フルハーネス特別教育とは?|受講義務・対象者・講習時間・受けないとどうなるかを解説

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Category:コラム建築

著者:上野 海

「フルハーネス特別教育はどのような人が受ける必要がある?」「高所作業をする場合は全員受講しなければならない?」と疑問に感じている方も多いのではないでしょうか。

フルハーネス特別教育は、一定の条件下でフルハーネス型墜落制止用器具を使用して作業する労働者に対して、事業者が実施しなければならない特別教育です。ただし、高さ2m以上で作業する人や、フルハーネスを使用する人すべてが対象になるわけではありません。

この記事では、フルハーネス特別教育の対象者や受講義務、講習内容・時間、受けない場合の扱い、受講方法まで、厚生労働省の情報をもとにわかりやすく解説します。

フルハーネス特別教育とは?

フルハーネス特別教育とは、高さ2m以上の場所で作業床を設けることが困難なところにおいて、フルハーネス型の墜落制止用器具を使用して作業する労働者を対象とした安全衛生教育です。

高所作業では、墜落や転落によって重大な事故につながる危険があります。そのため、一定の危険な業務に労働者を就かせる場合、労働安全衛生法第59条第3項により、事業者は必要な特別教育を行わなければなりません。

フルハーネスを使用する作業についても、2019年2月1日から一定の業務が特別教育の対象となりました。

なお、法改正に伴い、従来の「安全帯」は法令上「墜落制止用器具」という名称に変更されています。現在は墜落制止用器具としてフルハーネス型を使用することが原則です。

ただし、フルハーネスを使用する人すべてに特別教育が必要なわけではありません。本記事では、具体的にどのような作業が対象になるのか解説します。

出典:厚生労働省『安全帯が『墜落制止用器具』に変わります!』

また、着用義務の必要性について詳しく知りたい方は、以下の記事もチェックしてみてください。

フルハーネス特別教育が必要な人・不要な人

フルハーネス特別教育が必要になるのは、原則として次の条件に該当する業務を行う労働者です。

作業の状況特別教育
高さ2m以上+作業床の設置が困難+フルハーネス型を使用必要
高さ2m未満での作業法令上の対象外
高さ2m以上でも作業床が設けられている場所での作業法令上の対象外
フルハーネス型を使用しない作業フルハーネス特別教育の対象外
ロープ高所作業別途「ロープ高所作業」の特別教育が必要

重要なのは、「高さ2m以上で作業する=フルハーネス特別教育が必須」ではないことです。

厚生労働省の「墜落制止用器具に係る質疑応答集」でも、法令上の特別教育が義務付けられるのは、以下の条件を満たす業務であることが示されています。

たとえば、足場の作業床や機械の点検台など、作業のために設けられた床がある場所では、フルハーネス型を使用したとしても、それだけを理由に特別教育の対象になるわけではありません。

フルハーネス特別教育の講習内容と時間

フルハーネス特別教育のカリキュラムは、安全衛生特別教育規程第24条によって定められています。原則として、以下に示す学科4.5時間・実技1.5時間の合計6時間です。

区分科目時間
学科作業に関する知識1時間
学科墜落制止用器具に関する知識2時間
学科労働災害の防止に関する知識1時間
学科関係法令0.5時間
実技墜落制止用器具の使用方法等1.5時間
合計6時間

学科では、フルハーネスやランヤードの構造・装着方法、点検方法、墜落・落下物・感電などによる労働災害を防止する方法、関係法令などを学びます。一方、実技では、実際にフルハーネスを装着し、ランヤードの取り付け方法や点検・整備方法などを学びます。

なお、十分な知識や技能を有すると認められる労働者については、一定の条件により一部科目を省略できる場合もあります。

フルハーネス特別教育の料金はいくら?

フルハーネス特別教育の受講料金は、講習機関や地域、受講方法によって異なりますが、1人あたり1万円前後が目安です。たとえば、中小建設業特別教育協会では、フルハーネス型墜落制止用器具特別教育を教材費・消費税込み10,505円で実施しています。

受講先を選ぶときは、料金だけでなく以下の点も確認しておきましょう。

  • 教材費が受講料金に含まれているか
  • 修了証の発行費用が含まれているか
  • 学科だけでなく実技教育も受けられるか
  • オンラインの場合、実技をどのように実施するか

また、建設事業主など一定の要件を満たす場合は、「人材開発支援助成金(建設労働者技能実習コース)」を活用できる可能性があります。受講料金だけで判断せず、講習内容や助成制度も確認したうえで受講先を選びましょう。

フルハーネス特別教育は義務?受けないとどうなる?

対象となる業務に労働者を就かせる場合、事業者にはフルハーネス特別教育を実施する義務があります。そのため、必要な教育を行わないまま対象業務に従事させることはできません。

フルハーネス特別教育について、押さえておきたいポイントを整理しました。

  • 対象業務に就かせる場合は、特別教育の実施が義務
  • 義務を負うのは、原則として労働者を対象業務に就かせる事業者
  • 必要な特別教育を行わずに対象業務へ従事させると、労働安全衛生法違反となる可能性がある
  • 事業者は特別教育の受講者や科目などの記録を作成し、3年間保存する必要がある

なお、フルハーネス特別教育は、一般的な資格試験のように「作業者本人が資格を取得する」という制度ではありません。労働安全衛生法にもとづき、事業者が対象となる労働者に必要な教育を行う制度です。

講習機関で受講すると修了証が発行されることもあり、現場で教育を受けたことの確認を求められる場合があるため、受講後は修了証などを適切に保管しておく必要があります。

また、建設業で働く技能者の場合は、フルハーネス特別教育の修了情報を建設キャリアアップシステム(CCUS)に登録できます。CCUSでは「特別教育」の一つとして登録対象となっているため、受講後は忘れずに登録しておきましょう。

フルハーネス特別教育を実施しない場合の罰則・罰金

対象業務に必要な特別教育を実施しなかった場合、労働安全衛生法第59条第3項違反となり、同法第119条により罰則の対象となります。

具体的には、6か月以下の拘禁刑または50万円以下の罰金が科される可能性があります。

事業者は対象となる作業を確認し、労働者を業務に就かせる前に必要な特別教育を実施することが重要です。

フルハーネス特別教育を受講する方法

フルハーネス特別教育は、全国の安全衛生関係団体や講習機関などで実施されています。

主な受講・実施方法は、以下の3つです。

講習機関で受講する

全国各地の労働災害防止団体や安全衛生関係団体、民間の講習機関などがフルハーネス特別教育を開催しています。基本的には1日で学科4.5時間・実技1.5時間を受講する形式です。

開催場所や受講料金、日程は講習機関によって異なるため、「フルハーネス特別教育+地域名」などで検索し、受講しやすい講習を探してみてください。

WEB・オンライン講習を利用する

フルハーネス特別教育の学科部分をWEB・オンライン形式で受講できるサービスもあります。ただし、法定カリキュラムには1.5時間の実技教育が含まれています。

オンライン講習を選ぶ場合は、学科だけでなく、必要な実技教育をどのように実施するのかまで確認することが重要です。

会社で特別教育を実施する

フルハーネス特別教育は、必ず外部の講習機関で受講しなければならないわけではありません。実際には、企業内で実施する方法と企業外で実施する方法があります。

また、特別教育の講師に特定の資格要件は定められていません。ただし、講師は教育する科目について十分な知識と経験を有している必要があります。

自社で実施する場合も、法令で定められた科目・教育時間を満たしたうえで、受講者や科目などの記録を作成し、3年間保存する必要がある点に注意してください。

出典:厚生労働省「職場のあんぜんサイト|特別教育」

フルハーネス特別教育に関するよくある質問

フルハーネスを使う人は全員受講が必要?

フルハーネスを使用する人全員に特別教育が義務付けられているわけではありません。法令上の対象となるのは、高さ2m以上で作業床を設けることが困難な場所において、フルハーネス型墜落制止用器具を使用して作業する業務です。

フルハーネス特別教育は何時間?

原則として学科4.5時間、実技1.5時間の合計6時間です。ただし、十分な知識・技能があると認められる場合など、一定の条件を満たせば一部科目を省略できる場合があります。

フルハーネス特別教育に有効期限はある?

法令上、フルハーネス特別教育について「○年ごとに更新する」といった有効期限は定められていません。ただし、設備や作業方法の変更、安全上の必要性などに応じて、事業者が再教育・安全衛生教育を行うことは重要です。

フルハーネス特別教育は自社でもできる?

自社でも実施できます。特別教育の講師には法令上の資格要件はありませんが、教育科目について十分な知識と経験を持つ人が担当する必要があります。また、法定のカリキュラム・教育時間を満たし、教育記録を3年間保存する必要があります。

フルハーネス特別教育の修了証を紛失したらどうすればいい?

修了証を紛失した場合は、受講した講習機関などに再発行が可能か確認しましょう。再発行の方法や必要書類、手数料は講習機関によって異なります。現場で提示を求められる場合もあるため、紛失に気づいたら早めに確認することが大切です。

まとめ

フルハーネス特別教育は、高さ2m以上で作業床を設けることが困難な場所において、フルハーネス型墜落制止用器具を使用して作業する労働者に必要となる特別教育です。原則として学科4.5時間と実技1.5時間の合計6時間を受講します。

ただし、高さ2m以上で働く人やフルハーネスを使用する人が、すべて特別教育の対象になるわけではありません。実際の作業場所や作業床の有無、使用する墜落制止用器具などを確認したうえで、対象になるか判断することが大切です。

対象業務に労働者を就かせる事業者は、必要な特別教育を確実に実施し、安全に高所作業を行える環境を整えましょう。