【建設・建築DX EXPO 2026 夏 東京】AIとXRによる可視化で「現場の見逃しをなくす」、奥村組を取材

「建設・建築DX EXPO 2026 夏 東京」の株式会社奥村組ブースでは、「現場の見逃しをなくす。」をテーマに、「見えない」「見落としやすい」「判断に迷う」を可視化するプロダクトが紹介されました。本記事では、ブースでの取材をもとに、各プロダクトが対象とする課題、機能、今後の展望を紹介します。

取材の要点
●「KAKERU」は、高所作業時の安全帯の使用状況を自動判定するシステムで、安全管理の強化に貢献しています。
●「施工影響XRウォッチャー」は、地盤改良工事の進捗等を3Dで可視化するシステムで、経験や勘に頼りがちな施工管理を支援します。
●「NaiCON」は、コンクリート残数量をリアルタイムに算出するシステムで、追加発注の判断を支援し、残コン削減に貢献しています。

株式会社奥村組 | 会社概要

奥村組は、大阪市に本社を置く総合建設会社です。取材では、2023年10月に東京の「クロスイノベーションセンター」を設立し、産官学民との連携や事業領域の拡大、AI・IoT・XR・生成AIなどのデジタル技術を活用した建設DXを推進していることが紹介されました。近年はAIの活用に力を入れており、バックオフィス業務にとどまらず、現場で生じる具体的な課題の解決を目指しています。

出展概要

奥村組のブースでは、「現場の見逃しをなくす。」をテーマに、安全管理、生産性向上、品質向上を支える技術が展示されました。中心となったのは、AI安全帯不使用者検知システム「KAKERU」、「施工影響XRウォッチャー」、コンクリート発注量算出AI「NaiCON」の3つです。また、生成AIやMicrosoft 365 Copilotを使った社内向けAIエージェントの取り組みも紹介されました。

展示に共通していたのは、見落としや判断の負担が生じやすい場面をデータや画像で補い、現場での確認と判断を支えるという考え方です。

安全管理や施工状況の見える化を実現するAIソリューション

不安全行動を可視化する「KAKERU」

「KAKERU」は、カメラ映像をAIが継続して解析し、安全帯を使用していない作業者を検知するシステムです。検知すると、現場のパトランプが音と光で知らせるほか、管理者へメールで通知することもできます。不安全行動を画像として残せるため、その場で注意を促すだけでなく、本人や協力会社への安全教育にも活用できると説明されました。建設業向けに開発されたシステムですが、取材時点では建設現場以外でも利用例があるとのことです。

地下施工の見えない部分を可視化する「施工影響XRウォッチャー」

「施工影響XRウォッチャー」については、地下鉄に近接する地盤改良工事を例に説明がありました。施工機械や沈下計などのセンサーデータをクラウドに集め、掘削位置やコンクリートの投入状況、地盤の沈下・隆起を三次元モデル上で色分けして表示します。これまで監視員の経験や勘に頼りやすかった、目に見えない地下施工の影響を視覚的に示すことで、経験の浅い担当者でも施工状況をつかみやすくする技術です。

コンクリート打設に必要な数量を可視化する「NaiCON」

「NaiCON」は、コンクリート打設時のカメラ映像をもとに、追加で必要な数量の算出を支援します。取材では、現時点で90%以上の精度で安定して算出でき、現場環境によっては98%と、人とほぼ同等の精度になってきたとの説明がありました。現段階ではAIだけに発注判断を任せず、両者に大きな差があれば再確認するような運用も想定しています。こうした使い方により、数量調整の精度を高めるとともに、担当者の判断にかかる負担を軽くする考えです。若手担当者にとっても、自分の算出結果をAIの結果と照合できることが、心理的な負担の軽減につながるとしています。

コンクリートの過剰発注を抑えられれば、残コンにかかるコストだけでなく、運搬時のCO2排出量の抑制にもつながります。この点も、開発に至った理由の一つだと説明されました。

また、対象エリアにコンクリートが入ったタイミングで通知する機能も実装しており、「NaiCON」を活用することによってコンクリート打設管理業務の効率化につながります。

今後の展望

株式会社奥村組 ICT統括センター イノベーション部 DX推進課長:廣瀬 年彦 氏

今後は、安全帯の不使用検知やコンクリート数量の算出といった比較的定型化しやすい処理に加え、専門的なノウハウが求められる判断の支援にもAI活用を考えています。人の経験や知識を形式知にしてAIに学習させ、AIが大量のデータから複数の選択肢を示し、最後は人が判断するという役割分担を広げ、現場の生産性を高めることを目指しています。

現場の生産性向上に役立つソリューションを一つずつ増やし、その積み重ねを建設業のDXにつなげていく考えです。

まとめ

今回の展示で印象的だったのは、現場にある「見えない」「見落としやすい」「判断に迷う」といった課題に目を向けていたことです。地下施工の影響、安全帯の使用状況、コンクリートの残数量と、扱う対象は異なります。ただ、データを見える形にし、人の確認や判断を支えるという点は共通していました。

特に注目したいのは、AIが出した結果をすぐに正解とせず、まず人の算出結果と照らし合わせて使う姿勢です。現場の条件によって結果が変わる可能性があるからこそ、試用と評価を重ねながら、どこまで使えるのかを見極める必要があります。安全、品質、生産性を支える取り組みとして、今後の展開が注目されます。

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