BIM教育の現在地|深堀り取材【毎月更新】

建築BIM加速化事業にともない、BIMやDX化への注目および実施速度が本格化しています。第11回は、BIM教育の現在地について解説します。

BIMで学ぶ・BIMを学ぶ

 BIMに象徴される建物3次元モデルは、各種の情報を見える化し、関係者間での情報の共有も実現する。それらデジタル化された建物3次元モデルの持つ優位性を活かすべく、公的な教育機関からBIMベンダー、地方の企業に至るまで「BIMを学ぶ」「BIMで学ぶ」意欲的な試みが顕著となっている。本稿では、それらの試みの実際を概説し、BIM教育の現在地を明らかにする。

大阪電気通信大学の「BIMハブステーションの構築による就業者のBIM講座」

 大阪電気通信大学では、文部科学省の補助金事業である「成長分野における即戦力人材輩出に向けたリカレント教育推進事業」の一環として、オンラインによる「BIMハブステーションの構築による就業者のBIM講座」を23年12月1日付けで開講し、実施に入っている。2024年3月31日までの実施予定で、申込締切については随時受付中としている。

 対象者は、建築業界に勤務している者、BIMの基礎知識の習得を希望する者、建築業界に興味を持っている者などで、受講料は無料。講座概要と期間の目安については、BIM実習:15コマ+ICT建築設計生産論:14コマとなっており、動画の視聴と課題への取組みの時間を含め、1コマあたり90分程度の学習時間を想定している。全コマオンライン+オンデマンド授業となっており、好きな時間に自分のペースで学習することができ、質問事項はe-learningシステム上より、各講師陣へ質問することが可能だ。

鉄骨造4階建てのオフィスビルのモデリングをBIM実習で実現

 BIM実習については、受講者のパソコン上でBIMソフトウェアを操作し、実習する初心者向けのもので、オートデスクの「Revit Viewer2023」のインストールが前提となっており、15回の授業ごとにスタートファイルを提供する。具体的には、敷地の設定、外壁、鉄骨ラーメン、内壁、建具、床、部屋、天井など、15回の授業で鉄骨造4階建てのオフィスビルのモデリングができるようになっている。

BIMで作成された建物データベースと連携することによって数量やコストの算出、熱や気流、構造、音、光などのシミュレーションの解析が容易となるなど、基礎的操作方法を習得することができる。

BIMを牽引するトップランナーが講師としてオンライン授業

 ICT建築設計生産論については、意匠、構造、設備、建築確認、積算、施工、維持管理、資格・教育・普及の各分野で国内のBIMを牽引するトップランナーが講師として授業を行う。14回の授業を通じてBIMの歴史的経緯、特徴、現状の問題点、将来像が理解できる構成となっている。

これによって変化するBIM業界の最先端の情報を習得することができ、また、BIM化することにより構造計算、熱負荷計算などを⼀連の流れで作業することが可能なので、BIMのメリットを体感することができる。

関連資料:BIMハブステーションの構築による就業者のBIM教育・オンライン講座

https://news.build-app.jp/wp/wp-content/uploads/2023/12/01-1.pdf

エーアンドエーがVectorworks教育支援プログラム「OASIS (オアシス)」を提供

 「Vectorworks」を提供するエーアンドエーでは、CADを活用する教育機関関係者への支援を推進しているが、次代を担うデザイナーの教育環境を広く支援する新たなVectorworks教育支援プログラム「OASIS (オアシス)」を2024年4月1日より提供する。

「OASISアカデミック」・キャリアアップスクール向けの「OASISキャリア」を新設

 エーアンドエーでは、CAD教育の推進に早くから取り組み、1996年にスタートしたMCTC(MiniCadトレーニングセンター)制度を皮切りに、1997年に操作技能認定試験制度を導入するなど、CADの教育を提供する側、利用する側双方に向けた支援を積極的に行ってきた。Vectorworks教育支援プログラム「OASIS」は、教育機関向けに支援するためのプログラムとして2008年度に発足し、現在、全国の150を超えるOASIS加盟校に支援プログラムを提供している。

 近年のCAD教育環境の進化、社会人の学び直しやリスキリングなど多様化する教育環境を支援するべく、2024年より学校教育法で認可されている学校向けの「OASISアカデミック」、キャリアアップスクール向けの「OASISキャリア」を新設すると同時にOASIS加盟校の年会費を無償化し、サービス・サポートを強化する。加えて教育機関、学生、教職員向けの「Vectorworks教育支援ライセンス」を無償提供し、教育機関や学生の教材費用の負担を軽減するとともに、次世代を担うデザイナーの教育環境を広く支援する。

教育支援プログラムの充実+教育支援ライセンスの無償提供+多彩な教育支援を強力に実施

 Vectorworks教育支援プログラム「OASIS」の特徴を概説する。

 教育支援プログラムの充実を図る。大学、大学院、専門学校、高等専門学校など学校教育法で認可されている教育機関の環境を支援する「OASISアカデミック」を新設する。

加えてリスキリング、セカンドキャリアなど社会人向けの技術習得を実施するキャリアアップスクールや職業能力開発大学校を対象とした「OASISキャリア」を新設する。OASIS加盟料も無償化、Vectorworksを使用したデザイン教育に取り組む教育機関を支援する。

 教育支援ライセンスを無償提供する。デザインを学ぶ学生、教職員向けに「学生・教職員向けライセンス」を無償提供、授業の予習、復習、さらに設計課題など常時利用することでCAD、BIMの練度を高め、技術向上をする。

 授業利用を目的とした「教育機関向けライセンス」を無償提供する。サーバー・クライアント方式のVectorworksネットワーク版を採用し、OSを問わず、ライセンス管理も容易に運用可能とする。教育支援ライセンスについては、最上位製品Vectorworks Design Suite※と同等の機能を搭載、建築設計のCAD・BIM機能はもちろん、舞台照明・設計、造園など、さまざまな専門分野のカリキュラムにも対応可能とする。最新バージョンがリリースされた場合、無償でアップデート可能とする。

※商用利用を禁じるため、出力にウォーターマークを挿入する。

 多彩な教育支援を実施する。OASIS加盟校の学生を対象にVectorworksの操作技能を客観的に評価する「Vectorworks操作技能認定試験」の受験費用を無償とする。ワールドワイドの学生限定コンペティション「Vectorworksデザインスカラシップ」の作品募集を実施する。あわせて「学生・教職員向けライセンス」利用の学生を対象に卒業後も安心してVectorworksの継続利用を可能にする「Vectorworks student2PRO」を特別価格で提供する。

教育支援プログラムOASIS
教育支援ライセンスの無償提供(実施風景)
Vectorworks 操作技能認定試験受験費⽤の無償化(ログイン画面例)

シノダックがメタバースを利活用する安全講習を実施

 シノダック(岐阜県恵那市大井町:代表取締役:篠田大作)では、3次元による強力な見える化効果を発揮するメタバースを利活用する斬新な安全講習を開始した。シノダックは、中山道大井宿に由来する恵那市の大井町にある社員数30名の、テントの製造から施工までを一貫して行う企業だ。高所足場からの落下体験や倉庫内での整理整頓をメタバースの利活用で仮想体験することで、従来以上に安全教育を一層強化していく目的で今回の安全講習を実施する。

メタバース空間内でマンションの5階程度の高さの仮設足場からの転落体験

 メタバースを利活用する安全講習は、言語によるコミュニケーションに課題のある外国人実習生や長時間の講習の受講が難しい高齢者の社員にとって、これまでの座学形式の講義形式での安全研修とは異なり、3次元空間上での体験を通して実際に体を動かしながら危険状況を体感することで、非言語的な情報共有を可能にする利点がある。

 実際に、外国人実習生にメタバース空間上の高所足場から意図的に落下してもらった。外国人実習生にVRゴーグルを装着してメタバース空間内でマンションの5階程度の高さの仮設足場からの転落体験してもらったところ、体験した外国人実習生は大声をあげて叫び、それを見ているスタッフは危険作業を体感するなど安全の大切さを理解してもらうことができた。

テント式倉庫を体験できる「シノダックバーチャルショールーム」も公開

 メタバースによる安全講習を提案したのは女性役員であつた。「眠くならない勉強会がしたい」「それでも必要な事はきちんと伝えたい」「社員に怪我をさせたくない」。誰でも理解できる安全講習を考えていた際に、商工会議所でのVRゴーグルによるメタバース体験がヒントとなり、安全講習にも使えるのではないかとメタバース制作会社と共同して企画し、社長を説得して実現に至った。

 地方の小規模な建設業者がメタバースのような最先端技術を取り入れることは稀であり、前例のない試みではあったが、これからの地域活性化も担う建設業者には必要な挑戦だとしている。加えて安全は建設業の最優先事項であり、これらの革新的なアプローチが、事故防止という重要な目的を可能とする新しい時代の教育方法になればと考えている。

 安全講習用のメタバースは社内教育向けのため非公開だが、2023年11月8日~11日、ポートメッセなごやで開催された異業種交流展示会「メッセナゴヤ2023」に展示し、来場者から好評を博した。それを受けてテント式倉庫を体験できる「シノダックバーチャルショールーム」(https://www.tent.ne.jp)も開設、広く公開している。

メタバース空間内の表示例
実際の操作風景