BIMを援用した「BIM図面審査」の正式な開始も契機にして関連動向が続々と公表される|深堀り取材【毎月3回更新】

繰り返し本稿でも報告したように、新年度の4月1日からBIMを援用した建築確認申請の「BIM図面審査」が開始された状況下、実施を巡る情報が公表され始めている。ここでは、大林組が「BIM図面審査」に対応した確認申請などを複数案件で提出した事案、ビューローベリタスとmignが建築確認の雑用をAIに任せるべく審査支援システムの運用を開始した事案を報告する。
目次
- BIMモデルを活用した複数案件の確認申請+省エネ適合性判定及び構造適合性判定も提出
- 従来から実施のPDFによる電子申請を踏まえ「BIM図面審査」に対応可能な運用方法を整備
- 建築モデルを起点とした整合性確保+確認申請用CDEで図書管理・指摘対応を一元化する
- 2029年「BIMデータ審査」への移行+将来的な制度動向やIFC活用の流れを見据え運用改善
- 建築確認における業務⽀援を⽬的とした業界特化型AIエージェントによるシステムを開発
- 審査項⽬のチェックリストと膨⼤な申請図書のアップロードでAIエージェントが⾃律稼働
- 膨⼤な情報処理+判断材料の整理+根拠の抽出をAIが担い最終的な専⾨的判断は⼈が行う
- 豊富な検査実績のビューローベリタスジャパンと最先端の⽣成AI技術を有するmignが協業
BIMモデルを活用した複数案件の確認申請+省エネ適合性判定及び構造適合性判定も提出
大林組では、建築確認申請における「BIM図面審査」に対応するため、※1)指定確認検査機関及び構造適合性判定機関などと連携し、BIMモデルを活用した確認申請を複数の案件で提出すると共に、同一の案件において申請・審査用のプラットフォーム(確認申請用CDE)を活用し、省エネ適合性判定及び構造適合性判定も提出した。
大林組では、DXを活用した申請体制の構築・運用によって図面間の整合確認や指摘対応に伴う手戻りの削減を推進している。今回の取り組みにおいては、「BIM図面審査」制度に基づく確認申請を推進し、2026年度には10件以上の案件適用を目指している。合わせて2029年に予定されている※2)BIMデータ審査への移行など、将来的な制度動向やIFC活用拡大の流れを見据え、運用改善に取り組んでいく。
※1)指定確認検査機関及び構造適合性判定機関:確認検査及び省エネ適合性判定:日本建築センター及び日本ERI・構造適合性判定:日本建築センター及びベターリビング
※2)BIMデータ審査: IFCデータ(3次元建物モデル)を審査対象とした建築確認審査制度。

従来から実施のPDFによる電子申請を踏まえ「BIM図面審査」に対応可能な運用方法を整備
建設業においては、人手不足や建築士の高齢化を背景にして建築確認申請・審査の生産性向上が急務となっている。国土交通省では、その解決策として2026年4月より「BIM図面審査」制度を導入した。
「BIM図面審査」制度では、BIMで作成した3次元の建物モデルを基に確認申請の図面などを作成し申請を行う。審査者は従来のPDF図面に加えてIFCなどの3次元モデルを参考にすることによって図面ごとの整合性確認を省略することが可能となる。
大林組では、2020年からPDFを用いた確認申請の電子申請に取り組むなど建築確認手続きのデジタル化を段階的に進めてきた。今回、これらの取り組みを踏まえ、「BIM図面審査」に対応可能な運用方法を整備した。
建築モデルを起点とした整合性確保+確認申請用CDEで図書管理・指摘対応を一元化する
大林組における「BIM図面審査」への対応の流れをみてみよう。具体的には、3次元モデルを起点にして確認申請に必要な図面及びIFCデータを作成、それらが定められた入出力基準に沿って作成された図書であることを※3)誓約書によって明確化する。併せて確認申請用CDEに申請に関わる図書を提出し、指摘事項の確認も同環境下で行っていく。このようにして申請図書の整合性を高め、誓約書及び確認申請用CDEを運用することによって、申請・審査における実務負担の軽減に貢献している。
建築モデル(意匠・構造)を起点とした整合性確保の考え方を整理している。建築モデル(意匠・構造)を整合性確保の起点と位置付け、どこまでをBIMで整合させるかの範囲を明確にした。意匠・構造については、統合BIMモデルで一元的に管理することによって図面間の整合性を確保しやすい運用としている。一方で設備については、建築モデル(意匠・構造)を参照(リンク)して作成することで、全体の整合性を確保すると共に、ヒューマンエラーの低減を図っている。これらの運用が「BIM図面審査」を前提とした申請図書の整合性向上の土台となる。
確認申請用CDEで図書管理・指摘対応を一元化していく。確認申請用CDEを活用し、設計者と各審査機関(特定行政庁・指定確認検査機関・構造適合性判定機関・省エネ適合性判定機関・消防)が同一環境で最新の申請図書を共有できる体制を整えた。コメントや指摘事項を一元管理することで、指摘内容の行き違いを防止し、設計者側でもマークアップや差分確認により修正点を把握しやすくしている。
誓約書作成を支える「合意形成会議」を開催し、参考図面作図上の工夫も行っている。「BIM図面審査」では、設計者が誓約書を正しく理解し、整合性確保の対象範囲を明確にした上で記載することが重要となる。一方で、通常の確認申請と比べて、事前確認や整理に一定の手間が生じる場合もある。そのため設計者及び社内関係者が協力して誓約書を作成する「合意形成会議」を開催し、整合性確認部位を事前に整理することによって提出資料の正確性を高めている。
構造図では、BIMの属性情報を色分けして出力する運用を行い、モデルから作成されていない2次元加筆部分は緑色で明示して区別している。設備図は、枚数が多く作業負担が大きいことから段階的な運用整備を進めている。加えて、各審査機関へのアップロード窓口を集約することによって指摘対応に伴う手戻りを削減し、確認申請業務全体の省力化に繋げている。
※3)誓約書: 設計者が入出力基準に従って入力・出力したことを申告する書類。


2029年「BIMデータ審査」への移行+将来的な制度動向やIFC活用の流れを見据え運用改善
今後については、DXを活用した申請体制の構築・運用によって図面間の整合確認や指摘対応に伴う手戻りの削減を推進していく。今回の取り組みでは、「BIM図面審査」制度に基づく確認申請を推進し、2026年度は10件以上の案件適用を目指す。2029年に予定されている「※4)BIMデータ審査」への移行など将来的な制度動向やIFC活用拡大の流れを見据え、運用改善に取り組んでいく。合わせて申請品質の向上と申請・審査業務の省力化を実現し、建築分野におけるDXを通じた生産性向上に貢献していく。
※4)BIMデータ審査: IFCデータ(建物3次元モデル)を審査対象とした建築確認審査制度。2029年春から開始予定。
建築確認における業務⽀援を⽬的とした業界特化型AIエージェントによるシステムを開発
ビューローベリタスジャパン(横浜市:代表取締役社長:外崎達人氏)とmign(渋谷区:代表者:對間昌宏氏)では、建築確認における業務⽀援を⽬的とした業界特化型AIエージェントによるシステムを共同開発し、実運⽤を開始した。次世代審査⽀援への取り組みは、⾼度な専⾨知識が求められる確認検査業務のコアプロセスに⾃律型AIを組み込むもので、国内で前例のない先進的な事例となる。
審査内容は、意匠、構造、設備に渡り、ビューローベリタスジャパンでは、審査全般をカバーするAIエージェントの開発とチューニングを進めている。

審査項⽬のチェックリストと膨⼤な申請図書のアップロードでAIエージェントが⾃律稼働
運用内容をみてみよう。当該システムは、単なるテキスト検索ツールではなく、図⾯(画像)とテキストを同時に解釈する⾃律型のAIエージェントとなっている。審査項⽬のチェックリストと膨⼤な申請図書をアップロードするとAIエージェントが⾃律的に、適合性の⼀次スクリーニング(YES ∕ NO判定)を行い、数百枚に及ぶチェック対象の図⾯からの該当ページを⾃動特定、対象となる該当箇所の図⾯ハイライト表⽰というタスクを実⾏・生成する。
これによって⼈間が⾒落としやすい微細な不備や複数図⾯をまたぐ整合性の不⼀致をAIが瞬時に抽出する。確認検査員は、AIが整理した⾼精度の補助情報を参照しながら審査を進めることが可能となる。ビューローベリタスジャパンのノウハウや判断⼿法を踏まえて、AIのチューニングやトレーニングを進めることによって90〜95%以上の回答精度を達成することも可能となっている。



膨⼤な情報処理+判断材料の整理+根拠の抽出をAIが担い最終的な専⾨的判断は⼈が行う
法的位置づけとAIエージェントの役割について検証する。建築確認における最終的な適合性判断は、建築基準法に基づき有資格者である確認検査員が必ず行う法定業務である。当該システムに搭載されたAIエージェントは、⼈間の審査を完全に代替するものではない。膨⼤な情報処理、判断材料の整理、根拠の抽出をAIが担い、最終的な専⾨的判断を⼈間が下すヒューマンインザループ(Human-inthe-Loop)の概念を体現している。これによって法令遵守を厳格に保ちながら業務の圧倒的な効率化を実現する。
豊富な検査実績のビューローベリタスジャパンと最先端の⽣成AI技術を有するmignが協業
建築業界では、建築物の⾼機能化・複雑化に伴う図⾯枚数の増⼤と法規制や検証項⽬の細分化という課題に直⾯している。特に建築確認においては、年々複雑化する法規制により必要とされる書類や図⾯枚数が増⼤し、図面間の不整合、審査の⼿戻りや遅延を引き起こすなど、確認検査員のみならず、申請者にも極めて⾼い負荷となっている。
グローバルで培った圧倒的な検査実績を持つビューローベリタスジャパンと最先端の⽣成AI技術を有するmignが協業し、これらの課題の解決に取り組んでいる。AIによる⾼度な図書・図⾯解析技術と⻑年蓄積されたプロフェッショナルな確認検査ノウハウを統合させることで建築業界の新たな指針(スタンダード)となるイノベーションを目指している。
今後の展開については、実運⽤拡⼤と共に、システムのブラッシュアップを図る。合わせて複雑な各⾃治体の条例の⾃動判定や次世代の建設DXの中核となるBIMデータとの直接連携など更なる機能拡張を視野に入れていく。
ビューローベリタスジャパンとmignは、⽇本発の取り組みを成功させ、mignと協業準備を進めている各国のグローバル拠点を通じて、将来的には世界中の審査スキームを変⾰する次世代ソリューションへの昇華を⾒据え、継続的な開発と実証を進めていく。