急速に発展する建設分野での生成AI援用の現在地を多分野に渡り追跡(第十三回)/東急建設が北野建設及び富士通と協働する生成AI援用の事例|深堀り取材【毎月3回更新】

生成AIが話題に登るようになったのは、昨日のことのようだ。そのような状況にも関わらず、フィジカル主体の建設現場を最重要な生産拠点とする総合建設業においても、生成AIを積極的に援用する事例が相次いでいる。本稿では、東急建設が北野建設及び富士通と協働する生成AI援用の事例について報告する。

現場での工事進捗やタスクの抜け漏れリスクを低減する建設工程管理支援AIの実証実験開始

東急建設、北野建設及び富士通では、建設現場における工事進捗とリスクの管理を支援するAI(建設工程管理支援AI)について※Fujitsu Technology Park(FTP)において実証実験を開始した。

実証実験では、多数の協力会社や資機材が関わる中で工程管理、資材手配、申請手続き・検査・承認対応などの業務が複雑に連携して進められている。建設工程管理支援AIは、工程表や日報、手続きや検査などのデータから1、2か月先の工程や資材・人員手配、確認事項に関する抜け漏れ候補を根拠と共に提示することを目指している。

建設工程管理支援AIによって建設現場における工程遅延や手配・申請漏れなどのリスクを低減し、人手不足や経験者に依存した現場管理などの課題に対応、年々、複雑化する建設現場の生産性向上と知見継承への貢献を目指す。
役割分担については、富士通は、建設工程管理支援AIの企画・開発、各現場データの分析及びAIの検証を実施し、東急建設と北野建設は、現場知見や検証データ提供と建設業務の観点から評価及びフィードバックを実施する。

※Fujitsu Technology Park(FTP): 所在地:神奈川県川崎市中原区上小田中4-1-1

実績データと手続き・承認・検査情報・安全指示情報などの現場データを横断的に分析

建設工程管理支援AIは、図面や工程表、作業日報など現場の共有ファイルに蓄積された実績データと手続き・承認・検査情報、安全指示情報などの現場データを横断的に分析する。

加えて、官公庁や自治体が定める建設工事に関する法令、条例、規則などを踏まえ、必要な申請、資材発注や重機手配、検査、協力会社との調整などに漏れがないかの確認を支援し、工程遅延に繋がるリスクの候補とその根拠を提示する。工程表と日報の差異分析や支障要因候補の抽出によって現場責任者の迅速な意思決定を支援するAIとなっている。

建設工程管理支援AIの画面イメージ:確認事項を提示(作成: 東急建設)
建設工程管理支援AIの画面イメージ: 建設場所に合わせて申請事項を表示(作成: 東急建設)

段取り漏れや工程遅延リスクの検知精度・根拠情報の有用性など業務支援の有効性を評価

実証実験の概要をみてみよう。※FTP再開発プロジェクトにおいて、東急建設及び北野建設が同時並行で実施している異なる建設工事を対象に、富士通が東急建設及び北野建設の各々と建設工程管理支援AIの有効性を検証する。期間は、8月3日から12月25日までである。

それぞれの建設工事に建設工程管理支援AIを適用し、段取り漏れや工程遅延リスクの検知精度とその根拠情報の有用性、現場責任者の業務負荷軽減と業務支援の有効性を評価するのに加えて、施工会社ごとに異なる図面、工程表、作業日報などのデータ形式や業務プロセスに対応できるかを検証する。

FTP再開発プロジェクト: 富士通が川崎市と連携し、2025年から2035年にかけて推進する再開発プロジェクト

「Open Innovation & Technology Park」をコンセプトに先端技術の実証や地域共創を推進している。

今後とも実証実験を通じて得られた課題や要件から建設工程管理支援AIの有効性を高める

今後について、東急建設、北野建設及び富士通は、実証実験を通じて得られた課題や要件から建設工程管理支援AIの有効性を高め、工程遅延や手戻りの削減、申請・承認・検査・資材手配漏れの防止に加えて、現場運営の負荷軽減、若手現場監督の業務支援、熟練者への依存の低減を目指す。

富士通は、AIプラットフォーム「Fujitsu Kozuchi」及び量子インスパイアード技術「デジタルアニーラ」を活用した検証の高度化を予定しており、将来的には、写真データや点群データ、施工図、BIMデータ、建設会社内ナレッジなどとの連携も含めて実用化を進める。それによって建設業界の生産性向上、人手不足への対応、熟練者の知見継承などへの貢献も目指す。

東急建設及び北野建設は、今回の取り組みを通して、AIを始めとするデジタル技術の活用を積極的に推進し、建設現場の生産性向上と働き方改革の両立を目指していく。

建設事業の変革と新規事業の創出をミッションにTCIFを通じてスタートアップ企業へ出資

東急建設では、建設事業の変革と新規事業の創出をミッションに「TOKYU-CNST GB Innovation Fund L.P.」(運営者:グローバル・ブレイン:以下※「TCIF」)を通じて、さまざまなスタートアップ企業への出資を進めている。今般、米国のスタートアップ企業、Reframe Systems, Inc.(本社:米国マサチューセッツ州・CEO:Vikas Enti:以下「Reframe Systems社」)へ出資した。

※「TCIF」:「外部の革新的な技術やビジネスモデルを取り込み、東急建設の事業ポートフォリオ変革と持続的成長を目指すためのコーポレート・ベンチャー・キャピタル(CVC)」のこと。

出資の背景及び今後の展開について概説する。

今回のReframe Systems社への出資を通じて東急建設が有するデジタル設計・自動化技術に関する知見を獲得すると共に、建築生産の工業化・省人化や設計・調達・施工を含むサプライチェーン全体の生産性向上への応用可能性を検討していく。

東急建設では、今後も「TCIF」を通じてスタートアップへの出資・連携を積極的に推進し、建設事業の変革と持続可能な社会の実現に向けて取り組んでいく。

Reframe Systems社のロボット機能(作成:東急建設)
Reframe Systems社の製品イメージ:低層〜5階建て住宅まで多種多様な住宅を製造(作成:東急建設)

地域分散型マイクロファクトリーを展開する米国のフィジカルAI企業「Reframe Systems社」

Reframe Systems社は、ソフトウェアとロボティクスを活用した地域分散型マイクロファクトリーを展開する米国のフィジカルAI企業。

住宅の設計から部材・モジュールの製造、現地での組立・施工まで住宅生産のプロセス全体を一貫して手掛けている。

それらを支える統合型の住宅生産システムによって、従来の建設工法と比較して住宅を3倍のスピードかつ最大35%低いコストで提供することを目指している。建設時の廃棄物を削減すると共に、さまざまな技能レベルの施工者が組み立てや仕上げ作業に注力できる環境の実現にも取り組んでいる。

Reframe Systems社の会社概要・企業ロゴ(作成:東急建設)