熱中症で労災認定される場合も|厚労省「クールワークキャンペーン」に注目

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近年、猛暑の影響により、職場での熱中症による労働災害が増加しています。とくに建設業や運送業、製造業など高温環境での作業では、重症化や死亡事故につながるケースも少なくありません。

熱中症は状況によって労災認定される場合もあり、企業には適切な予防対策が求められています。そこで本記事では、熱中症の労災認定要件や、厚生労働省の「STOP!熱中症 クールワークキャンペーン」について解説します。

熱中症での死傷者数が増加中|厚生労働省

出典:厚生労働省,STOP!熱中症 クールワークキャンペーン,https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000116133.html,参照日2026.6.11

職場での熱中症は年々深刻化しており、厚生労働省によると令和4年から令和6年まで3年連続で年間30人前後が死亡しています。2024年の速報値では、休業4日以上の死傷者数は1,681人に達し、前年比で約4割増加しました。

とくに建設業や製造業で多く発生しており、全体の約4割を占めているのが現状です。背景には、高温環境下での作業に加え、熱中症予防教育の不足や、糖尿病・高血圧症など基礎疾患を抱える労働者への配慮不足もあるとされています。

熱中症は「労災認定」が認められない?

とくに建設業等では、業務時間内での熱中症が多く発生しています。「熱中症では労災認定が認められないのでは?」という疑問もよく聞かれますが、実際には認定を受けられるケースもあります。

ここでは、事例や認定要件について分かりやすく解説します。

労災とは

労災とは「労働災害」の略称で、業務中や通勤中に発生したけがや病気、死亡などに対して補償する制度です。正式には「労働者災害補償保険」と呼ばれ、治療費や休業中の補償などを受けられます。

とくに建設業や製造業、運送業など高温環境での作業が多い職場では、熱中症も業務に起因する疾病として労災認定される場合があります。企業側は、労働者の安全配慮義務を果たすことが必要です。

熱中症が労災認定された事例

熱中症は、屋外や高温環境での作業中に発症した場合、労災認定されるケースがあります。例えば真夏の建設現場で長時間作業を行った後に倒れ、救急搬送された事例や、空調設備が不十分な工場内で作業していた労働者が重症化した事例などが挙げられます。

とくに「WBGT値」が高い環境で適切な休憩や水分補給が行われていなかった場合には、業務との関連性が認められやすくなります。

熱中症が労災認定を受けられる要件

熱中症で労災認定を受けるには、「業務が原因で発症した」と判断される必要があります。単に暑い日に体調を崩しただけでは認定されず、高温環境での長時間作業や、重い荷物の運搬など身体的負荷があったかが重要なポイントです。

業務上疾病の範囲は「労働基準法施行規則第35条別表1の2」に定められており、その 1 つに「暑熱な場所における業務による熱中症」が含まれています。そして熱中症の認定要件には、「一般的認容要件」と「医学的診断要件」があります。

【参考】労働基準法施行規則第35条別表1の2

①一般的認容要件

一般的認容要件とは、「その作業環境であれば熱中症を発症しても不自然ではない」と判断される条件を指します。要件は、下記の通りです。

  • 1. 業務上の突発的又はその発生状態を時間的、場所的に明確にし得る原因が存在すること
  • 2. 当該原因の性質、強度、これが身体に作用した部位、災害発生後発病までの時間的間隔等から災害と疾病との間に因果関係が認められること
  • 3. 業務に起因しない他の原因により発病(又は増悪)したものでないこと

例えば高温多湿の屋外で長時間作業していた場合や、空調のない場所で重作業を続けていた場合などが挙げられます。さらに水分・塩分補給が十分でなかったことや、休憩時間が確保されていなかったことも考慮されます。

②医学的診断要件

医学的診断要件では、医師によって熱中症と診断されていることが必要になります。要件は、下記の通りです。

  • 1. 作業条件及び温湿度条件等の把握
  • 2. 一般症状の視診(けいれん、意識障害等)及び体温の測定
  • 3. 作業中に発生した頭蓋内出血、脳貧血、てんかん等による意識障害等との鑑別診断

診断書や救急搬送記録、治療内容なども重要な資料となります。また発症時期や作業状況との整合性も確認され、他の病気が原因ではないかも含めて総合的に判断されます。

労災保険で補償される金額の目安

熱中症が労災認定された場合、治療費にあたる療養補償給付のほか、休業した期間の補償を受けられる場合があります。例えば休業補償給付では、休業4日目以降から給付基礎日額の約8割相当が支給されるのが一般的です。

また後遺障害が残った場合には障害補償給付、死亡した場合には遺族補償給付が支給されます。ただし補償額は、給与水準や症状の程度によって異なります。

厚生労働省|「STOP!熱中症 クールワークキャンペーン」とは

出典:厚生労働省,STOP!熱中症 クールワークキャンペーン,https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000116133.html,参照日2026.6.11

厚生労働省では、熱中症を防ぐために「STOP!熱中症 クールワークキャンペーン(職場における熱中症予防対策)」を実施しています。

概要

「STOP!熱中症 クールワークキャンペーン」は、厚生労働省が実施している職場向けの熱中症予防対策です。建設業や製造業、運送業など高温環境での作業が多い業種を中心に、熱中症による労働災害を防ぐことを目的としています。

具体的にはWBGT値(暑さ指数)を活用した作業環境管理や、水分・塩分補給、休憩時間の確保などを呼びかけており、企業に対して具体的な予防対策の徹底を促しています。

主な取り組み

キャンペーンの主な取り組みは、下記の通りです。

(1)労働災害防止団体等との連携

厚生労働省は、労働災害防止団体や関係機関と連携しながら熱中症対策を進めています。建設業労働災害防止協会などと協力し、現場向けの注意喚起や教育資料の配布、講習会等を実施しています。

業界ごとの作業環境に応じた対策を広げることで、現場レベルでの予防意識向上を図っている点が特徴です。

(2)関係業界団体などに対する要請・事業場などに対する周知

厚生労働省は、業界団体や企業に対して、熱中症予防対策を徹底するよう要請しています。具体的には、WBGT値の把握や休憩場所の整備、水分・塩分補給の実施、作業時間の見直し等です。

また事業場への通知やリーフレット配布を通じて、現場で働く労働者への周知も進めています。とくに屋外作業の多い業種では、重点的な対策強化が求められています。

(3)協賛団体による支援

キャンペーンでは、協賛団体による支援活動も実施されています。空調機器メーカーや安全用品関連企業などが参加し、熱中症対策製品の普及や情報発信を実施しています。

例えば空調服や冷却機器、経口補水液などの活用提案を通じて、企業の対策導入を後押ししています。民間企業と行政が連携することで、現場で実践しやすい熱中症対策の普及が進められています。

企業に求められる熱中症対策

ここでは、企業に求められる熱中症対策をご紹介します。建設業や運送業では、とくに重点的に意識することが求められます。

WBGT値を活用した作業環境の管理

WBGT値(暑さ指数)は、気温だけでなく湿度や日射なども含めて暑さの危険度を示す指標です。企業には、このWBGT値を活用し、作業中止や休憩時間の延長などを判断することが求められています。

建設現場や屋外作業でも、作業環境を数値で把握することで熱中症リスクを早期に察知しやすくなります。

水分・塩分補給と休憩時間の確保

熱中症対策では、こまめな水分・塩分補給と十分な休憩時間の確保が重要です。喉の渇きを感じる前に定期的に補給することが推奨されており、企業側には飲料や塩飴などを準備する配慮も求められます。

また日陰や冷房設備のある休憩場所を設けることで、労働者の体温上昇を抑える効果が期待できます。

空調設備や冷却機器の導入・活用

近年は、空調服やスポットクーラー、冷却ベストなど、熱中症対策機器を導入する企業も増えています。特に工場や倉庫など高温になりやすい環境では、空調設備の整備が重要です。

こうした機器を活用することで、身体への負担軽減や作業効率向上にもつながります。猛暑が続く中、設備面での対策強化が求められています。

熱中症発生時に備えた緊急対応体制の整備

万が一、職場で熱中症が発生した場合に備え、緊急対応体制を整えておくことも重要です。例えば、体調不良者を早期に発見するための声掛けや巡回、救急搬送までの手順共有などが挙げられます。

また管理者や従業員に対して応急処置の教育を行うことで、重症化防止につながります。迅速な初期対応が、命を守る重要なポイントです。

まとめ

職場での熱中症は年々増加しており、重症化した場合には労災認定されるケースもあります。そのため企業には、WBGT値を活用した環境管理や、水分・塩分補給、休憩体制の整備など、具体的な対策の徹底が求められています。

厚生労働省も「STOP!熱中症 クールワークキャンペーン」を通じて注意喚起しており、労働者の安全を守るためにも、継続的な熱中症対策への取り組みが重要です。