建設会社・審査機関に現況聴取+課題を抱えながら次を見据え「BIM図面審査」スタート【BIM確認申請特集_前編】

「BuidApp News」の運営主体である野原グループ株式会社傘下のBuildApp総合研究所では、2026年5月22日~26日の期間、「※BIM図面審査」について全国の建設従事者823名を対象に意識調査を実施、制度の認知、導入意向、課題、期待条件などを多角的に分析し、6月16日付けで結果を公表した。

それによると、「BIM図面審査」に対する賛否について「判断保留」とする層が64%と多数を占める一方、制度への理解では賛成が8割を超えた。中でも、スーパーゼネコンは、評価・理解と共に高く、サブコン・専門工事業者では「認知不足による判断不能」が顕著となった。

「BIM図面審査」は、現状では制度として運用が開始されているものの、実務運用や審査プロセスの標準化に関する検討は継続段階にあり、制度の実務への影響や現場の受容度については十分な定量データも少ない。その結果、開始間際の状況においては、8割超の理解層が支持し、非認知層はほぼ支持しないなど、問われているのは制度ではなく理解の遅れであるとの分析に至っている。
本稿では、それら当該調査の内容を参照しつつ、ジャーナルの立場で、「BIM図面審査」の進行状況について各方面へのヒリングなどを行い、現況として報告する。

BuildApp総合研究所_ニュースリリース全文

【独自調査】BIM確認申請、評価は「知っているか」で決まる 理解層は8割超が支持、非認知層はほぼ支持せず

【独自調査】BIM確認申請、理解層は8割超が支持、非認知層はほぼ支持せず

野原グループのBuildApp総合研究所(所在:東京都新宿 区、代表:山梶真司)は、BIM確認申請(BIM図面審査)に対して全国の建設従事者… more

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※BIM図面審査: 国交省BIM図面審査制度説明会資料(出典:国土交通省ウェブサイト)

作成: 国土交通省

地場工務店吉川建設・スーパーゼネコン大林組に「BIM図面審査」を行った現在地を聴く

建築確認申請における「BIM図面審査」が4月1日から開始されて暫時、経過した。特定の社名、案件名、物件名などは秘匿性が高い事項のため公開できないケースもあるが、経過的な事象として何が起こっているのかを報告する。

ここでは、ネット上での公開情報などと共に、地方の県庁所在地において早くからBIMを導入した建設会社、「BIM図面審査」への対応を積極的に進めた民間建築確認機関などに匿名を条件に「BIM図面審査」の現在地、建築確認申請へのデジタル援用の今後を聴いた。

23年度よりBIMを活用+テンプレート整備や業務フローの改善で「BIM図面審査」に備える

吉川建設(長野県飯田市: 代表取締役社長吉川昌利氏)では、「BIM図面審査」制度に対応するべく、4月初旬に申請を実施し、意匠分野において長野県内で先行的に確認申請を実施したと6月25日付けで公表した。

吉川建設では、2023年度よりBIMを活用した確認申請図面作成に取り組んでおり、継続的なテンプレート整備や業務フローの改善を進めてきた。合わせて、国際的なBIMスキルを証明する「※buildingSMART プロフェッショナル認証」の有資格者数が長野県内で最多となるなど、高度なBIM人材の育成にも組織的に注力している。今般の「BIM図面審査」制度の開始に際して、社内の専門人材と蓄積された知見を最大限に活かすことによって実務レベルでのいち早い適用を実現した。

※buildingSMART プロフェッショナル認証: openBIMの普及を推進する国際組織「buildingSMART International」が認定するBIMの基本概念及び国際標準規格(IFCなど)に関する知識を証明する国際資格制度。

作成:吉川建設

3次元のIFCデータの参照で審査側が直感的に建築物の形状を理解できると肯定的な認識

従来の2次元図面による審査においては、審査側(確認検査機関や消防など)が建築物の立体形状を読み解くために時間を要し、形状に関する質疑応答などの対応が大きな負担となっていた。

それに対して「BIM図面審査」では、『2次元図面と併せて3次元の※IFCデータを参照することによって審査側が3次元モデルから任意の平面や断面を自由に抽出して、直感的に建築物の形状を理解できるようになる』との肯定的な認識を明らかにしている。

これによって関係機関の図面理解がよりスムーズになり、各図書間の整合性確認の一部省略が可能となるなど審査プロセスの抜本的な効率化が図られる。

※IFCデータ: Industry Foundation Classesの略。異なるBIMソフトウェアやシステム間で建物データを共有・連携するために策定された中立的な国際標準フォーマット。

作成:吉川建設

BIMテンプレートの改良+ BIMデータと確認申請書の連携機構の構築などの技術的対応実施

「BIM図面審査」への取り組みに際しては、BIMソフト「ARCHICAD」を活用して次に列記する技術的対応を行っている。

◇BIMテンプレートの独自改良

◇BIMデータと確認申請書の連携機構の構築

◇AIを活用した申請支援アドオン((β版)の開発・適用

◇室情報(ゾーン)への寸法情報の自動入力

◇確認申請書(Excel様式)への自動転記

特記としては、BIMモデルが持つデータを確認申請の書類へと直接連携・自動転記する仕組みを構築したことによって、従来まで手作業で発生していた作業負担を解消し、申請業務の大幅な効率化と入力ミスの防止を実現した点が挙げられる。

作成:吉川建設

確認申請実務の効率化と省力化によって「より早く高品質で確実な建築」という価値を実現

「BIM図面審査」における図面間の整合性向上や審査工程の効率化によって、次のような効果とメリットが明らかになった。

審査プロセスの合理化により、従来の確認申請に要していた期間の大幅な短縮が期待されると共に、着工までのリードタイム短縮によって事業開始の前倒しや投資回収期間の短縮に寄与するなどプロジェクトの早期化が実現する。

図面品質の向上により差し戻しリスクが低減し、プロジェクト全体のスケジュールの確実性が高まり、更には、手作業による転記作業などを削減することで確認申請実務の効率化と省力化に寄与する。

これらの改善を通じて建築主や事業者に対して「より早く、高品質で確実な建築」という価値を提供していく。

29年度の「BIMデータ審査」も見据えて26年度は「BIM図面審査」へ10件以上の案件で対応

大林組では、「BIM図面審査」に対応するため、※指定確認検査機関及び構造適合性判定機関などと連携し、BIMモデルを活用した確認申請を複数の案件で提出すると共に、同一の案件において申請・審査用のプラットフォーム(確認申請用CDE)を活用して省エネ適合性判定及び構造適合性判定も提出した。
 大林組では、DXを活用した申請体制の構築・運用によって各図面間の整合確認や指摘対応に伴う手戻りの削減を推進している。今般の取り組みでは、「BIM図面審査」制度に基づく確認申請を推進し、2026年度は10件以上の案件適用を目指している。加えて、2029年に予定されている「※BIMデータ審査」への移行など、将来的な制度動向やIFC活用拡大の流れを見据え、運用改善に取り組んでいく。

※指定確認検査機関及び構造適合性判定機関確認検査及び省エネ適合性判定:日本建築センター及び日本ERI・構造適合性判定:日本建築センター及びベターリビング

※BIMデータ審査: IFCデータを審査対象とした建築確認審査制度。2029年春から開始予定: BIM図面審査確認申請用CDE(出典:建築行政情報センター)

確認申請用CDE運用イメージ(作成:大林組)

20年からPDFによる電子申請に取り組むなど建築確認手続きのデジタル化を積極的に実施

建設業においては、人手不足や建築士の高齢化などを背景に、建築確認申請・審査の生産性向上が急務である中で、国土交通省は、その解決策として2026年4月より「BIM図面審査」制度を導入した。それら現状の課題を共通認識として共有する中で、大林組では、2020年からPDFを用いた確認申請の電子申請に取り組むなど、建築確認手続きのデジタル化を段階的に進めてきた。今般、それらの取り組みを踏まえ、「BIM図面審査」に対応可能な運用方法を整備した。

「BIM図面審査」制度は、BIMで作成した3次元の建物モデル(3Dモデル)を基に確認申請の図面などを作成し申請を行う。審査者は、従来のPDF図面に加えてIFCなどの3次元モデルを参考にすることによって図面ごとの整合性確認を省略することが可能となる。

3次元モデルを起点にして、確認申請に必要な図面及びIFCデータを作成し、これらが定められた入出力基準に沿って作成された図書であることを※誓約書により明確化する。合わせて、確認申請用CDEに申請に関わる図書を提出し、指摘事項の確認も同環境下で行う。

※誓約書: 設計者が入出力基準に従って入力・出力したことを申告する書類

確認申請用CDEで図書管理・指摘対応を一元化+誓約書作成を支える「合意形成会議」実施

大林組の「BIM図面審査」対応の流れを見てみよう。
建築モデル(意匠・構造)を整合性確保の起点と位置付け、どこまでをBIMで整合させるかの範囲を明確にしている。意匠・構造については、統合BIMモデルで一元的に管理することによって図面間の整合性を確保しやすい運用としている。他方で、設備については、建築モデル(意匠・構造)を参照(リンク)して作成することで、全体の整合性を確保すると共にヒューマンエラーの低減を図っている。これらの運用が「BIM図面審査」を前提とした申請図書の整合性向上の土台となる。

確認申請用CDEで図書管理・指摘対応を一元化している。確認申請用CDEを活用して、設計者と各審査機関(特定行政庁・指定確認検査機関・構造適合性判定機関・省エネ適合性判定機関・消防)が同一環境で最新の申請図書を共有できる体制を整えた。コメントや指摘事項を一元管理することによって指摘内容の行き違いを防止し、設計者側でもマークアップや差分確認により修正点を把握しやすくしている。

誓約書作成を支える「合意形成会議」を実施し、参考図面作図上の工夫も行っている。「BIM図面審査」では、設計者が誓約書を正しく理解し、整合性確保の対象範囲を明確にした上で記載することが求められている。更に、通常の確認申請と比べて事前確認や整理に一定の手間が生じる場合がある。そこで、設計者及び社内関係者が協力して誓約書を作成する「合意形成会議」を開催し、整合性確認部位を事前に整理することで提出資料の正確性を高めている。

併せて、構造図ではBIMの属性情報を色分けして出力する運用を行い、モデルから作成されていない2次元加筆部分は、緑色で明示している。設備図は、枚数が多く作業負担が大きいことから段階的な運用整備を進めている。

社内BIM図面審査フロー(合意形成会議の開催)(作成:大林組)
BIM出力した図面例(作成:大林組)

後編予告

先行企業の取り組みからは、BIM図面審査がもたらす可能性が見えてきた。しかし、その恩恵を全国で享受できる状況にはまだ至っていない。後編では、制度開始から見えてきた地域格差や電子申請の壁、さらには3年後に迫る「BIMデータ審査」への道筋について考察する。