DfMAシンポジウムvol.2 -リア・ローディングからの脱却-_開催レポート【第1回】|GBTRCセンター長 / 芝浦工業大学教授 蟹澤 宏剛 登壇/東洋大学准教授 田澤 周平 登壇

日本の建設産業では、施工直前まで変更を受け入れ、現場で細部を調整しながら品質を高めてきました。いわば、後工程に多くの負荷を寄せるリア・ローディング型の進め方です。
しかし、技能労働者の不足や時間外労働規制の厳格化が進むなか、現場の努力に依存した従来型の進め方は限界を迎えつつあります。品質を維持しながら生産性を高めるには、設計段階から施工や製造のしやすさを見据え、プロジェクト全体を前倒しで組み立てる考え方が欠かせません。
その解決策の一つとして注目されているのが、DfMAです。DfMAは、製造や施工のしやすさを設計段階から考慮する手法であり、フロント・ローディングを実現するうえで有効なアプローチとされています。実装には、設計者だけでなく、施工者の知見や発注者の合意形成も必要となります。
そういった背景もふまえ、本記事は、DfMAシンポジウムvol.2の内容について、サマリでお伝えいたします。リア・ローディングからの脱却を起点に、DfMAの考え方と建設産業への実装可能性を掘り下げてみていきましょう。
本シンポジウムでは、リアローディングからの脱却をテーマに、DfMA、BIM、製作加工連携、契約・発注のあり方が議論されました。各講演では、設計段階から施工・製造の情報を取り込み、後工程の手戻りや現場負担を減らす具体的な取り組みが紹介されました。
安藤・間、長谷工コーポレーション、カワトT.P.C、野原グループの事例からは標準化やデータ連携、製造との接続が今後の建設生産に欠かせない点が示されています。パネルディスカッションでは、発注者や設計者、施工者、専門工事会社が早期に情報を共有する必要性が確認されました。
今回の議論は、施工段階の効率化にとどまらず、建設プロジェクト全体の進め方を見直す契機となったといえます。
| タイムテーブル | 内容:登壇者 |
| 13:00〜13:10 | 開会の挨拶:GBTRCセンター長 / 芝浦工業大学教授 蟹澤 宏剛 |
| 13:10~13:40 | 趣旨説明:東洋大学准教授 田澤 周平 |
| 13:40〜14:20 | 講演①:株式会社安藤・間建築事業本部 BIM推進部 施工BIMグループ 岩倉巧、長田開気 「BIMと製造CADの連携による基礎梁PCaの製作図作成ワークフローの効率化」 |
| 14:20〜15:00 | 講演②:株式会社長谷工コーポレーション エンジニアリング事業部 DX推進室 室長 中野達也 「設計施工におけるフロントローディングの3類型」 |
| 15:00〜15:40 | 講演③:株式会社カワトT.P.C 代表取締役会長 川戸俊彦、新規開発担当 田中聡 「BIMを用いた建築業のプレハブ組立と働き方改革推進サポート」 |
| 15:40〜16:20 | 講演④:野原グループ株式会社 グループCSO 山﨑 芳治 「BuildAppにおける製作加工連携の取り組み」 |
| 16:35〜17:45 | パネルディスカッション コーディネーター ・前田建設工業株式会社 建築生産技術部 担当部長 曽根巨充 ・東京電機大学教授 小笠原正豊 |
| 17:45〜18:00 | クロージング:GBTRC副センター長 / 芝浦工業大学教授 志手 一哉 |
※タイトル表記は、タイムテーブルの表記に準拠しています。
開会の挨拶:GBTRCセンター長 / 芝浦工業大学教授 蟹澤 宏剛氏

DfMAシンポジウム Vol.2「リアローディングからの脱却」は、グローバル建築技術センター(GBTRC)の主催により、野原グループの協賛のもと開催されています。
今回のテーマである「リアローディング」とは、千葉大学名誉教授の安藤正雄氏が使い始めた言葉であり、日本のゼネコン型生産システムを象徴する考え方として紹介しました。
日本の建設生産では、現場で作り込み、現場ですり合わせながら品質を確保する方法が長く続いてきました。発注者にとっては、仕様や設計の決定を後ろ倒しにできる利点があります。一方で、工期末の突貫工事や直前の物決めなど、現場で働く職人や専門工事会社に負担が集中する側面もあります。
蟹澤氏は、リアローディングが成立してきた背景として、安定した経済環境と高い施工力を持つ職人・専門工事会社の存在を挙げました。しかし現在は、技能者の減少や外国人材の増加、資材調達リスク、働き方改革などにより、従来の生産方式を維持することが難しくなっています。
そのため、設計段階から製作や施工のしやすさを考えるDfMAの実装が求められています。プレハブ化やBIM活用、物決めの早期化、標準労務費への対応を進めるうえでも、設計と施工の連携が欠かせません。
今回のシンポジウムでは、リアローディングからの脱却に向けた実践的な取り組みが紹介されます。働き方改革、BIMを活用した情報共有、物決めの早期化などをテーマに、後半では登壇者によるディスカッションも行われました。
趣旨説明:東洋大学准教授 田澤 周平氏
東洋大学理工学部建築学科の田澤氏が、DfMAシンポジウム Vol.2の趣旨として、第1回シンポジウムで見えた課題と今回扱う論点について述べました。
第1回では、BIMコンサルタントや鉄骨ファブリケーターなどが登壇し、設計段階における生産技術の関与について議論が行われました。その中で共通して示された課題は、DfMAに関わる専門家や製作側の参画時期が遅い点です。上流段階で提案したいにもかかわらず、実際にはゼネコンやサブコンとの契約後に関与するケースが多く、提案できる余地が限られている状況が紹介されました。
そのうえで、リアローディングから脱却するには、物決めの前倒しが必要だと述べました。従来の日本の建設生産では、生産設計や施工BIMなど、ゼネコン主体で後半に労力を集中させる仕組みが続いている状況です。一方、IPDのように発注者が早期に関与する方式では、設計者やゼネコン、専門工事会社、エンジニアが早い段階から参画し、コンセプトを固めていきます。
また、DfMAは製造業で発展してきた考え方であり、組み立てやすさや作りやすさを設計段階で検討する手法です。建設業では、英国のレイサムレポートやイーガンレポートを背景に、オフサイトコンストラクションやモダンメソッドオブコンストラクションとともに議論されてきました。
建設業は、技能労働者不足や残業規制の厳格化により、建設業は供給制約の時代に入っていると述べました。その中でプロジェクトを効率的に進めるには、DfMAやBIM、オフサイト化、契約方式の見直しが必要になります。また、上流工程での発注者の関与も欠かせないという論点にもふれています。
今回のシンポジウムでは、安藤ハザマ・長谷工コーポレーション・カワト・野原グループの事例を通じて、リアローディングからの脱却に向けた具体的な取り組みを紹介する旨を伝えました。
ー次回より、講演内容をレポートしてまいります。
