建設業におけるDX推進に必須のIFCとCDEの現在地|深堀り取材【毎月更新】

建築BIM加速化事業にともない、BIMやDX化への注目および実施速度が本格化しています。第17回は、建設業におけるDX推進に必須のIFCとCDEの現在地について解説します。

BIMとIFCの役割と進展

BIMモデルに象徴されるデジタルデータは、優れた流通性、可用性によって組織の壁も工程の壁もやすやすと超えていく。その際に、異なるソフトウェア間でのBIMモデルの流通性、可用性を担保するのが中間ファイル IFC(Industry Foundation Classes)※だ。

あわせて、創るBIM=設計BIMから建てるBIM=施工BIM、維持管理するBIM=BIM-FMに至るまでワークフロー全体をデジタルでコントロールする際のプラットフォームとなるのがCDE(Common Data Environment):共通データ環境だ。

本稿では、BIMのより一層の進展に際して重要性が増しているIFC関連の高付加価値・多機能トランスレータ「IFC-VAX(β版)」について概説し、補足的にBIMによる建築確認申請時のCDEの位置づけについて報告する。

IFCデータ活用時に便利なビューワ+BIMモデルのチェック・修正・編集機能を有する「IFC-VAX」

アプリクラフトでは、IFCデータの入出力に対応した高付加価値・多機能トランスレータ「IFC-VAX」β版の提供を開始した。

「IFC-VAX」は、BIMモデルや属性情報を可視化するビューワとしては勿論のこと、BIMモデルのチェック機能や各種修正・編集機能、メッシュ削減やシュリンクラップ、BIMモデルの内面のみを抽出する機能などIFCデータを活用する上で便利な機能を備えている。これによって設計BIMモデルから各種解析モデルへの簡略化作業、3次元プリント用のモデル作成、協力会社とのデータ交換時のチェックなどに至るまで様々な用途に用いられる。

IFCデータとして変換出力される以前のBIMモデルの品質は作成者によってまちまちであるため、不可視領域の作り込み不十分などによるデータの整合性不足、データの重複・干渉や隙間などの存在、モデリング基準検査の未実施、加重なデータ容量などの問題が生じる。「IFC-VAX」は、それらの問題を解消し、ワークフロー全体の品質の確保、作業効率の向上を実現する。

FC-VAX(β版)の画面イメージ

IFCデータの入出力+編集+変換+可視化+干渉チェックなど豊富な機能の具体的な内容

IFC4データの入出力+Rhinocerosモデルとの相互変換

IFC4の入出力に対応、出力したデータはRhinocerosモデル(現在はメッシュのみ対応)や3次元プリント用のデータ形式であるSTL(Standard Triangulated Language)に変換可能だ。

Rhinocerosと連携して編集

「IFC-VAX」内で編集しきれない高度な処理が必要な場合は、Rhinocerosと連携し、RhinocerosやGrasshopperの機能を用いてデータを処理することが可能だ。編集を完了したデータは構造を保持したままで「IFC-VAX」に戻すことができる。

IFCデータの3次元形状と属性の可視化

IFCデータのビューワとして利用できる。ビューを操作して3次元での形状、属性、プロパティの確認ができ、一部の属性は編集・コピーが可能だ。

隙間や干渉+面の表裏のチェック

オープンエッジ(隙間や開口)、オブジェクト同士の干渉の検出機能を有する。開口や干渉があると、解析やシミュレーションができず、3次元プリントや異なるソフトウェアのデータ読み込みが不可となるなどの問題が発生する。それらを事前にチェックするために面の表裏のチェック・修正機能も搭載している。

メッシュ軽量化

ポリゴン数を削減(メッシュリダクション)する機能を搭載し、形状を維持したままポリゴンを削減したり、ある程度の形状の変化を許容してポリゴンを削減することができる。

シュリンクラップ(ShrinkWrap)機能

シュリンクラップでは、モデルを包み込む閉じたメッシュを作成することが可能だ。隙間を多く含む開いたモデルや複数のパーツがあるがブール演算ができないモデルなどを素早く閉じたメッシュに変換できる。解析用モデルや3次元プリント用モデルの作成に有効だ。

内面抽出機能

3次元モデル内の閉じた空間を認識し、その空間に接する面だけを抽出する内面抽出機能を装備している。完全に閉じた空間でなくても、ある程度の隙間や干渉を許容できる。光や熱、流体、音響などの解析を行う際の解析対象エリアのモデル作成の効率化が期待できる。

※IFC(Industry Foundation Classes)

建設業界におけるデータの共有化を目的に活動する国際的な標準化団体であるbuildingSMARTによって制定、開発されたオープンで中立的なデータモデルの仕様・規格。BIMモデルが有する属性情報を保持しているため異なるBIMソフト間でBIMモデルを流通、共有することが可能だ。そのため「窓」と定義されているBIMモデルは、保有する属性情報共々、異なるBIMソフト間においても「窓」として扱われる。

BIMでの確認申請で必須となる確認申請用IFCのルール策定と確認申請用CDEの構築

国土交通省では、BIMデータを用いた建築確認申請を2025年からBIM図面審査によって試行すると公表しており、更には先行した指定確認検査機関からスタートし、2027年度には全国展開するとしている。

BIM図面審査において提出が求められるのは、BIMデータから出力したPDF形式の2次元図面+3次元モデルや属性情報を含むIFCデータとしている。これによって従来、膨大な時間コストを要していた各図面間での整合確認作業をなくし、審査時間の短縮に繋げる。その後は、IFCデータを審査対象とするBIMデータ審査への移行を計画している。

その際、申請者・特定行政庁・指定確認検査機関がBIMソフトの種類に関わらず、データを共有し、閲覧可能とするため、確認申請用IFCのルール(確認用書き出し・読み込みルール)を策定し、確認申請用CDEの構築(ビューア・データ共有・IFCとPDFの整合確認機能など)が必須となる。


出典:建築BIMの将来像と工程表の改定(増補)について

出典:第14回建築BIM環境整備部会資料3