建設現場の仮設トイレ|設置義務・快適トイレの基準・レンタルと購入の費用比較

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Category:コラム建築

著者:上野 海

建設現場の仮設トイレは、「とりあえず1台置いておけばいい」と考えられがちな設備です。しかし、労働安全衛生規則ではトイレの設置数に基準があります。さらに公共工事では、女性も使いやすい「快適トイレ」の設置が原則になりつつあります。

そこでこの記事では、建設現場における仮設トイレの設置ルールと種類、レンタルと購入のどちらがお得かを、費用相場とあわせて解説します。

建設現場に仮設トイレの設置は義務?

建設現場では、作業員が使えるトイレを設ける義務があります。

事業者は、労働安全衛生規則第628条にもとづき、働く人数に応じた数のトイレを確保しなければなりません。近くにコンビニがあるからといって、現場内にトイレを置かずに済ませてよいわけではありません。

まずは、法令で定められた設置基準と、外部のトイレに頼った場合に起こりやすいトラブルを解説します。

労働安全衛生規則で定められたトイレの設置基準

トイレは男女別に設けるのが原則です。必要な数は、次のように定められています。

項目必要数
男性用大便所同時に働く男性60人以内ごとに1個以上
男性用小便所同時に働く男性30人以内ごとに1か所以上
女性用便所同時に働く女性20人以内ごとに1個以上

たとえば、男性30人・女性5人が同時に作業する現場なら、男性用大便所1個、小便所1か所、女性用便所1個が最低ラインです。

なお、2021年12月の改正で、男女で共用できる「独立個室型の便所」が法令に新たに位置づけられました。同時に働く人数が常時10人以内の現場では、独立個室型の便所を設ければ、男女別に分けなくてもよいとされています。ただし、厚生労働省は、10人以内の場合でもできる限り男女別に設けることが望ましいとしています。

また、男女別のトイレを設けたうえで独立個室型の便所を追加すると、1個につき、必要数を計算する際の人数を男女それぞれ10人ずつ減らせます。

(出典:厚生労働省「職場における労働衛生基準が変わりました」)

加えて、労働安全衛生規則では、トイレのほかにも高所作業の安全対策などが定められています。フルハーネスの義務化については、こちらの記事で詳しく解説しています。

コンビニや近隣のトイレに頼ると起こりやすいトラブル

小規模な現場では、近くのコンビニや公共施設のトイレで済ませているケースも少なくありません。しかし、この運用だと次のようなトラブルにつながりやすくなります。

  • 作業着の汚れや利用回数の多さから苦情を入れられたり利用を断られたりする
  • 近隣住民の印象が悪くなり、元請や施主へのクレームに発展する
  • トイレへの往復で作業が中断し、工程に影響が出る
  • トイレを我慢しようと水分を控え、夏場の熱中症リスクが高まる

トイレ1つで会社の評判が左右されることもあるため、現場内での確保を基本に考えましょう。

公共工事では「快適トイレ」が原則に

公共工事では、ただトイレを置くだけでなく、「快適トイレ」の設置が求められるケースが増えています。

快適トイレとは、女性も含めて誰もが使いやすいように、国土交通省が仕様を定めた仮設トイレのことです。主な条件をまとめました。

  • 洋式便座である
  • 水洗または簡易水洗で流せる
  • 臭いが逆流しにくい
  • 二重ロックなど、簡単に開かない鍵がある

国交省の直轄工事では、2016年10月以降、この快適トイレを置くのが基本になりました。設置にかかる費用は、発注者側が工事費に見込んでくれます。

この流れは自治体の工事にも広がっています。

自治体例主なルール
横浜市(建築工事)新しく仮設トイレを置く場合は原則、快適トイレ
愛媛県受注者が希望すれば設置でき、通常品との差額(1基・月57,000円)を見込む

なお、民間工事では、快適トイレの設置は義務ではありません。それでも、若手や女性の職人に「働きやすい現場」と感じてもらえるため、人材確保の面でプラスになります。

(出典:国土交通省『建設現場「快適トイレ」の取組』)

建設現場で使う仮設トイレの種類

建設現場で使われる仮設トイレは、主に「洗浄方式」と「便器の形」で分けられます。現場に水道や下水があるか、工期はどのくらいか、女性の作業員がいるかなどによって、適したタイプが変わります。

分類種類特徴・向いている現場
洗浄方式汲み取り式(非水洗)水も電気も不要。上下水道がない現場向け
簡易水洗(フットポンプ式)少ない水で流せて臭いも抑えやすい。建設現場で広く使われる
水洗(下水・浄化槽に接続)家庭用に近い使用感。長期の建築現場向け
便器和式/洋式/小便器快適トイレの条件を満たすには洋式が必要
その他快適トイレ・多室型・狭小地用公共工事、女性がいる現場、都市部の狭い現場向け

迷ったら、まずは一般的な「簡易水洗・洋式」を基準に検討するのがよいでしょう。

レンタルと購入はどちらがお得?費用相場を比較

工期が短い現場や単発の現場ならレンタル、複数の現場で長く使い回せるなら購入が向いています。ただし、本体価格や月額料金だけで比べると判断を誤りがちです。運搬費、汲み取り費、保管場所まで含めた総額で比較することが大切です。

ここでは、購入とレンタルそれぞれの相場と、どちらを選ぶべきかの目安を紹介します。

購入の相場

建設現場向けの仮設トイレは、本体価格が20万円台の製品から60万円前後の製品まで幅があります。同じ単室タイプでも、洗浄方式や便器の形、搭載している機能によって価格が大きく変わります。

主な製品の通販価格(2026年10月時点)は、次のとおりです。

メーカー製品名洗浄方式便器通販価格(税込)
旭ハウス工業AUトイレ水洗式洋式237,600円
簡易水洗和式276,100円
ハマネツTU-iXFUWポンプ式簡易水洗洋式613,800円
エポックトイレ(2室)水洗式小便器+洋式1,237,500円

また、2室型になると、100万円を超える製品もあります。購入する場合は、「現場への運搬費」「汲み取り費」「使わない期間の保管場所」など、本体価格のほかに次の費用や準備も必要です。

レンタルの相場

レンタル料金は、業者や地域、トイレの種類によって変わります。以下に、首都圏で仮設トイレを貸し出しているレンタル業者の料金表を整理しました。

種類1か月目(税込)延長(税込)
和式(簡易水洗)19,800円9,900円/月
洋式(簡易水洗)24,200円12,100円/月

出典:西尾レントオール「仮設トイレ」

※あくまで一例です

延長月の料金は、1か月目の半額に設定されているため、長く借りるほど1か月あたりの負担は軽くなります。ただし、上記のレンタル料金とは別に、次の費用がかかります。

  • 配送料(往復)
  • 汲み取り料(1棟・1回)
  • 外から施錠できるタイプの追加料金

また、西尾レントオールの2026年10月時点にレンタルをした場合、埼玉県の現場で5人が洋式トイレを3か月使うと、費用は合計は114,400円です。

  • レンタル料:24,200円+12,100円×2か月=48,400円
  • 配送料:16,500円
  • 汲み取り料:16,500円×3回=49,500円

なお、この業者では汲み取りを自社で手配することもできます。自治体から紹介される汲み取り業者のほうが安く済む場合もあるため、見積もりを比較するとよいでしょう。

判断の目安

レンタルと購入のどちらが向いているかは、利用期間、使う現場の数、保管場所の有無で判断できます。

まず、購入が向いているケースは、1年半以上の長期で使う、複数の現場で使い回す、使わない期間の保管スペースがあるという場合です。一方、レンタルが向いているケースは、工期が短い、単発の現場で使う、保管場所や運搬用のトラックがないという場合になります。

迷った際には、保管場所が不要なレンタルで始めるのがおすすめです。現場が増えて使う頻度が高くなってきたら、購入を検討するとよいでしょう。

仮設トイレを設置するときの注意点

仮設トイレは、置く場所や管理方法によって使いやすさが大きく変わります。設置後に移動するのは手間がかかるため、事前に次の点を確認しておきましょう。

  • バキューム車が横付けできる位置に置く
  • 地面を水平にし、強風で倒れないよう固定する
  • 近隣住宅の窓や出入口から離して設置する
  • 作業人数から汲み取りの頻度を見積もり、満タンになる前に手配する
  • 夏は消臭剤や換気、冬は凍結防止など季節に応じた対策をとる
  • 清掃当番を決め、トイレットペーパーなどの補充を習慣化する

特に注意したいのが、汲み取りの手配です。タンクが満タンになるとトイレが使えなくなり、作業員がコンビニなどに頼らざるを得なくなります。人数が多い現場や夏場は、早めに汲み取りを予約しておきましょう。

また、トイレが汚れていると、作業員の不満や近隣からの苦情につながります。設置して終わりにせず、きれいな状態を保てるよう、現場全体で管理することが大切です。

まとめ

建設現場の仮設トイレは、労働安全衛生規則で設置数の基準が定められた必須の設備です。公共工事では快適トイレが原則となりつつあり、民間工事でも人材確保の観点から重要性が増しています。

また、工期が短く単発の現場ならレンタル、複数の現場で長く使い回せるなら購入が向いています。自社の現場の数と工期に合わせて、最適な方法を選びましょう。