タワークレーンに革命?遠隔操作の実施によるメリットを解説

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著者:鈴原 千景

タワークレーンは、大規模な建設工事で使用されるクレーンです。とくに高層ビルなどでは必須であるものの、オペレーターの負担が高い業務の1つでもあります。たとえば、1日座りっぱなしになる点や移動だけで数十分かかる点などは、生産性や業務効率が高いとは言い難いでしょう。

しかし、タワークレーンを地上から操作できる遠隔操作が大手企業で実施され始めており、これまでの業務内容が大きく変化する可能性も想定されます。

今回は、トレンドワードとして「タワークレーン遠隔操作」について詳しくみていきましょう。

トレンドワード:「タワークレーン遠隔操作」

タワークレーンの遠隔操作とは、タワークレーンの操作を地上から可能にするシステムを意味するシステムを意味します。クレーンに設置したカメラの映像や計器の情報から、システムを動かすことができ、鹿島建設竹中工務店清水建設などがこれまでに共同で開発を進めていました。

タワークレーンに関しては、もともと次のような特徴がある点も知っておきましょう。

  • 「クレーン運転士免許」と「玉掛け技能講習」の2つ免許が必要となり、とくにクレーン免許に関しては学科と実技に合格する必要がある
  • 大規模な建設現場では使用する率が高いが、所有者は少ない
  • オペレーターの負担が高い

運転席に座るだけでも30分ほどの移動時間がかかるケースも多く、オペレーターに負担がかかる割には、「生産性は高いとはいえない」状態が長年続いていました。しかし、遠隔操作を可能にすることで、次のような項目の実現が可能となっています。

  • 業務負担の軽減(一日中座りっぱなしを防げる)
  • 生産性の向上(複数台のタワークレーン操作、地上からの操作による移動時間の削減)
  • 人材育成の指導

現状では、使用している企業は限られているものの、今後多くの企業で実用化される可能性もあるでしょう。

タワークレーンを遠隔操作するメリット

ここでは、タワークレーンを遠隔操作するメリットについてみていきます。とくに、タワークレーンの操作に関しては、コミュニケーションや集中力が必要とされる点は変わらないものの、地上から操作できるため、よりスムーズな施工に期待できるでしょう。

オペレーターの負担軽減

タワークレーンを遠隔操作する場合、地上からになるため、体力や年齢を問わず作業が可能となります。そのため、高齢の作業者や女性であっても作業の実施ができると想定されます。

生産性の向上

タワークレーンの作業の実施には、これまで30分ほどかけて登る・降りるといった移動時間が必要でした。しかし、遠隔操作が可能な場合は、移動時間を考慮する必要がなく、複数台のタワークレーンを一人で操作することも可能です。

とくに、大規模なビルの建設や商業施設などであれば、複数台タワークレーンを使用するケースも多いでしょう。そういった場合でも遠隔操作によって、適正な人材配置も実現できるため、施行管理者だけでなく、タワークレーンを扱う事業者の負担も軽減可能です。

人材育成

タワークレーンの操作には、資格と人材が持つ操作スキルが必要です。そのため、熟練者と初心者では、作業のスピードや効率性が異なるケースも少なくありません。そのうえで、遠隔操作であれば、一人の指導者が複数のオペレーターの作業内容を確認・指導するといった技術の向上も期待できます。

とくに、「人材育成の方法に悩んでいる」「口頭で言っても伝わらない」場合には、遠隔操作システムが役立つでしょう。たとえば、遠隔地にオペレーターが集まれるセンターなどの拠点を作ったうえで、各地の工事現場の施工を進めたり、必要であれば熟練者に質問を行うといった体制作りも可能です。

タワークレーンの遠隔操作は今後の建設業に浸透するか

ここでは、タワークレーンの遠隔操作が建設業界に浸透していくかどうかについて、みていきましょう。現状では、タワークレーンの遠隔操作は大企業のみが実施しており、設備や専門の知識を持つ人材が必須となる点から中小企業に広がるまでには時間を要すると予想されます。

しかし、今後AIIoT技術が業界として、取り入れられていく場合には、中小企業も取り入れていく必要があるといえます。

人材育成と負担軽減は業界に必要な要素

建設業の人材不足は、今後加速していくと考えられます。日本全体の労働人口が低下しているだけでなく、負担が高い業務を避ける傾向にあるためです。また、スキルを保有する人材が若手にスキルを教える前に退職を余儀なくされるケースも増加する可能性があります。

そのため、タワークレーンの遠隔操作も含めた最新技術を取り入れ、人材の負担を軽減しながら、業界を担う存在を育てていく動きが企業として必要な状況にあるといえます。また、タワークレーンを扱う事業者であれば、遠隔操作を取り入れることによって、自社のブランディングや生産性の向上にも期待できるでしょう。

重機操作も含めて効率化に期待できる

タワークレーンに関しては、遠隔操作に加え、精度や作業効率を上昇させるといったシステムが実用化されつつあります。つまり、これまで人力に頼っていた安全確保、確認などはシステムの導入によって効率化できるといえます。

人間が気付かなかったリスクをAIが警告してくれるといった作業の補助にも期待できるでしょう。

まとめ

タワークレーンの遠隔操作とは、タワークレーンの操作を地上から可能にするシステムを意味するシステムを意味します。遠隔地からのタワークレーンの操作が可能となるため、作業効率化や生産性の向上に期待できるシステムだといえるでしょう。

タワークレーンの操作は、スキルが必要となるものの、遠隔操作では熟練者が指導・確認できるため、これまで以上に人材育成がしやすくなると予想されます。現状では、タワークレーンの遠隔操作は大手企業が実証実験を行っている段階であり、本格的に業界に普及するまでには時間が掛かるでしょう。

しかし、生産性の向上や働き手の減少もふまえたうえで、タワークレーンの遠隔操作は注目度の高い技術であるため、今後も動向に注目していくことが大切です。