【2026年版】熱中症対策とは?|企業がやるべき義務化対応・WBGT管理・現場DX活用法を解説

建設現場や工場、倉庫などで働く従業員の熱中症対策について、「何を実施すれば法令対応になるのかわからない」「ファン付き作業服や塩飴を配布しているが十分なのか不安」と感じていないでしょうか。

近年は猛暑日が増加しており、熱中症による労働災害も深刻化しています。さらに2025年には職場における熱中症対策が義務化され、企業には従来以上に具体的な対応が求められるようになりました。

そこでこの記事では、熱中症対策義務化の概要からWBGT管理の考え方、建設現場で実践したい対策、DXツールの活用方法までをわかりやすく解説します。自社に必要な対策を整理しながら、事故を防ぐための仕組みづくりに役立ててください。

2025年から義務化された熱中症対策とは

企業の熱中症対策は、すでに法令上の対応事項として求められる時代になりました。

この背景には、熱中症による労働災害の増加があります。厚生労働省の「令和7年職場における熱中症による死傷災害の発生状況」によると、熱中症による死傷者が令和6年と比べて43%も上昇していることがわかりました。

そのため、厚生労働省は職場での熱中症死亡災害が継続的に発生している状況を受け、2025年6月から職場における熱中症対策の強化を義務化しました。

(出典:厚生労働省「職場における熱中症対策の強化について」

対象となるのは、高温環境下で一定時間以上作業を行う可能性がある職場です。詳しく説明すると「WBGT28℃以上または気温31℃以上の環境下で連続1時間以上または1日4時間を超えて作業をする場合」が対象となります。建設現場はもちろん、工場や倉庫、警備業なども対象になるケースがあります。

参考として以下に、企業が取り組むべき必須対応を整理しました。

必須対応内容
報告体制異常時の連絡先
対応手順搬送・応急処置
周知作業員への教育

特に重要なのは、「熱中症になった後の対応」ではなく、「熱中症を発生させない仕組み」を作ることです。まずは自社の作業環境が義務化の対象となるかを確認し、必要な体制整備から進めてみてください。

熱中症対策不足に罰則はある?

熱中症対策を怠った場合、事業者が罰則を受ける可能性があります。

2025年6月の労働安全衛生規則改正により、一定の暑熱環境下で作業を行う事業者には、熱中症対策の実施が義務付けられました。対象となる事業者が必要な措置を講じなかった場合、労働安全衛生法違反に問われる可能性があります。

主なリスクは次のとおりです。

リスク建設会社への影響(可能性)
刑事罰6か月以下の拘禁刑または50万円以下の罰金
是正勧告現場改善や追加対応が必要になる
作業停止工期や工程に影響する可能性
損害賠償労災・訴訟対応などの負担が発生する可能性

参考:e-GOV法令検索「労働安全衛生規則第612条の2」

ただし、WBGTが高い日に作業しただけで直ちに罰則が科されるわけではありません。問題となるのは、報告体制や緊急時対応手順の整備、作業員への周知など、法令で求められる対策を実施していなかった場合です。

特に建設現場では、元請企業だけでなく協力会社を含めた安全管理が求められます。罰則を避けるためではなく、重大事故を防ぐための仕組みとして熱中症対策を進めることが重要です。

熱中症対策が企業課題になっている理由

熱中症対策は、安全衛生の一項目ではなく、すでに企業経営に直結する課題になっています。

その理由は、前述した「熱中症による労働災害」だけではなく、人手不足や高齢化が進む中で、一度事故が起きると現場運営そのものに影響が及ぶためです。建設業では工期遅延や作業停止につながることもあり、単なる体調管理の問題では済まされません。

実際の現場では、次のような課題を抱える企業も少なくありません。

  • ファン付き作業服や塩飴を配布しているが効果が見えない
  • WBGTを測定していない
  • 協力会社への周知が徹底できていない
  • 水分補給を個人任せにしている
  • 応急対応手順が現場ごとに異なる

こうした状況では、熱中症対策が属人的になりやすく、担当者や現場責任者によって対応レベルに差が生じます。

そのため現在は、「個人の注意力に頼る対策」から「会社全体で管理する仕組み」への転換が求められています。まずは自社の現場運営を振り返り、対策が仕組みとして機能しているか確認してみてください。

建設現場で熱中症が起こりやすい3つのパターン

建設現場では、特に次のような環境で熱中症が発生しやすくなります。

  • 屋外で直射日光を受ける道路工事や造成工事
  • 熱がこもりやすい工場や倉庫内作業
  • 高所作業や重量物運搬など負荷の高い作業

同じ気温でも、作業内容や環境によって危険度は大きく変わります。まずは自社の現場がどのパターンに当てはまるのかを把握し、適切な対策を検討しましょう。

【判断チェック】自社の熱中症対策は十分?

熱中症対策が十分かどうかは、「グッズを導入しているか」ではなく、「現場のリスクに応じた管理ができているか」で判断します。以下のチェックポイントをすべて網羅できているか確認してみてください。

  • 屋外または高温環境で作業がある
  • WBGTを測定している
  • 休憩・水分補給ルールがある
  • 緊急時対応手順を周知している
  • 熱中症対策は概ね実施できている

なお、ひとつでも対応できていないものがあれば、対策の見直しが必要です。

特に建設業では、ファン付き作業服や塩飴を配布していても、WBGT測定や作業ルールが整備されていないケースが少なくありません。できているつもりになっている会社もよく見受けられます。

一方で、屋内の事務作業のみで空調管理ができている企業は、建設現場ほど大規模な対策は不要な場合もあります。まずは自社の作業環境を整理し、不足している対策から優先的に進めましょう。

建設現場で実践したい熱中症対策5選

熱中症対策で重要なのは、現場環境を把握し、作業管理や体調管理を含めて継続的に運用することです。ここでは、厚生労働省の「働く人の今すぐ使える熱中症ガイド」「建設業における熱中症予防対策」なども参考にしつつ、多くの建設現場で実践したい基本的な対策を紹介します。

  • WBGTを測定する
  • 作業計画を見直す
  • 水分・塩分補給を仕組み化する
  • 休憩場所・冷却設備を整備する
  • 暑熱順化を実施する

WBGTを測定する

熱中症対策の第一歩は、現場の暑さを数値で把握することです。

WBGTは気温だけでなく湿度や輻射熱も反映するため、実際の危険度を判断しやすくなります。作業開始前だけでなく、気温が上昇する時間帯にも定期的に確認しましょう。

なお、WBGT(湿球黒球温度)とは、熱中症予防のために1954年にアメリカで提案された「暑さ指数」のことです。「気温」「湿度」「輻射熱(日差しなど)」の3要素で構成された指標となります。WBGTについては以下の記事をチェックしてみてください。

作業計画を見直す

気温が高い時間帯に高負荷作業を集中させると、熱中症リスクが高まるため、朝の比較的涼しい時間帯に作業を前倒しするなど、暑さを考慮した工程管理を行うことが重要です。無理のない作業計画を心がけましょう。

水分・塩分補給を仕組み化する

現場では、定期的な給水時間を設けるなど、個人任せにしない仕組みづくりが重要です。

実際、「喉が渇いたら飲む」では遅い場合があります。すでに強い喉の渇きを感じている状態は、脱水が進み始めているサインとも言われています。大量に汗をかく現場では、水分だけでなく塩分や電解質も補給できる環境を整えましょう。

休憩場所・冷却設備を整備する

現場に、送風機やスポットクーラー、ミスト設備なども活用しながら、体温を下げられる環境を整備しましょう。直射日光を避けられる休憩所や冷房設備のある休憩スペースは、熱中症予防に効果的です。

暑熱順化を実施する

暑熱順化とは、体を徐々に暑さへ慣らす取り組みです。長期休暇明けや新規入場者は特に熱中症リスクが高いため注意が必要です。作業時間や負荷を段階的に増やし、無理なく現場に慣れてもらいましょう。

熱中症対策を効率化するDXツールとは

従来の熱中症対策は、職長や管理者の経験にもとづいて判断するケースが一般的でした。しかし、現場数の増加や人手不足が進むなか、経験だけで全作業員の体調や現場環境を把握することは難しくなっています。

そこで注目されているのが、熱中症対策を効率化するDXツールです。WBGTの自動測定や作業員の体調管理をデジタル化することで、異常の早期発見や管理負担の軽減につながります。

たとえば、従来とDX活用後では次のような違いがあります。

項目従来の管理DX活用後
WBGT管理現場ごとに手動確認クラウドで一元管理
体調確認紙のチェックシートアプリで記録・共有
異常対応作業員からの報告待ちアラートで早期対応
本社管理現場任せになりやすい遠隔から状況把握

ここでは、熱中症対策に活用しやすいDXツールの例を紹介します。

WBGT計・熱中症指数計

WBGT計は、気温・湿度・輻射熱をもとに熱中症リスクを数値化する機器です。現場の危険度を客観的に判断できるため、休憩や作業中断の基準づくりに役立ちます。義務化対応を進めるうえでも導入しやすいツールです。

ウェアラブルデバイス

リストバンド型や腕時計型のウェアラブルデバイスには、体温や脈拍などを計測できる製品があります。体調変化を早期に把握しやすくなるため、熱中症の重症化防止につながります。高リスク作業の見守りにも活用されています。

すでに、スマートウォッチを活用した熱中症予防・対策ができるクラウドサービスも登場しています。詳しくは以下の記事をご確認ください。

作業員の体調管理アプリ

体調管理アプリを活用すると、作業前の健康状態や体調報告をスマートフォンで記録できます。管理者も一括で確認できるため、体調不良者の早期発見が可能です。紙のチェックシート運用による確認漏れや手間をなくし、管理を効率化したい企業にも向いています。

実際の活用事例もチェックしたい方は、以下の記事がおすすめです。

遠隔モニタリングシステム

複数の現場を管理する企業では、WBGTや作業員情報を遠隔で確認できるシステムも活用されています。たとえば、AIを用いて作業員のふらつきや体調変化を検知できるIoT製品も普及し始めています。本社や管理部門から現場状況を把握できるため、熱中症リスクが高まった際の迅速な対応につながります。

詳しい事例は、以下の記事でも解説しています。

【失敗事例】熱中症対策をしていたのに事故が起きた理由

熱中症事故は、対策をまったくしていない現場だけで起きるわけではなく、たとえ対策をしていたとしても発生する場合があります。ただし、そのほとんどが「対策しているつもりだった」というケースも少なくありません。

ここでは、建設現場でよく見られる失敗事例を紹介します。

ファン付き作業服を配布しただけだった

ファン付き作業服だけに頼ったことにより、熱中症事故が発生したケースがあります。ファン付き作業服は体感温度の低下には効果がありますが、WBGTの上昇や脱水を防げるわけではありません。

そのため、ファン付き作業服を配布するだけでなく、WBGT管理や休憩ルール、水分補給と組み合わせて運用することが大切です。

WBGTを測定していなかった

WBGTを測定していなかったことが原因で、危険な暑熱環境を見逃し熱中症事故につながるケースがあります。気温がそれほど高くなくても、湿度や輻射熱によってリスクが高まる場合があります。

現場の危険度を感覚で判断せず、WBGT計を活用して客観的に管理することが重要です。

水分補給を個人任せにしていた

水分補給を個人任せにしていたことにより、脱水症状から熱中症を発症するケースがあります。特に繁忙時のタイミングや新人作業員は、休憩や給水を後回しにしがちです。

そのため、定期的な給水時間を設定するなど、現場全体で水分補給を促す仕組みづくりが必要です。

新規入場者への教育が不足していた

熱中症対策の教育不足が原因で、体調不良の申告遅れや無理な作業継続につながるケースがあります。なかでも新規入場者や長期休暇明けの作業員は注意が必要です。

新規入場教育や朝礼などを活用し、熱中症の初期症状や対応方法を周知することが重要です。

熱中症対策に関するよくある質問

スポーツドリンクと経口補水液はどちらが良いですか?

日常的な水分補給はスポーツドリンクでも問題ありませんが、大量の発汗がある場合は、スポーツドリンクより経口補水液の方が適しているケースがあります。経口補水液は水分と電解質を効率よく補給できるため、日常的な水分補給と、熱中症症状が疑われる場面で使い分けましょう。

屋内作業でも熱中症対策は必要ですか?

屋内作業でも熱中症対策は必要です。工場や倉庫などでは熱がこもりやすく、屋外より高温になることもあります。実際に熱中症は屋内でも発生しているため、WBGT測定や換気、休憩管理を徹底しましょう。

まとめ|熱中症対策は「個人任せ」から「仕組み化」の時代へ

熱中症対策は、「気を付ける」「こまめに水を飲む」といった個人任せの取り組みだけでは不十分な時代になっています。特に建設現場では、2025年の義務化をきっかけに、企業として熱中症を予防する仕組みづくりが求められるようになりました。

熱中症事故は、適切な対策をすることで防げるケースも少なくないため、まずは自社の現場を見直し、不足している対策から1つずつ整備していきましょう。