することが可能。
映像共有では確認したいシーンを迅速に特定+現場状況を的確に把握しづらい課題に対応
近年、インフラ事業者や建設業の現場では、人材不足や設備点検における移動コストの増加を背景に、現場映像を遠隔地にいる監督者と共有し、リモートから判断や指示を行う取り組みが広がっている。一方で、現場からの映像共有だけでは確認したいシーンや視点を迅速に特定しづらいなど、現場状況を的確に把握する上で課題があった。
そのような状況下、リアルな現場状況を仮想空間上に再現するデジタルツインの実現手法の一つとして、確認したい箇所を自由な視点で見られる3次元モデルの活用が期待されている。加えて、高価な専用機材の準備や現場の稼働を中断しての撮影、更に撮影後の3次元モデル生成にも時間を要することが導入の障壁となっていた。
NECでは、このような課題に対する技術として、近年、映画やアニメの背景生成への応用が進み、注目されているガウシアン・スプラッティングと独自AIを組み合わせ、高精細な3Dモデルの高速生成を実現した。
建設業向けAIエージェント「LightningBIM AI Agent」大型アップデートベータ版をリリース
Arent(港区: 代表取締役社長鴨林広軌氏)では、建設業向けAIエージェント「LightningBIM AI Agent」の大型アップデート ベータ版をリリースした。従来は、専門技術者のみが扱えたBIMモデルの情報照会・操作をArentが保有する特許技術を基盤としたAIが自然言語で受け付け、モデル全体を横断して即座に回答・実行する。
今回の大型アップデートでは、モデル全体の構造を把握した上で高精度な検索・分析を行う機能を中核に据え、更に複数ステップに渡る大規模タスクをAIが自律的に実行・検証する機能を追加した。既存の安定版と並存する形で提供する。
◇提供条件
既存ユーザーはベータ版を追加費用なしで利用できる。ベータ版の利用を希望する場合は、問い合わせること。
◇問合せ先
◇デモ予約
検索精度の飛躍的向上を実現+モデル全体の分析+要素選択の追加+大規模タスクの自律的実行
アップデートの主な内容を列記する。
検索精度の飛躍的な向上を実現している。
モデル全体の要素情報をAIが把握した上で検索するようになり、自然言語による問い合わせへの回答精度・速度を大幅に改善した。タイプ名・位置・フロアを組み合わせた複合条件での検索に加え、「このモデルには何がいくつあるか」といった俯瞰的な問いにも即座に回答する。
モデル全体の分析を行う。従来までの検索では困難だったモデル全体の情報や建物の構成要素数、階ごとの配置、部屋・空間情報などの俯瞰的な把握が可能になった。モデルの「現状」をいつでも即座に確認できる。
操作のコマンド化と再利用を可能とした。
AIに一度指示した操作を「コマンド」として保存し、次回以降はAIを介さずにワンクリックで素早く再実行できる。保存したコマンドは、自然言語を使って対象や条件の変更、処理の追加などが可能。
要素選択機能の追加を行っている。@メンションを利用して要素やパラメータを指定することが可能になった。要素を選択している場合は、選択中の要素とその関連パラメータを専用ポップアップから選択でき、要素が未選択の場合は、要素やパラメータを検索し、チャット欄へ@参照として素早く挿入できる。
大規模タスクの自律的な実行・検証ができる。「〇〇の要素を全て検索し、条件を確認した上で削除する」といった複数ステップにわたるタスクをAIが自律的に計画・実行・検証する。思考プロセスの可視化機能も搭載し、AIの判断根拠をリアルタイムで確認しながら作業を進めることができる。Arentの社内検証では、設備設計における一括再計算やワークセットの自動整備など、従来は手作業で数時間を要していた複合的な作業への適用を確認している。
【Lightning BIM AI Agent】ワークセットの自動整理_作成:Arent
【Lightning BIM AI Agent】選択要素を使用して要素を的確に指定_作成:Arent
BIMモデルに自然言語で指示+要素の検索・数量確認・編集・削除などをAIが自律的に実行
LightningBIM AI Agentは、Arentが開発するAutodesk Revit連携型のAIエージェント。BIMモデルに対して自然言語で指示を与え、要素の検索・数量確認・編集・削除などの操作をAIが自律的に実行する。建設・設計実務における情報照会や反復作業の効率化を目的として提供している。
LightningBIM AI Agentの中核機能である自然言語によるBIM検索・抽出・編集技術は、Arentが保有する特許(特許第7757475「BIM検索方法及びBIM装置」・登録日:2025年10月10日)に基づいている。
当該特許は、BIMシステムに単一の検索窓を設定し、自然言語または画像による入力からパーツの属性情報を抽出してパーツ群画像として表示する方法及び抽出したパーツの寸法を一括変換する方法等を権利範囲としている。今回のアップデートにおける検索精度向上及びモデル全体分析機能は、この特許技術をさらに発展させたもの。