大和ハウス工業にみるBIM活用とメタバースへの展開|深堀り取材【毎月更新】
建築BIM加速化事業にともない、BIMやDX化への注目および実施速度も本格化しています。第5回は、「BIM活用とメタバースへの展開」について、実際に導入した企業の視点から解説します。
目次
XR技術を活用し「D’s BIM ROOM」を開発
大和ハウス工業は、大和ハウスグループを形成する南国アールスタジオ(渋谷区)、トラス(千代田区)と協働して商業施設や事業施設などのBIMによる3次元建物モデルをXR技術と連携、活用することによってメタバース(仮想空間)「D’s BIM ROOM」として可視化させる技術を開発した。2023年9月より商業施設や事業施設などにおいて検証を進め、順次導入し、生産性向上および業務効率化を図る。
BIMの3次元建物モデルとクラウド建材管理システムとの連携でメタバース空間へ展開
「D’s BIM ROOM」は、3次元建物モデルとクラウド建材管理システム「truss(トラス)」で選択した建材を「WHITEROOM」※で連携させ、メタバース空間に表示させる。
「D’s BIM ROOM」の利用には専用アプリが必要だが、「WHITEROOM」を用いることでXR用のモデルを別途作製する必要がないため、設計図書との整合性を担保したXR用のモデルを短時間かつ円滑に作製できる。
また、3次元建物モデルを再現したメタバース「D’s BIM ROOM」に建築主、事業主自身がパソコンやタブレット、HMD(ヘッドマウントディスプレイ)などのデバイスを使用して入り込むことで、実寸大の外観イメージや色彩感、周辺環境との距離感などをリアルに近い形で体験できる。
さらに、「D’s BIM ROOM」内において関係者間で協議し、決定した事項は、BIMやクラウド建材管理システム「truss」に瞬時に反映できるため、企画・設計・施工の工程で発生するさまざまな変更事項に対しても、より効率的に協働作業が進められると共に、シームレスな情報共有と意思決定を行うことができる。
※WHITEROOM: 南国アールスタジオが企画、開発した企業向けメタバースプラットフォーム。
最大50名までがアバターとして「D’s BIM ROOM」に参加してリアルな建物を感受
「D’s BIM ROOM」では、パソコンやタブレット、HMDなどの異なるデバイスを組み合わせることも可能で、通信環境にも依存するが、最大で50名までがアバター(分身)として同時参加ができる。
加えて「D’s BIM ROOM」は、VR(仮想現実)とMR(複合現実)の双方に対応しているため、使用するデバイスごとに、会議室での打ち合わせにはVRを用い、建設地での打ち合わせではMRを用いるなど状況に応じて使い分けることもできる。さらには、計画建物の建設地において、MRで建物の3次元建物モデルを表示させた場合、更地に竣工した建物イメージを重畳表示させたり、3次元建物モデル内から実際の周辺環境等を俯瞰したりすることができる。
壁や床、天井などに利用される建材には豊富な色彩やデザインが用意され、選択肢が多岐にわたる一方、カタログ上の小さなサンプル写真では、実際に施工された際のリアルなイメージが湧きにくいとの課題もあった。
「D’s BIM ROOM」では、「truss」の建材データベースに登録されている壁材約3万アイテム、床材約2万アイテム、天井材約1万アイテムの中から選択し、実寸大で実物に近い色彩でリアルに建物内にいるかのように候補を比較できるためイメージギャップの解消にも繋がる。
建設業界のDXの中心にBIMを位置づけて課題解決に挑戦
建設業界では、デジタル技術やデータを積極的に活用することで働き方改革や人材不足、技術継承などの課題解決に繋げるDX(デジタルトランスフォーメーション)が加速している。
DXの中心に位置づけられるBIMにおいては、3次元建物モデルを用いることで、整合性を確保した各種図面が作成でき、設計業務の効率化が図れると共に、従来、平面図では理解しにくかった建物のイメージを建築主、事業主にわかりやすく説明できる。
大和ハウス工業では、2017年からBIMの推進を開始し、2020年には自社が建設する全ての商業施設や事業施設の設計業務において、BIM化を完了させている。見積業務や施工業務などにおいてもBIM化を進める中で、2021年7月からはオンラインで建材を選定するクラウド管理システムを有するトラスとBIMの連携を開始している。
今回、さらなるBIMの利活用を目指すべく、パソコンやHMDなどでメタバース体験ができる企業向けメタバースプラットフォーム「WHITEROOM」を有する南国アールスタジオとBIMの連携を行い、「D’s BIM ROOM 」を開発した。