【後編】ゼネコン目線で見る注目展示3選|専用アプリ不要のDX化サービス_株式会社 Arch/図面特化AI技術_株式会社KK Generation/暗黙知や業務ノウハウをデジタル化_株式会社Arent

2026年8月26日(水)~28日(金)に開催された建設DX展[大阪]は、建設業界のDXをテーマとした専門展示会です。当サイトでは会場を取材し、最新の建設DXトレンドや注目サービス、ゼネコン目線で押さえておきたい展示内容を全3回の記事でご紹介します。

後編では、「ゼネコン目線」での注目展示の3つ「専用アプリ不要のDX化サービス|株式会社 Arch」「図面特化AI技術|株式会社KK Generation」「暗黙知や業務ノウハウをデジタル化|株式会社Arent」をご紹介します。とくに現場・本社DX部門に活かしやすい展示内容をピックアップしています。

専用アプリ不要のDX化サービス|株式会社 Arch

株式会社Archは、建設現場で発生する安全書類のDX化を支援するサービスを展開する企業です。点検表やKYシート、重機に関する作業計画書など、日々の現場業務に欠かせない書類をデジタル化しています。

実際の建設現場で紙書類の煩雑さを経験したことが創業のきっかけで、デジタルに不慣れな職人の方でも使いやすい「現場目線」のサービスを追求しているのが特徴です。現場の負担を減らし、現場監督が本来注力すべき業務に時間を使える環境づくりを目指しています。

出展概要

今回の展示では、安全書類DXサービス「安全セーフティ」に加え、2026年6月にリリースされた「KY-NEXT」も紹介しています。「安全セーフティ」は機械や足場に貼ったQRコードをスマートフォンなどで読み取るだけで、日々の点検をデジタル化できます。また「KY-NEXT」は無事故無災害のためのKYを実現するサービスで、翌日の作業内容などをもとにAIがKYシートの作成を支援し、作業に潜むリスクや対策を提案してくれるのが強みです。

いずれも専用端末やアプリのインストールを必要とせず、ブラウザから利用できます。ゼネコン、サブコン、一人親方などさまざまな立場の方が関わる建設現場では、「便利でも現場が使ってくれなければDXにならない」という課題がありますが、導入ハードルを徹底的に下げることで、実際に使われるDXを目指しています。

導入事例や実証事例

「安全セーフティ」はリリースから約2年で、スーパーゼネコン5社をはじめ、準大手・地場ゼネコンなど幅広い企業に導入されています。今回展示されたKY-NEXTも、2026年6月のリリースから約3カ月で30社以上の利用実績があります。作業間の調整や搬入予定などを一元管理し、現場の情報共有を効率化しています。

とくに注目したいのが、現場で入力された作業内容をもとに、AIがKYシートの作成を支援し、危険ポイントや対策を提案する仕組みです。従来の「紙を電子化する」だけのDXから一歩進み、「書類を作成する作業そのもの」を減らすことを目指しています。現場経験を持つ創業者が必要な機能を見極めながら開発している点も、同社の特徴です。

建設現場やDX推進部門にもたらす変化

株式会社 Arch_セールス:坂井 彩夏氏

株式会社Archが目指すのは、単なるペーパーレス化ではありません。「AIが現場書類を自動作成し、ペーパーレスの先にある“作成レス”を実現する」という方向性を掲げています。作業内容を入力することでKYシートなどの書類をAIが生成し、将来的には作業継続表や各種届出などにも対象を広げる構想です。

背景にあるのは、現場監督の業務負担と人手不足という建設業界の課題です。限られた人数で現場を運営するためには、書類作成などの定型業務を効率化し、人にしかできない判断や現場管理に時間を振り向けることが重要になります。

図面特化AI技術|株式会社KK Generation

株式会社KK Generationは、建設・建築分野の図面に特化したAI技術を開発・提供する企業です。建設図面に特化した独自モデルと生成AIを組み合わせ、図面のチェックや数量拾い、2D図面からBIMモデルへの変換など、建設業務のさまざまな工程を支援しています。

建設図面に特化したAI技術を強みに、発注者、ゼネコン、建材メーカー、確認審査機関など幅広いプレイヤーを支援しているのが特徴です。AI開発の技術力と建設業務への知見を掛け合わせることで、建設業界の業務自動化を目指しています。

出展概要

今回の展示では、建設図面をAIで解析する「建図」を中心に、図面の整合性・法令や設計基準への適合性チェック、数量拾い、BIMモデルへの変換などの機能が紹介されていました。例えば平面図と建具表、立面図を照合して寸法の食い違いを検出したり、仕上げ表など複数の図面から必要な情報を読み取り、数量表として整理したりすることが可能です。

一般的な汎用生成AIに図面を読み込ませるだけでは難しい処理でも、建設図面に特化したモデルによって実現しています。「図面が正しく読めなければ建設業務の自動化は始まらない」という課題意識から、建設業務に踏み込んだAI活用を進めています。

導入事例や実証事例

株式会社KK Generationのサービスは、大林組や竹中工務店といった大手ゼネコンだけでなく、東京都などの発注者や電力会社、設計・施工関連企業などにも導入されています。発注者側では、設計コンサルタントから提出された図面と数量の整合性を確認したり、設計基準を満たしているかをチェックしたりする用途で活用できます。受注側では、図面一式をAIに読み込ませることで、意匠図と構造図の不整合や法令・設計基準への適合性を確認できます。

また精度評価では、2D図面からのBIMデータ変換や数量拾いにおいて、最新の汎用生成AIを上回る結果を確認しています。単に「AIでできる」ことを目指すのではなく、建設実務で求められる精度を重視しているのが特徴です。

建設現場やDX推進部門にもたらす変化

株式会社KK Generation_藤田 浩之介 氏

株式会社KK Generationが目指しているのは、図面作成やチェックといった一部業務の効率化に留まりません。将来的には、敷地データから施工レベルのBIMモデルを自動生成し、そのデータを施工現場のフィジカルAIロボットにつなげる構想を描いています。例えば図面から墨出しに必要な座標をAIが自動で理解し、ロボットが自律的に施工する仕組みなどです。

最終的には、企画、設計、積算、施工までを一気通貫でデジタル化し、建設現場そのものの自動化を目指します。背景にあるのは、建設業界の人手不足や、依然として残るデジタル化の遅れです。汎用AIをそのまま使うのではなく、日本の建設図面に特化した技術を磨くことで、建設DXを実務レベルへ引き上げます。

暗黙知や業務ノウハウをデジタル化|株式会社Arent

株式会社Arentは、建設・建築・土木・プラント分野を対象に、DXコンサルティングとSaaSプロダクトの開発・提供を行う企業です。2012年の創業以来、建設業界の業務課題に向き合い、設計・施工・維持管理を支援するシステムを開発しています。

「暗黙知を民主化する」をミッションに掲げ、属人化した現場の知識やノウハウを可視化・データ化し、AIも活用しながら組織全体で利用できる仕組みづくりを進めているのが特徴です。
近年は、工程管理やBIM・設計、プラント分野など、さまざまな領域でAIを搭載した製品の開発・提供にも注力しています。

出展概要

今回の展示では、大林組と共同開発したAIクラウド工程管理システム「PROCOLLA(プロコラ)」や、自然言語でRevitを操作できるRevitアドイン「Lightning BIM AI Agent」などが紹介されていました。「PROCOLLA」は工程表を直感的に編集できるだけでなく、工種や歩掛、担当者、関連図面などの情報を一元管理できるのが特徴です。

さらにAIを活用することで、図面などのデータから工程表のたたき台を作成することも可能です。
過去の類似案件のデータを活用し、企業独自のノウハウを工程計画に反映できます。単なる工程表作成ツールではなく、現場の知識をデータとして蓄積・活用できる点が特徴です。

建設業務のさまざまな課題をAIで解決

Arentは、業務ごとに異なる課題に対応するAI搭載製品を複数展開しています。今回展示された両製品も、2025年のリリース以降、アップデートを重ねています。
「PROCOLLA」は、大林組の豊富な知見とArentの技術力を掛け合わせ、現場での使いやすさとAIによる工程管理の支援を両立しています。工程表の作成や修正の負担を減らすため、自然言語や図面から工程を生成し、修正前後を比較して確認できる機能を搭載しています。2026年9月には、この技術で特許を取得したことを発表しました。大林組以外の建設会社でも導入が進んでいます。

また、「Lightning BIM AI Agent」は、BIM業務における煩雑な操作や繰り返し作業を効率化します。
チャットで指示するだけで、ファミリや要素の検索、ファミリの配置、集計表の作成などを生成AIが実行します。自然言語を用いたBIM検索技術でも特許を取得しており、Revitの操作にかかる手間を減らします。

建設現場やDX推進部門にもたらす変化

株式会社Arent
プロダクト営業本部プロダクト営業部部長:濱田 尚也 氏(右)/プロダクト営業本部プロダクト営業
部:笹川 秀治 氏(左)

Arentが目指す変化の根底にあるのが、「暗黙知を民主化する」という考え方です。建設業界では、熟練者が持つ判断やノウハウが個人に蓄積され、「その人が退職すると技術が失われる」といった属人化が課題となっています。同社はDXコンサルティングを通じて、こうした知識を可視化・数値化し、誰もが利用できるシステムへと変換しています。

一方で本社のDX部門が求める「データの一元化」と、現場が求める「使いやすさ」の両立も重視しました。実際、「便利なツールでも使いづらければ現場に浸透せず、Excelに戻ってしまう」という課題を踏まえ、若手にも扱いやすいUIを設計しています。AIを組み合わせることで、ベテランの工数削減と若手へのノウハウ継承を同時に進められる点が特徴です。

まとめ

今回の注目展示から見えてきたのは、建設DXが「アナログ業務をデジタルに置き換える」段階から、AIやBIMなどを活用して、業務そのものを効率化・自動化する段階へ進んでいることです。とくに現場で使いやすいUIによる定着、蓄積したデータや暗黙知の活用、AIによる書類・工程作成の自動化など、現場と本社DX部門の双方にメリットをもたらすサービスが目立ちました。

今後は個別業務の効率化に加え、部門や工程をまたいだデータ連携が、建設DXのさらなる進展を左右しそうです。