【建設・建築DX EXPO 2026夏 東京】AIで建設業務を支援、株式会社Arentを取材

「建設・建築DX EXPO 2026 夏 東京」の株式会社Arentブースでは、設計、施工、維持管理に関わるSaaSプロダクトが紹介されました。なかでも注目展示として挙げられたのが、大林組と共同開発したAIクラウド工程管理システム「PROCOLLA」と、Revitの操作をAIで支援する「Lightning BIM AI Agent」です。本記事では、ブースでの取材とデモをもとに、両製品が対象とする課題、機能、導入支援、今後の展望を紹介します。

取材の要点
● 「PROCOLLA」は、マスター・月間・週間工程や歩掛情報などを一つの環境で扱い、工程情報の分散や属人化に対応します。
● API連携により、既存システムの情報を工程管理へ反映し、重複入力や進捗報告の負担を減らす活用が期待されます。
● 「Lightning BIM AI Agent」は、Revit操作の代行、手順の説明、コマンド登録・共有により、初心者支援と熟練者の工数削減が見込まれます。

株式会社Arent | 会社概要

Arentは、建設分野のDXコンサルティングやシステム開発を手がける「DX事業」と、自社プロダクトの開発・販売を行う「プロダクト事業」の二つを柱として展開しています。プロダクト事業では、工程管理や設計の自動化など、設計・施工・維持管理の各段階で利用できるツールを、自社開発やM&Aを通じて拡充しています。取材では、建設業界の課題解決にあたって、まず相談先として第一に想起される存在を目指しているとの説明がありました。

出展概要

ブースの様子(Arent社より提供)

今回のブースでは、設計、施工、維持管理で利用するSaaSプロダクトを幅広く展示しました。その中で、特に注目してほしい製品として挙げられたのが、工程管理ツール「PROCOLLA」と、Revitのアドイン「Lightning BIM AI Agent」です。

工程情報を蓄積し、AIが工程表づくりを支援する「PROCOLLA」

工程表に関する情報を一元管理

「PROCOLLA (プロコラ)」は、大林組と共同開発したAI クラウド工程管理システムです。属人的で時間のかかっていた工程作成や情報整理を生成AIがアシストし、直感的な操作で情報共有・工程作成・ノウハウ伝達の時間を削減します。マスター工程、月間工程、週間工程、歩掛情報などが別々のツールやExcelに分散しがちな状況を一つの環境にまとめ、工程線に歩掛、担当者、関連図面のURLなどを持たせて、工程表の中で参照できるようにします。2025年4月からは大林組の建築工事現場で試行運用が始まり、工程管理の作業時間を約20%削減できる見込みです。若手技術者の育成や印刷業務の効率化、プロジェクトマネージャーの負担軽減も期待されています。

新規プロジェクトでは、図面、積算データ、過去の類似案件の工程表などをAIアシスタントに与え、工程表のたたき台を作成できます。取材では、たたき台の大部分をAIが作成し、人が微調整する使い方が説明されました。一方、入力データを継続的に機械学習する機能ではありません。過去工程の歩掛情報などを「PROCOLLA」内で整理しておき、類似案件の参考情報としてAIへ与えることで、より適切な工程表作成につなげる考え方です。

直感的な編集操作

編集面では、先行工程の遅れに合わせて後続工程を連動させる、工程の順番を変えるといった操作を直感的に行える点が特徴です。また、工程にひも付く情報をデータとして管理し、歩掛情報をJSON形式で出力してBIツールや分析ツールで利用することもできます。

API連携で重複入力と報告作業を抑える

「PROCOLLA」では、2026年9月にAPI連携機能が公開されました。取材では、原価管理などの既存ツールに入力した情報を「PROCOLLA」へ連携し、同じ情報を複数のシステムへ入力する作業を減らす例が紹介されました。

また、連携したデータから現場の進捗状況を更新し、複数現場の状況を一覧で確認する使い方も示されました。現場側の報告作業と、管理者側の個別確認を減らすことが狙いです。

Revit操作をAIチャットで支援する「Lightning BIM AI Agent」

自然言語でRevitを操作できるアドイン

「Lightning BIM AI Agent」は、Autodesk Revitを自然言語で操作できるAIエージェントです。チャットで指示を出すだけで、図面からBIMモデルを自動生成できるほか、外壁や窓の追加・変更、要素の検索なども自然言語で操作できます。AIが行った作業について手順を質問すると、操作方法を説明する機能も備えています。

想定ユーザーはRevit初心者と熟練者

想定される利用者は大きく二つです。一つは、Revitを初めて使う人の操作支援です。もう一つは、定型的な作業が集中しやすい熟練者の工数削減です。直近のアップデートでは、一度実行した作業を独自コマンドとして登録し、繰り返し利用できるようになりました。条件が変わる部分を選択して実行できるため、同種の作業を短時間で繰り返せます。

登録した作業は社内共有が可能

登録したコマンドは社内で共有できます。熟練者が作成したコマンドを経験の浅い担当者へ渡すことで、ノウハウ共有と業務分散を図りつつ、実務を通じて段階的に操作を学ぶ使い方が想定されています。

導入事例、実証事例

「PROCOLLA」の導入では、DX推進部門が製品を選定し、各現場へ展開するケースが多いといいます。ただし、DX推進部門が評価する機能と、現場が必要とする機能は必ずしも同じではありません。そのため、Arentではフィールドエンジニアやカスタマーサポートが現場ごとに使い方を説明し、定着を支援する体制を整えています。

公開されている導入事例では、Excelからの移行、工程情報の一元化、編集作業の改善などが紹介されています。導入検討時には、現在の工程管理で何が課題なのか、将来どのような状態を目指すのかを整理することが出発点になります。課題が明確でない場合も、相談を通じて具体化し、状況に合うツールや使い方を検討できるとのことです。

「Lightning BIM AI Agent」については、ある企業の構造設計業務で、付図や軸組図に関わる一部作業が大幅に短縮されたとの利用者の声が紹介されました。これは取材で示された一事例であり、対象業務や利用条件によって効果は異なります。

デモの様子

「PROCOLLA」のデモでは、工程線を選択すると、歩掛や担当者などの関連情報を確認できる画面が示されました。工程を単なる線として扱うのではなく、各工程に情報を持たせて一つの画面で参照できる構成です。また、API連携を活用し、複数現場の進捗や遅延状況を一覧で確認する画面も紹介されました。

複数の現場の進捗状況を一覧で確認できる

「Lightning BIM AI Agent」のデモでは、Revit内のチャットから操作を依頼し、生成した処理をコマンドとして保存する流れが説明されました。保存したコマンドは条件を選択して再実行でき、社内共有にも対応します。初心者向けの操作支援と、定型作業の短縮を同じ仕組みで実現しようとしている点が印象的でした。

作成した処理がコマンドとして保存されている(画面右側)

今後の展望

株式会社Arent
プロダクト営業本部プロダクト営業部部長:濱田 尚也 氏(右)/プロダクト営業本部プロダクト営業
部:笹川 秀治 氏(左)

「PROCOLLA」では、公開したAPIの活用事例を顧客から収集し、どのようなシステム連携が業務効率化につながるのかを具体化していく方針です。さまざまなSaaSとの連携ニーズを把握し、工程管理の重複入力や報告にかかる負担をさらに減らすことを目指します。

Arentの取り組みは、工程表の作成やRevit操作をAIに置き換えるだけではありません。現場が日常的に扱いやすい操作性を保ちながら、工程や操作ノウハウをデータとして蓄積・共有し、組織で活用できる状態をつくることに重点があります。

まとめ

今回の展示では、工程管理を一元化する「PROCOLLA」と、Revit操作をAIで支援する「Lightning BIM AI Agent」が紹介されました。両製品は、現場業務の効率化に加え、日々の業務で蓄積されるデータを活用しやすい形で管理・共有できる点が特徴です。

また、特別講演「AI活用の鍵は現場データの資産化にある。【後程リンク設定】」でも語られたように、建設業界におけるAI活用の推進には、現場データの蓄積と資産化が重要なテーマとなっています。従来の業務フローを大きく変えることなく、データやノウハウの蓄積を支援するこれらのソリューションは、人手不足や技術継承といった業界課題への対応策として今後の展開が注目されます。

関連情報

※本稿は、2026年10月1日に「建設・建築DX EXPO 2026 夏 東京」のArentブースで実施した取材内容と、上記公式情報をもとに構成しています。製品名・数値・機能説明は取材時点の情報です。