DfMAシンポジウムvol.2 -リア・ローディングからの脱却-_開催レポート【第6回】| 前田建設工業株式会社 建築生産技術部 担当部長 曽根巨充、東京電機大学教授 小笠原正豊、株式会社ヴィック 代表取締役社長 渡辺健児

人手不足や時間外労働規制を背景に、日本の建設産業では、現場に負荷が集中する従来のリア・ローディング型のプロセスからの転換が求められています。

【イベント告知】「DfMAシンポジウムvol.2 -リア・ローディングからの脱却-」開催のご案内

一般聴講可能・参加費無料(メディア取材も可能) ~2026年4月18日(土)13時開始、芝浦工業大学 豊洲キャンパス 交流棟 大講義室にて~… more

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本連載では、その解決策として注目されるDfMA(Design for Manufacturing and Assembly)を軸に、設計段階から施工・製造を見据えるフロント・ローディングの考え方と実践を探ります。シンポジウムでの議論や企業の取り組みをもとに、標準化やデータ連携、発注・契約のあり方など、建設プロジェクト全体の進め方を見直すヒントを提示していきます。

タイムテーブル内容:登壇者
13:00〜13:10開会の挨拶:GBTRCセンター長 / 芝浦工業大学教授 蟹澤 宏剛
13:10~13:40趣旨説明:東洋大学准教授 田澤 周平
13:40〜14:20 講演①:株式会社安藤・間建築事業本部 BIM推進部 施工BIMグループ 岩倉巧、長田開気 「BIMと製造CADの連携による基礎梁PCaの製作図作成ワークフローの効率化」
14:20〜15:00講演②:株式会社長谷工コーポレーション エンジニアリング事業部 DX推進室 室長 中野達也
「設計施工におけるフロントローディングの3類型」
15:00〜15:40講演③:株式会社カワトT.P.C 代表取締役会長 川戸俊彦、新規開発担当 田中聡
「BIMを用いた建築業のプレハブ組立と働き方改革推進サポート」
15:40〜16:20講演④:野原グループ株式会社 グループCSO 山﨑 芳治
「BuildAppにおける製作加工連携の取り組み」
16:35〜17:45パネルディスカッション
コーディネーター

・前田建設工業株式会社 建築生産技術部 担当部長 曽根巨充
・東京電機大学教授 小笠原正豊
・株式会社ヴィック 代表取締役社長 渡辺健児
17:45〜18:00クロージング:GBTRC副センター長 / 芝浦工業大学教授 志手 一哉

※タイトル表記は、タイムテーブルの表記に準拠しています。

3社_パネルディスカッション

コーディネーター

前田建設工業株式会社 建築生産技術部 担当部長 曽根巨充氏

東京電機大学教授 小笠原正豊氏

株式会社ヴィック 代表取締役社長 渡辺健児氏

曽根氏(前田建設工業):本日は、リアローディング、フロントローディング、そしてDfMAの違いを整理しながら議論できればと思います。まずリアローディングですが、これは設計段階で決めきれなかった内容が施工段階まで後ろ倒しになる状態です。

小笠原氏(東京電機大学):一方でフロントローディングは、施工側の情報をできるだけ早い段階、つまり設計段階に取り込もうという考え方ですね。

渡辺氏(ヴィック):さらにDfMAは、もう少し踏み込んでいて、計画段階や製品計画の段階から施工の工業化まで見据える考え方だと整理できます。

最近の変化として強く感じるのは、発注者側からBIMを求められるケースが増えている点です。特に外資系の発注者やデータセンター案件では、BIMが前提になっていることも珍しくありません。BIMを使うことで、後工程の情報も扱いやすくなっている実感があります。

曽根:設計施工案件でも、現場側からフロントローディングを求める声が出ていますよね。後工程でコストや工程が膨らむ状況は、もう看過できません。

渡辺:そうですね。加えて、ユニット工法などの工業化施工を一般建築に取り入れたいという動きもあります。情報技術の進歩で、それが現実に近づいてきています。

曽根:リアローディングから脱却するには、「施工情報をどの段階で決めるのか」を改めて考える必要があります。施工段階で問題を解くのではなく、設計や計画の段階に施工BIMの考え方を入れるべきです。

小笠原:発注者に何を求めるのかも重要な論点ですね。早い段階で何を決めてもらうべきかが議論になりますが、決して「すべて細かく決めてほしい」という意味ではない。

渡辺:むしろ、標準化やDfMAを前提とした進め方を受け入れるかどうか、その意思決定が重要だと思います。

曽根:ただ、その点で難しいのが従来の相見積もりの仕組みとの関係です。特定の工法や製品を前提に設計しても、最終的な採否が後から決まるケースも多い。

小笠原:つまり、早い段階で工法を決める考え方と、相見積もりの慣行が必ずしも整合しないわけですね。

渡辺:だからこそ、工期・品質・コストの安定化というメリットを発注者にきちんと伝える必要があります。後から工法が決まると再設計や調整が発生し、その負担も大きいですから。

もう一つ大切なのは、発注者の事業にとって何が必要かを明確にすることです。建物の用途や目的によって、必要な生産情報や施工情報は変わります。それを分解して、設計者や施工者に渡せる形にする力が求められています。

小笠原:特に複雑なデザインの建物では、その重要性が増しますね。形状の自由度とコストの関係を早い段階で示すことができれば、意思決定がしやすくなります。

曽根:デザインと事業性を結びつける情報の出し方が、今後の大きなテーマです。

小笠原:デジタル化の進展も見逃せません。数量やコストが見えやすくなれば、従来のように情報を隠したまま進めるやり方は難しくなります。

渡辺:結果として、仕事量に応じた適正な価格へ近づく可能性もありますね。

曽根:設計者の役割も変わってきています。DfMAが進むと、単に図を描く人ではなく、適切なタイミングで意思決定を行う役割が強くなります。

小笠原:標準化された製品や工法の中から選び、全体として成立させる力が重要になります。

渡辺:一方で、設計段階で決めきれない内容を後工程に送ってしまう問題は依然として残っています。

曽根:施工段階まで決定を引き延ばすと、BIMモデルが施工に使える状態になりにくい。やはり施工の知識を持つ人が早期に関与する必要があります。

小笠原:まとめると、生産性向上を施工段階だけに求めるのではなく、計画・設計段階から施工情報を組み込む必要がある、ということですね。

曽根:発注者・設計者・施工者が早期に情報を共有することが重要です。

渡辺:その上で、標準化できる部分と個別に決める部分を整理すること。これがリアローディングから脱却する方向性だと思います。

ー次回は、クロージングをレポートしてまいります。