玉掛け合図一覧|ゴーヘイ・スラー、手・声・無線の正しい方法

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著者:上野 海

玉掛け合図とは、つり荷の巻上げや移動、停止などをクレーン運転者へ伝える合図です。

手、旗、声、無線などの方法がありますが、現場で合図を統一し、指名された一人が明確に伝えることが基本です。合図が不明瞭な場合や複数人から指示された場合、運転者は操作を停止します。

この記事では、日本クレーン協会「クレーンの運転のための合図」厚生労働省「玉掛け作業の安全に係るガイドライン」の資料をもとに、玉掛け合図の一覧と安全な手順を解説します。

玉掛け合図の手サイン一覧

代表的な手による玉掛け合図は次のとおりです。

合図手の動作
呼出し片手を高く上げる
位置の指示目的位置の近くで指し示す
巻上げ片手を上げ、頭上で輪を描く
巻下げ手のひらを下に向け、腕を下方へ振る
水平移動手のひらを移動方向へ向け、腕を数回動かす
微動小指または人差し指で、巻上げ・巻下げ・水平移動の合図を行う
ジブ上げ親指を上に向け、腕を斜め上へ動かす
ジブ下げ親指を下に向け、腕を斜め下へ動かす
ジブ伸縮こぶしを頭上に置き、親指の上下で方向を示す
補巻上げ上腕部をたたいた後、片手を上げて輪を描く
補巻下げ上腕部をたたいた後、手のひらを下にして腕を下方へ振る
転倒・反転両腕を平行に伸ばし、転倒方向へ回す
停止手のひらを高く上げる
急停止両手または片手を高く上げ、左右へ大きく振る
作業完了挙手の礼、または両手を頭上で交差させる

建設業では、操作対象を区別するため、巻上げ・巻下げの前にももをたたくなどの予備動作を加えます。

実際の作業では、この一覧だけで判断せず、事業者が現場ごとに定めた合図を確認してください。

玉掛け合図で使う言葉|ゴーヘイ・スラーとは

声や無線による玉掛け合図では、次の言葉が使われます。

言葉意味
ゴーヘイ巻上げ
スラー巻下げ
チョイ少し動かす
ストップ・止まれ停止
起こせ・倒せジブやブームの上げ・下げ
伸ばせ・縮めろジブやブームの伸縮
右・左旋回方向
もどせ行き過ぎた方向から戻す

ゴーヘイは巻上げ、スラーは巻下げの合図です。主巻と補巻の取り違えを防ぐため、声による合図は「操作部位・程度・動作」の順に伝えます。

  • 「主巻、ゆっくり、ゴーヘイ」
  • 「補巻、チョイ、スラー」
  • 「ブーム、ゆっくり、起こせ」

方向を示す「右・左」は、日本クレーン協会の例では運転者から見た方向です。認識の違いを防ぐため、作業前に基準を共有しましょう。

玉掛け合図の親指と小指は何を意味する?

親指の上下はジブの上げ下げを表します。こぶしを頭上に置く予備動作を加えると、ジブの伸縮を表します。

  • 親指を上に向ける:ジブ上げ
  • 親指を下に向ける:ジブ下げ
  • こぶしを頭上に置いて親指を上に向ける:ジブを伸ばす
  • こぶしを頭上に置いて親指を下に向ける:ジブを縮める

小指または人差し指で巻上げ、巻下げ、水平移動を示すと「微動」の合図になります。

建設業では、両手の間隔で移動量を示してから巻上げ・巻下げを伝える方法もあります。「チョイ」だけでなく、「あと10センチ」など具体的な距離を伝えると、認識のずれを防げます。

声・無線による玉掛け合図の注意点

高層建築や死角のある現場では、無線による玉掛け合図が使われます。離れた場所でも伝達できますが、混信や聞き間違いへの対策が必要です。

作業前に次の項目を確認します。

  • 合図者と使用する言葉
  • 無線チャンネルと通信状態
  • 主巻・補巻などの呼び方
  • 左右の基準
  • 運転者による復唱
  • 通信が切れた場合の停止ルール

合図者が「主巻、ゆっくり、ゴーヘイ」と伝え、運転者が復唱します。復唱が違う場合や、通信切れ・混信・発信者不明が生じた場合は操作を停止します。

また、笛は手や旗の補助として使われることがありますが、日本クレーン協会は、笛だけの合図は災害を起こしやすいため行わないよう注意しています。

旗による玉掛け合図

手旗でも巻上げ、巻下げ、移動、停止などを伝えますが、動作は手合図と異なります。

  • 巻上げ:旗を上げて輪を描く
  • 巻下げ:旗をほぼ水平にして左右へ振る
  • 水平移動:片手で方向を示し、旗を同じ方向へ振る
  • 停止:旗を斜め上へ高く上げる
  • 急停止:旗と手を高く上げ、左右へ大きく振る

旗は運転者から見やすい位置で、動作の始まりと終わりを明確にして使います。

事故を防ぐ玉掛け合図の手順

安全な玉掛け作業は、次の手順で進めます。

①作業前に役割と合図を決める

合図者、運転者、玉掛け作業者の役割を決め、使用する合図、運搬経路、着地場所、退避場所を共有します。合図者は、運転者と玉掛け作業者を確認でき、作業全体を見渡せる安全な位置に立ちます。

②全員の退避を確認する

合図者は、玉掛けが完了し、作業員が安全な場所へ退避したことを確認してから巻上げを指示します。つり荷の下や運搬経路内に人がいる状態で合図を出してはいけません。

③ロープが張ったところで停止する

玉掛け用ワイヤロープが張った段階でいったん停止し、掛け方、フック、重心を確認します。

④地切りで再確認する

荷を地面からわずかに浮かせ、傾き、回転、玉掛け用具のずれがないか確認します。異常があれば着地させ、玉掛けをやり直します。

⑤運搬中は荷と経路を監視する

合図者は安全な位置から荷を先導し、つり荷と進行方向を監視します。荷が不安定になった場合や人が立ち入った場合は直ちに停止させます。

⑥着地直前に停止する

荷が着地面やまくらへ接近した段階でいったん停止し、着地場所、まくら、作業員の位置を確認してから巻下げを指示します。

⑦荷の安定を確認する

荷が安定してから玉掛け用具を外し、合図者、玉掛け作業者、運転者が作業完了を確認します。

運転者が停止すべきケース

日本クレーン協会は、次の場合に運転を中止することが大切だとしています。

  • 合図が不明瞭
  • 定められた合図ではない
  • 2人以上から合図を受けた
  • 指名された合図者以外から合図を受けた

合図の意味を推測して操作してはいけません。合図者が見えなくなった場合や無線が切れた場合も、確認できるまで停止します。

クレーン作業を含む建設現場の安全ルールや、労働安全衛生法との違いについて詳しく知りたい方は、以下の記事も参考にしてください。

玉掛け合図に資格は必要?

合図だけを行う人について、玉掛け技能講習の修了が一律に義務付けられているわけではありません。

一方、ワイヤロープなどを荷に掛けたり外したりする玉掛け作業には、クレーンなどのつり上げ荷重に応じた資格・教育が必要です。

  • つり上げ荷重1トン以上:玉掛け技能講習の修了  
  • つり上げ荷重1トン未満:玉掛け業務の特別教育の修了

基準は実際の荷の重さではなく、使用するクレーンなどの「つり上げ荷重」です。合図者にも、玉掛け作業やクレーンの定格荷重、移動範囲、運転性能を理解した人を指名する必要があります。

玉掛け技能講習と特別教育の違いや、取得費用、講習時間について詳しく知りたい方は、以下の記事も参考にしてください。

玉掛け合図をイラストで確認する方法

玉掛け合図のイラストは、日本クレーン協会「運転のための合図」で確認できます。手、旗、声による合図が掲載されているため、本記事の一覧とあわせて確認してください。

ただし、イラストを見ただけで実作業を始めるのは危険です。現場で使う合図を運転者と対面で確認し、運転席からの見え方も確かめる必要があります。

まとめ

ゴーヘイは巻上げ、スラーは巻下げ、親指は主にジブの操作、小指または人差し指は微動を表します。

作業前に合図と合図者を統一し、ロープが張った段階、地切り時、着地直前に安全を確認しましょう。合図が不明瞭な場合や安全を確認できない場合は、操作を停止してください。

※本記事は一般的な安全情報をまとめたものです。実作業では、関係法令、使用機器の取扱説明書、事業者が定めた作業計画・作業標準に従ってください。