2025年問題対策としての建機遠隔操縦システム運用|深堀り取材【毎月更新】

建築BIM加速化事業にともない、BIMやDX化への注目および実施速度が本格化しています。第23回は、「2025年問題対策としての建機遠隔操縦システム運用」について解説します。

65歳以上の熟練労働者が定年を迎える2025年問題対策としての建設機械の遠隔無人運用

2025年問題。日本建設業連合会のホームページによると、建設業就業者は、2022年には55歳以上が約36%、29歳以下が約12%となり、全産業と比べて高齢化が急速に進行している。2022年時点で62歳以上の者も2025年には定年となり、一斉に退職すれば、2025年以降、かなりの建設業者が極度の人手不足に追い込まれる可能性がある。

なかでも生産拠点である施工現場での人手不足対策は待ったなしである。BIMの普及が進む中で、施工BIMに代表される施工現場のデジタル運用も生産性向上に貢献しているが、更に対策を進めるべく、建設機械の無人運用、遠隔操縦などに期待が集まっている。

建設業就業者の高齢化の進行(出典:日本建設業連合会ホームページ)

建機遠隔操縦システムと通信環境を組み合わせた遠隔操縦・自動化ソリューションを提供

NTTコミュニケーションズでは、ARAV(文京区)が手掛ける建機遠隔操縦システム「Model V」と通信環境の構築などを組み合わせた遠隔操縦・自動化ソリューションの提供を開始した。これによって様々なメーカーの建設機械に対して後付で本ソリューションを実装することができ、遠隔操縦や自動化を実現する。 

最新の通信ソリューションとして注目の「Starlink Business」※を通信回線として利用できるため、山間部や災害地域などの通信環境構築が困難な場所における現場作業の遠隔操縦と自動化も実現する。

※Starlink Business:NTTドコモが提供元となり、NTTコミュニケーションズが代理人として契約締結権限を授与され、包括的な業務受託に基づき販売している。

遠隔操縦や自動化を実現するアタッチメント「Model V」と必要な通信環境を組み合わせて提供

「Model V」は、ネットワークを介して本社・支店事務所などの遠隔操作席から制御信号を送り、建設機械を遠隔操縦する建機用アタッチメントとして機能する。建設機械の遠隔操縦や自動化においては、通信環境構築・映像伝送・クラウドカメラ・位置情報取得といった周辺設備が必要となるが、NTTコミュニケーションズでは、それらの周辺設備を含めて一括提供する。

 後付けでアタッチメントを実装することで、事前にプログラムされた移動ルートや作業内容を建設機械が自動的に実行する遠隔操縦が可能となる。様々なメーカー・機種に対応しており、特殊車両も含めた対応も可能だ。

遠隔操縦と同一のアタッチメントによって遠隔操縦だけでなく、自動化への発展的活用も実現できる。自動化ソリューションは、初めから導入することもでき、操縦席側の操作方法・操作デバイスや建機側で活用する機能、遠隔・自動制御に係る設定などは、ユーザーの要望に合わせてカスタマイズが可能となっている。

本ソリューションの構成内容
Model Vの特長

衛星インターネット「Starlink」+Wi-Fi・映像伝送ソリューションの組み合わせ利用が可能

遠隔操縦の通信においては、5Gや固定回線に加えて「Starlink Business」を利用する。「Starlink」は、米国スペースX社が運営する衛星インターネットアクセスサービスで、地球上のほぼ全域でのインターネットアクセスを可能にする。

メッシュWi-Fiソリューション「PicoCELA」※2、映像伝送ソリューション「Zao-SDK」※3と組み合わせて利用することによって現場全体の通信エリア化や映像伝送の低遅延化も同時に実現し、快適な遠隔操作環境を構築できる。

※2 PicoCELA:PicoCELA(中央区)が開発・提供するWi-Fiアクセスポイント製品。PicoCELAの技術である減衰量を軽減するマルチホップ伝送を活かすことで、各アクセスポイント間のネットワーク接続の無線化を行い、LAN配線敷設コストと工事時間を極小化して容易なWi-Fiエリアの構築が可能となる。

※3 Zao-SDK:ソリトンシステムズ(新宿区)が開発・提供する映像伝送システム「Smart-telecaster」の最新モデル。モバイル回線を使用し、独自の回線冗長機能により途切れず超短遅延で映像伝送できる機能に、制御信号の伝送機能を追加、小型のシングルボードコンピューターでの稼働を実現したもの。

「Starlink Business」を活用した建機の遠隔操縦

建機の遠隔操縦や自動化の需要を喚起・顕在化して現場におけるDX推進をより一層支援

人手不足の解消や安全対策の目的で建設機械の遠隔操縦や自動化が注目されているが、実際に現場に導入しようとすると、高機能な建設機械の新規購入や通信環境構築が障壁となっていた。それらの導入障壁を取り除くべく、後付けアタッチメント方式で様々なメーカーの建設機械を手軽に自動化できる「Model V」に着目し、通信環境構築を含めた包括ソリューションを提供する。これによって建設機械の遠隔操縦や自動化の需要を更に喚起、顕在化し、施工現場におけるDX推進をより一層支援していく。

 今後は、建設機械の遠隔操縦と自動化の導入が困難であった現場だけでなく、全国の建設現場に対して本ソリューションの導入を拡大し、課題を解決していく。加えて現場ごとの課題に合わせた「Model V」のカスタマイズや現場運用の最適化・高度化も実現していく。