【中編】建設DX展で見つけた注目DXサービス|3Dプリンタを活用した型枠技術_株式会社 DigitalArchi/手軽に活用できる3Dスキャンアプリ_nat株式会社

2026年8月26日(水)~28日(金)に開催された建設DX展[大阪]は、建設業界のDXをテーマとした専門展示会です。当サイトでは会場を取材し、最新の建設DXトレンドや注目サービス、ゼネコン目線で押さえておきたい展示内容を全3回の記事でご紹介します。
中編では、建設DX展で見つけた注目のDXサービス「3Dプリンタを活用した型枠技術_株式会社 DigitalArchi」「手軽に活用できる3Dスキャンアプリ_nat株式会社」についてご紹介します。ゼネコン担当者が把握しておきたい内容を取り上げているので、ぜひチェックしてみてください。
3Dプリンタを活用した型枠技術|株式会社 DigitalArchi

株式会社DigitalArchiは、3Dプリント技術を活用し、建築施工のデジタル化・生産性向上を目指すスタートアップ企業です。主力製品は、再生樹脂を材料とした大型3Dプリンタ製のコンクリート型枠で、デジタルデータから複雑な形状の型枠を製造し、現場での加工・組み立て作業を省力化しています。
「建築のつくるをつくる」をミッションに、設計や施工管理に比べてデジタル化の余地が大きく残る、建築の「つくりかた」そのものを変えていくことを目指しています。従来は施工上の制約から難しかった意匠を実現するとともに、現場作業の省人化や技能への依存の低減、使用済み型枠の再資源化による資源循環にも取り組んでいます。
出展概要

株式会社DigitalArchiの特徴は、再生プラスチックを材料とした3Dプリント型枠です。従来、職人が現場で加工・組み立てていた型枠を、デジタルデータをもとに工場であらかじめ成形することで、現場では「並べて固定するだけ」の状態で納品できます。
これにより現場の作業負担や工期の削減につなげるとともに、従来は施工の難しさから諦められていた曲面などの複雑な意匠も実現できるのが強みです。一品一様の形状に対応する「フルカスタム型枠」と、設備基礎や階段、パラペットなど定型的な部材に対応する「セミカスタム型枠」も展開しています。
導入事例や実証事例

代表的な事例の一つが、商業施設「MAZAKA」の庇です。斜面に沿って伸びながら大きく湾曲して張り出す複雑な形状を、3Dプリント型枠によって実現しました。製作にあたっては設計事務所やゼネコン、施工会社と打ち合わせを重ね、モックアップでコンクリートの仕上がりや継ぎ目などを確認しながら型枠を改良することで、3Dプリント特有の積層痕も意匠の一部として生かされています。公式サイトでは2026年8月に、全周120mの湾曲スラブを実現した事例として公開されています。
このほか、BIMモデルを活用した変形天井スラブ用型枠や、鋼製型枠と3Dプリント型枠を組み合わせた実証実験、建材メーカーや大手ゼネコンとの協業など、デジタル設計と施工をつなぐ取り組みも進めています。
今後の展望

DigitalArchiが目指すのは、単に「3Dプリンタで珍しい形を作る」ことではありません。3Dプリント型枠が一般的な施工技法として普及すれば、意匠表現の幅が広がるだけでなく、構造や材料の最適化、さらには建築施工のスケールでの資源循環にもつながります。
例えば、従来は型枠の製作・施工上の制約から平面的・均一にしていた部分を、構造的に必要な箇所だけにコンクリートを残す形状へと最適化できれば、セメント使用量や建物重量の削減につながる可能性があります。
また、使用後の型枠を回収・再資源化することで、型枠そのものの廃棄物削減にもつながります。設計自由度の向上に加え、材料使用量の削減や型枠の循環利用まで含め、建築プロジェクト全体の環境負荷低減につなげられる点も、同社の技術の特徴です。
同社は、建築、3Dプリンタ、材料、施工それぞれの知見を組み合わせることで、現場の課題を起点とした技術開発を重視しています。今後はフルカスタム型枠に加え、定型部材を効率的に製造できるセミカスタム型枠の展開を進め、型枠施工の省力化や工期の読みやすさを高めることで、建設現場の生産性向上に貢献していくことが期待されます。
手軽に活用できる3Dスキャンアプリ|nat株式会社
nat株式会社は、3Dスキャン技術を活用した現場調査の効率化をはじめ、建築・住宅関連のDXを支援するサービスを展開する企業です。主力サービス「Scanat(スキャナット)」では、iPhoneやiPadに搭載されたLiDARセンサーを活用し、現場を歩きながらスキャンするだけで空間を3Dモデルとして記録できます。
距離や面積の計測にも対応し、現地調査から図面作成までの業務効率化を支援します。特別な測量機器を必要とせず、既存のデバイスで手軽に利用できるのも特徴です。
出展概要

nat株式会社のScanatは、現場を丸ごと3Dデータとして記録し、後からオフィスで確認・計測できる3Dスキャンアプリです。従来の現地調査では、複数人で現場に赴き、写真撮影とメジャーによる計測を別々に実施するケースもありました。しかしScanatなら、動画を撮影するように現場を歩いてスキャンするだけで、空間を記録できます。
大きな特徴は、現地調査の「属人化」を解消できる点です。経験の浅い担当者でも比較的簡単に操作できるため、測り忘れや記録方法のばらつきを抑えやすくなります。これまでベテランの「経験や勘」に頼っていた業務を、誰でも扱えるデジタルデータへ変えていく点に、同社のDXの大きな意義があります。
導入事例や実証事例

Scanatは、建築・建設業界に加え、住宅リフォーム、自治体、消防、国道のメンテナンスなど幅広い現場で活用されています。建設会社では現地調査の時間を58%削減した事例があるほか、国道の法面を計測して改修工事に活用した事例は、国土交通省の働き方改革に関するモデル事業にも選定されています。
また愛媛県の自治体プロジェクトでは、消防活動後の火災現場を空間ごと記録する用途にも活用されています。こうした事例からも、同社が目指しているのは単なる「建物の3D化」ではなく、現場における調査・記録業務そのものの効率化であることが分かります。現在では多数の企業・自治体に導入されており、ゼネコンをはじめ多様な現場で活用されています。
今後の展望

nat株式会社では、Scanatの機能を継続的にアップデートし、現地調査だけにとどまらない活用を目指しています。最近では、スキャンした空間データをインテリアコーディネートに活用する取り組みも進めています。家具の配置検討や寸法の確認、施工前後の比較など、空間をデータ化することで新たなサービスにつなげる考えです。
同社が重視するのは、専門的な知識や特別な機材を必要とせず、「誰でも簡単に使える」ことです。iPhoneやiPadだけで、動画を撮るようにスキャンできる手軽さを武器に、現場調査の属人化を解消し、経験や技量に左右されにくい業務環境を広げていくことが期待されます。
まとめ
今回紹介したサービスからは、建設DXが「紙やアナログ業務のデジタル化」にとどまらず、現場の施工方法や業務そのものを変える段階へ進んでいることが分かります。3Dプリンタによる型枠の省力化、3Dスキャンによる現地調査の効率化など、いずれも現場の負担軽減と生産性向上が共通するテーマです。
とくに専門技術を現場の誰もが扱える形にすることで、属人化の解消や人手不足への対応につなげる動きが、今後の建設DXを考える上で重要になると考えられます。
次回予告
最終回の【後編】では、ゼネコン目線から見た注目展示3選をお届けします。引き続きお楽しみに。

