官庁営繕事業におけるBIMの活用

国土交通省の官庁営繕部では、「官庁営繕事業におけるBIMモデルの作成及び利用に関するガイドライン」(BIMガイドライン)を作成しています。BIMを導入したプロジェクトを通じて、設計業務及び工事における効果や課題について検証し、BIMモデル作成に関する基本的な考え方や留意事項を示しています。

それに伴い、官庁営繕事業でBIM導入プロジェクトが進められました。この記事では、それぞれのプロジェクトの概要や特徴をまとめていきます。

事例①新宿労働総合庁舎

https://www.mlit.go.jp/gobuild/gobuild_tk6_000096.html

官庁営繕事業でBIMを導入した最初の事例です。設計の初期段階からBIMを活用しています。

概要

所在地  : 東京都新宿区
構造規模  : 鉄筋コンクリート造地上6階地下1階
延べ面積  : 約3,500㎡
設計期間  : 平成22年10月~24年3月
工事期間  : 平成23年12月~25年7月

BIM活用の効果

基本設計方針の策定段階

法規制の可視化、建物ボリュームの検討
ゾーニング計画の検討

BIMを用いて建物ボリュームやゾーニング計画を検討しました。可視化情報を用いることで、関係者間での迅速な意思決定に役立っています。

基本設計段階

自然採光シミュレーション
自然換気シミュレーション
  • 自然採光を執務室内へ取り込むためのライトシェルフの採用可否については、シミュレーション結果から効果が少ないことを確認し、設置を取止めました。
  • 自然換気について、当初は取り入れを南側窓のみとしていましたが、シミュレーション結果から、西面窓からも自然換気を取り入れることにしました。

実施設計段階


BIMモデルからの書き出し(外装)
BIMモデルからの書き出し(階段室内装)

内外装の色彩計画やサイン計画について、BIMにより可視化することで、関係者間での情報共有に活用しました。

施工段階

施工段階での干渉チェック
  • 設計業務で作成したBIMモデルも活用し、基準階天井内等において干渉チェックを行いました。
  • 給水管のバルブの位置をより操作しやすい場所に変更しました。BIMによる可視化情報が、メンテナンス性の向上の検討にも役立ちました。
  • 建物の維持管理のための資料である「建築物等の利用に関する説明書」の作成にあたり、BIMモデルを利用しました。

事例②静岡地方法務局藤枝出張所

https://www.mlit.go.jp/gobuild/gobuild_tk6_000098.html

中部地方整備局では、住宅地に建設される静岡地方法務局藤枝出張所においてBIMの導入を試行し、その効果等を検証しました。

概要

所在地  : 静岡県藤枝市
構造規模  : 鉄筋コンクリート造地上3階
延べ面積  : 約3,000㎡
設計期間  : 平成24年1月~24年10月
工事期間  : 平成25年6月~26年3月

BIM活用の効果

基本設計方針の策定段階

日影シミュレーション
ゾーニング計画の検討

BIMを用いて近隣住宅への日影やゾーニング計画を検討しました。可視化情報を用いることで、関係者間での意思決定に活用しました。

基本設計段階

事務室内内観と日照シミュレーション
エントランスホールの日照シミュレーション

BIMを用いて事務室やエントランスホールへの日照の様子を可視化し、窓の形状やルーバーの形状の決定に活用しました。

実施設計段階

勾配屋根の詳細モデル

木製ルーバーとキャットウォークの詳細モデル

金属屋根軒先や内外装の木製ルーバーの納まりを検討するにあたって、詳細なBIMモデルを打合せ時に利用することで、関係者間での情報共有に活用しました。

施工段階

外部仮設足場モデル
  • BIMにより外部仮設足場を可視化し、作業員への安全教育に活用しました。
  • 床の仕上げを色分けした平面図を作成し、床の仕様に関する資料と併せて作業員に配布することで、施工範囲等の把握に活用しました。

事例③前橋地方合同庁舎

https://www.mlit.go.jp/gobuild/gobuild_tk6_000099.html

前橋地方合同庁舎は、BIMの導入を試行したプロジェクトのうち最も規模の大きい庁舎で、9官署が入居しています。

概要

所在地  : 群馬県前橋市
構造規模  : 鉄骨造地上11階地下1階
延べ面積  : 約17,000㎡
設計期間  : 平成24年1月~25年3月
工事期間  : 平成25年2月~27年5月

BIM活用の効果

基本設計方針の策定段階

景観シミュレーション
風環境シミュレーション
景観、風環境の比較検討
ゾーニング計画の検討
  • 設計の初期段階において景観や風環境シミュレーションを行うことで、建物の配置及び形状、周辺の景観への影響等について、関係者間での情報共有に活用しました。
  • ゾーニング計画をBIMを用いて検討することで、同時に複数の案の比較が可能となり、壁位置が変更となった場合でも、各官署の面積も連動して修正することができます。

基本設計段階

外装の可視化と採光等シミュレーション

外装計画について、開口の形状の違いによるファサード部分の可視化と併せて、採光及び熱環境に関するシミュレーションを行って比較検討することで、適切な採光の取り入れ、PAL値の低減を図れる計画の決定に活用しました。

実施設計段階

電気設備BIMモデル
設計段階における干渉チェック

本試行では、構造図、電気設備、機械設備の各分野の実施設計図の一部について、BIMモデルを用いて作成しました。また、天井内等の納まりについて特に確認が必要と思われる部分について、干渉チェックを行いました。

施工段階

掘削工事
低層部 鉄骨工事
高層部 鉄骨工事
完成

施工段階の試行では、工事着手から完成まで、工事全体の流れについてシミュレーションを行い、工事の進捗に合わせた重機や工事車両などの配置検討に活用しました。また、見学者や近隣住民等への説明資料としても活用しました。

まとめ

新宿労働総合庁舎は、官庁営繕事業でBIMを導入した最初の事例でした。採光や換気シミュレ―ションの結果を設計に生かすなど、主に設計段階でBIMを活用しています。

その次に行われた静岡地方法務局藤枝出張所は、地上3階建ての比較的小規模なプロジェクトです。日照シミュレーションを行い、窓やルーバーの形状決定に活用しています。また詳細なBIMモデルを利用することで、関係者間の情報共有に生かしています。

前者2例とは違い、前橋地方合同庁舎は地上11階・地下1階という大規模な建築物となります。基本設計段階では、BIMを活用することで同時に複数の案を比較しながら計画しているのが特徴です。また施工段階では、重機や工事車両の配置検討にもBIMを活用しています。

BIMの活用で、どんな規模のプロジェクトもスムーズに行えるようになります。ただし建築物が大規模になるほど扱う情報の量も多くなるため、BIMによる業務効率化の効果も大きいと言えるでしょう。

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