鉄建建設、遮音検討を効率化・最適化するBIMソフト「Revit」のアドインツールを開発|深堀り取材【毎月更新】
建築BIM加速化事業にともない、BIMやDX化への注目および実施速度が本格化しています。第28回は、鉄建建設によるRevitアドインツールの開発に迫ります。
目次
遮音検討を効率化・最適化するBIMソフト「Revit」のアドインツールを開発
鉄建建設では、集合住宅やホテルなど、高い居住性を求められる建築物の設計において、室内の静ひつ性を確保するために行われる遮音検討業務の効率化、最適化の実現に向けて、建物の外周壁に含まれる窓や換気口などの開口部の遮音仕様を検討するBIMソフト「Revit」のアドインツールを開発した。
アドインツールの予測計算精度は、従来の表計算ソフトによる場合と同等であることに加えて、予測検討に要する作業時間は、従来に比べて1/10以上短縮され、業務の効率化が図れることを確認している。
BIMモデル+音源の位置・音の大きさ情報によってBIMソフト上で遮音仕様の検討を実行
集合住宅やホテルの設計においては、室内の静ひつ性を確保するために、一般的に仕様書などで外部騒音が室内に透過して生じる騒音の目標値が規定されることから、基本計画時に敷地周辺の外部騒音を調査し、室内で生じる騒音の目標値を満足する外周壁並びに外周壁開口部の遮音仕様の検討を実施する。
従来まで、これらの検討は、規定の数式に従いパソコンの表計算ソフトを用いて行っていたが、寸法や面積など計算に必要な情報を図面から読み取るのに時間を要し、担当の技術者不足などに対する課題も顕在化していた。
アドインツールの導入によってBIMモデルと音源の位置、音源の音の大きさに関する情報があれば、BIMソフト上で建物外周壁開口部の遮音仕様の検討を行える。加えてアドインツールでは、外周壁開口部の遮音仕様の検討時に実施する室内騒音の予測計算に必要な情報を計算条件設定時に、BIMモデルから自動的に取得するようにシステム化している。これによって、業務上の課題であった図面からの情報の読み取りなどを簡略化し、作業時間の短縮と業務の効率化を実現している。
表計算ソフトを用いて図面を参照して机上で行っていた予測計算をBIMソフト上で連携実行
計算のフローチャートで図示したように、アドインツールでは、BIMモデル内への音源パーツ・測定点パーツの配置から、予測対象室の指定及び用途の指定、予測対象室外周壁開口部の遮音仕様の設定、室内騒音レベル目標値の設定、予測計算の実行、計算結果の判定までをシステム化し、表計算ソフトを用いて図面を参照して机上で行っていた予測計算をBIMソフト上で連携して行うこととしている。
BIMモデルからは建物を構成する各パーツの寸法や面積などの情報を取得して計算に援用
音計算コマンドと検討モデルの例において明示したように、アドインツールによる室内発生騒音の予測計算では、BIMモデルから建物を構成する各パーツの寸法や面積などの情報を取得すると共に、音源の音の大きさを推定するために、音源の位置情報とあらかじめ計測した任意の測定点における音の大きさとその測定点の位置情報を入力する。その際に、音源パーツと測定点パーツを設置するコマンドを用意し、それぞれデータを入力してこれらのパーツをBIMモデルに配置することによって予測計算に必要な全ての情報をBIMソフト上で取得できるようにしている。
計算結果は、計算値が目標値を満足する場合にはダイアログの計算値欄にセルの背景を「白」にして表示され、目標値を超過する場合にはセルの背景を「赤」にして表示される。合わせて計算結果は、エクセルファイルとして保存できるので、計算過程の一覧を表として提示することも可能だ。このようにして室内騒音の予測計算は目標値を満足する外周壁開口部の遮音仕様が定まるまで繰り返し実施される。
参考資料「BIMの目的を明確にし、確実に成果を出すROIを最大化した鉄建建設のBIM活用」
鉄建建設は 2015年にオートデスクの BIM(ビルディング・インフォメーション・モデリング)ソフトを導入し、ホテル建設や駅改良工事の施工段階で積極的に活用。スムーズな合意形成や施工現場での手戻り防止成果を上げ、ムダのないBIM活用で ROI(費用対効果)を最大化している。確実に成果を出せる秘密は、後発企業ならではの目的を明確にしたBIM活用にあった。
出典: オートデスクユーザー事例
https://bim-design.com/uploads/Tekken-Kensetsu-CaseStudy-A4-ja_Low-rez.pdf