建築BIM加速化事業の概要と支援内容(前編)

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建築BIMをできるだけ速やかに社会実装するために、国土交通省は「建築BIM加速化事業」を実施しています。

支援を受けるために必要な、「代表事業者の登録」が2023年12月24日までに延期されたため、これから登録を検討している事業者の方もいるでしょう。

本記事では、建築BIM加速化事業の概要や支援内容について解説します。

建築BIM加速化事業とは

国土交通省は、建築BIMをより早く社会に実装するため、令和4年度2次補正予算で「建築BIM加速化事業」を創設しました。当初のスケジュールから「事業者登録」の期限が延期され、2023年12月24日までとなっています。

事業者登録を済ませた後は、「交付申請」が必要です。交付申請の締め切りは2023年12月31日です。

ここでは、事業の概要と支援内容について、みていきましょう。

建築BIM加速化事業の概要

建築BIM加速化事業とは、所定の要件を満たす建築物を整備する新築プロジェクトに対して国が補助を行う事業です。

国土交通省は、建築業界の高齢化による人手不足や生産性の低さ、長時間労働問題の改善などを目的として、建築BIMの導入を推進しています。

建築BIM加速化事業の支援内容

複数の事業者が連携し、建築BIMデータの作成などをする場合に、BIMソフトウェアやコーディネーター人件費、講習等にかかる費用の補助金が受けられます。大きなポイントは次の3つです。

  • 2023年度末(R5年度末)までの基本設計・実施設計・施工のBIMモデル作成が対象
  • 設計BIMモデルや施工BIMモデルの作成等に要する費用について幅広く補助
  • 協力事業者(下請事業者等)だけでなく、代表となる元請事業者等も補助の対象

なお、2023年中に設計完了や竣工に至る必要はありません。部分的にでもBIMモデルを作成していれば補助の対象となります。補助金額の上限は完了報告時点の延べ面積に応じて異なり、下表のとおりです。

延べ面積設計費建設工事費
1,000㎡以上10,000㎡未満2,500万円4,000万円
10,000㎡以上30,000㎡未満3,000万円5,000万円
30,000㎡以上3,500万円5,500万円

補助対象となる建物要件として「地階を除き3階以上、建築物エネルギー消費性能基準に適合、公共的通路等の整備」などがあります。

2023年12月1日から2024年2月29日の間に完了実績報告を行わなければなりません。補助金額は、完了実績報告までの設計BIMモデルまたは施工BIMモデルによって出来高を確認し、補助金が交付されます。

対象ソフトウェアとスケジュール

対象となるBIMモデル作成費は3種類あり、下表のとおりです。

画像引用:https://bim-shien.jp/wp-content/uploads/2023/09/R4-5_bim_gaiyou_20230901.pdf

ソフトウェアだけでなく、講習会費用や人件費、モデラ―委託費なども補助金の対象となります。

対象ソフトウェアの選定と導入

補助対象となるソフトウェアの中からBIMを選定、導入しましょう。補助対象となるソフトウェアは、次のサイトで確認できます。

参考:建築BIM加速化事業で補助対象となるソフトウェア等について

 建築BIM加速化事業のスケジュール

https://bim-shien.jp/wp-content/uploads/2023/01/R4-5_bim_manual.pdf

補助金交付までの流れは次のとおりです。

  1. 事業者登録
  2. 登録通知
  3. 交付申請
  4. 交付決定通知
  5. 完了実績報告
  6. 補助金額の確定
  7. 補助金入金

事業者登録、交付申請、完了実績報告にはデジタル庁が運営する補助金の電子申請システム、JGrantsを使用します。スケジュールは下表のとおりです。

手続き受付期間
代表事業者登録2023年1月16日~2023年12月24日
交付申請2023年2月13日~2023年12月31日
完了実績報告2023年12月1日~2024年2月29日
補助金交付2024年3月頃

代表事業者登録期限が当初の予定より大幅に延期され、2023年12月24日までとなりました。期限の関係で登録しそびれ、諦めていた事業者の方にとって朗報といえるでしょう。

建築BIM加速化事業のメリット

建築BIM加速事業に取り組む大きなメリットは次の3つです。詳しく見ていきましょう。

 補助金申請しやすい

補助金の申請方法が容易な点がメリットとして挙げられます。申請するために、複雑な書類や資料を用意する必要はありません。完了報告に対しても、詳細な報告書は不要です。

建物とソフトウェアに関する要件を満たしていれば、申請できます。

人材育成や委託費用も含まれる

BIM導入にはソフトウェアにコストがかかるだけでなく、ソフトを扱える人材の教育や委託も必要になります。本事業では、ソフトウェア本体だけでなく委託費や人件費等も補助金対象に含まれている点も大きなメリットです。

 効率化と生産性の向上

BIMを導入した場合、3次元で設計図面が引けるため、デザインの可視化が容易になります。設計段階で問題点や改善点を一早く発見できるため、設計の精度が大幅に向上し効率化につながるといえるでしょう。

これまではプロジェクトに関する情報はバラバラに管理し、変更の都度伝達が必要でした。しかし、BIMを導入すれば、設計・資材・施工・維持管理などのプロジェクトに関する情報を一元管理できるため、関係者はリアルタイムに最新情報を把握できます。従来と比較して、工期の短縮やコストカットが見込める点は大きなメリットです。

BIM導入のデメリットとして、ソフトウェアやBIMを扱う人材育成などの費用が大きな課題となっていました。建築BIM加速化事業の補助金を利用した場合は、現在のプロジェクトだけでなく、今後の事業に関しても効率化や生産性の向上が期待できるでしょう。

まとめ

建築BIM加速化事業支援を受けるためには、代表事業者の登録を行う必要があります。代表者登録期限は、2023年12月24日まで延期されています。

補助金申請のために複雑な資料を用意する必要はありません。この機会にBIMを導入し、業務効率化や生産性の向上につなげていきましょう。補助金の申請と支給条件については後編でお届けします。