ホーム オリジナル記事 インタビュー 【BIMの日 独自取材①】BIMの祖型―CAD黎明期の試みに学ぶ | 建築情報学技術研究WG 種田 元晴氏(文化学園大学)

【BIMの日 独自取材①】BIMの祖型―CAD黎明期の試みに学ぶ | 建築情報学技術研究WG 種田 元晴氏(文化学園大学)

掲載日:2022年06月07日

2022年2月22日に行われた「BIMの日」にて独自取材を行いました。

「BIMの日」とは、BIM建築やそれを取り巻く業務に求められる価値を考えることで、BIM の位置付けを改めて見直し、今後の活用のヒントになるようなシンポジウムです。BIM活用の生の声を全8回の連載にてお届けします。

第1回は、 建築情報学技術研究WG幹事 種田 元晴氏のWG発表です。CAD黎明期を支えた先駆者へのインタビューを通じて、CADの歴史を紐解きます。

▼第二回以降の連載記事はこちら▼

第二回連載:コロナ禍で見えてきたキャンパスBIM-FMのためのIPD | IPDコラボレーション研究WG 飯島 憲一氏(大阪電気通信大学)
第三回連載:BIMと関連するデジタル情報の連携や活用事例の研究|情報連携技術WG 柴田 英昭氏(FMシステム)
第四回連載:建築性能の見える化によるSDGs 達成への貢献|林 立也氏(千葉大学)

初めに

BIMとCAD、コンピューターを建築に生かすという意味で両者には多くの共通点があります。CADは1960年代の登場以来、設計業務のコンピューター支援として進化してきました。2次元から3次元へ、インハウスCADから汎用CADへと変化し普及しました。

BIMは2000年代米国でのブームと普及を経て、日本にも導入されました。日本でのBIM元年といわれる2009年から10年以上経過した2022年現在、BIMの未来をCADの歴史から見通すというのが、本WGのテーマとなります。

具体的にはCAD黎明期を支えた先駆者へのインタビューを通じて、CADの歴史を紐解きます。WG幹事:種田氏の発表をレポートします。

過去のインタビュー概要 川崎清氏、山口重之氏など

本WGは2017年発足以来、13名の委員やオブザーバーで活動しています。設計実務者、CAD/BIM開発者、建築史家など様々な職種で構成されています。建築と情報を取り巻く未来を模索すべく、過去を振り返るというのが活動目的となります。

これまでCAD黎明期を知る7名にインタビューを実施しました。川崎清先生(1932-2018)を皮切りに”CAD5”シンポジウム(1991-92)のメンバーを中心に当時の話を聞いていきました。

川崎 清氏(1932-2018) 建築家・京都大学名誉教授

1970年万博美術館設計を担当。膨大な要求事項や異なる多数意見の統合にコンピューターの必需性を痛感。先立った1968年最高裁コンペでもコンピューターを用いて施設内の複雑な動線を処理した。1968~70年が日本のCAD誕生期と言える。研究室ではデザインとシステムの2チームに分けて切磋琢磨しながら設計活動を展開した。

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川崎先生はCADが表現ツール(図面を生産するツール)としては成熟したが、建築を生み出すアイデアを生成するツールとしては発展途上だと感じてらっしゃいました。このような問題点を1970年代ですでに明らかにされていることが興味深いと感じました。

山口 重之氏(1944-) 京都工芸繊維大学名誉教授

京大川崎研究室にて学ぶ。1970~80年代に米国留学し、コンピューターを活用した建築デザインに触れる。デザインの生産ではなく生成におけるコンピューターの活用性について研究。

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山口先生は川崎先生同様、デザインの生成にコンピューターがもっと活用できないという視点を持っていました。さらにコンピューターは建築完成後のファシリティマネジメント分野でより活用できるとも考えていました。CADを遠隔協同設計支援システムへシフトさせたことも大きな業績の一つだと言えます。

その他、山田 周平氏、両角 光男氏、位寄 和久氏、渡辺 仁史氏、加賀 有津子氏にもインタビューを実施しました。詳細はWEB『建築討論』(https://sengokenchikushi.medium.com/)にて順次公開予定です。

2021度の新たな成果 中元三郎氏へのインタビュー

これまでは研究者の方々へのインタビューが中心となっていました。2021年度は実務家の中元三郎氏にインタビューを実施しました。

中元 三郎

安井ファシリティーズ ビジネス推進本部ジェネラルマネージャー

(1968-2008 安井建築設計事務所)

入社間もない1970年代初頭から設備面でのコンピューター活用を現場で実践していた。1972年千日前デパート火災などを発端に見直された新しい排煙基準で新宿野村ビルの防災計画を担当。TOSBACでプログラムと格闘した。1978年竣工, 日本で最初の加圧排煙ビルとなった。

1980年代以降も逆日影による建築可能領域のプログラム作成やCADによる設計効率化を推進した。

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中元氏は上記以外にも関空のコンペ(1988)で4mの図面を描く必要があった際(当時4m製図板は主に自動車分野で利用され、建築分野にはなかった)、CADを導入されました。また、当初は専任オペレーターが担当していたCAD操作を設計者自身もパソコンで扱えるようにとAutoCADを1991年に導入しました。CADのDを「デザイン」から「ドラフティング」と捉え直し、設計、設備、FMなどの建築生産業務を効率化すツールとして活用されていました。

コンピューターの利用意義を生成よりも生産に重視したプローチは先述の先生方とは異なっていました。実務者ならではの視点とも言える一方、1970~80年の黎明期を経て、CADの意義がより生産・実務的なものに変化したとも言え、非常に興味深い話でした。

2000年代当時、CAFMにも着目していた中元氏はBIMの登場を目の当たりにし、これは究極のFMだと思い2007年にすぐ導入しました。CADで経験を積み上げてきた実務家がBIMにメリットを感じるというのはCADとBIMの歴史的連続性を感じさせ、印象的でした。

インタビューの一部はWEB『建築討論』などで公開

・建築と戦後70年 WEBサイト

https://sengokenchikushi.medium.com/

<建築討論での今後の公開予定記事>

2022年6月:両角光男氏インタビュー

2022年12月:渡辺仁史氏インタビュー

・建築情報学技術研究WG WEBサイト

https://kenchikujohogakuwg.blogspot.com/

第二回の記事はこちら

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