BIMの歴史|海外と日本での流れを解説

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BIMの歴史」についてピックアップします。国土交通省では「建築BIM加速化事業」を実施し、普及を進めています。本記事では海外で誕生したBIMがどのように進化していったのか、日本での取組も取り上げつつご紹介していきます。

BIMとは

出典:国土交通省ウェブサイト(https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/build/content/001716005.pdf

BIM(ビルディング・インフォメーション・モデリング)とは、「建物情報モデル」を構築するシステムのことを指します。

従来の3DCADでは、3次元の形状情報のみで設計を行っていました。しかしBIMでは室等の名称・面積、材料・部材の仕様・性能、仕上げ…といった「建物の属性情報」も付加できるという違いがあります。

複合的な情報が一括管理できることで、建築設計だけでなく設備設計や維持管理といった幅広い場面で活用できるのが特徴です。

BIMの歴史

ここでは、世界のBIMの歴史について各年代別にご紹介します。

1960~1970年代

元々建築設計は、紙の図面上に手書きで行われるものでした。しかし1960年代にコンピューターが普及し始めると、デジタル建築モデルのニーズも徐々に認識されるようになりました。

そして1963年にI.サザランドがSketchpadを開発したことが、大きな転機となりました。ジオメトリをデジタルで定義できる他、空間内のオブジェクトを画面上で直感的に操作できるようになったのです。

ただしデジタル空間で設計が可能になったのは大きな進歩でしたが、機能面でのデータ連携については考慮されていませんでした。建物がどのように機能するかに関する情報は備わっていなかったため、まだ表面的なモデルに留まっていました。

1980年代

1984年に、PCでBIMプログラムが使用できるようになりました。そして、1986年に「ビルディング・モデリング」という呼び名が誕生しています。

初期のBIMは、ヒースロー空港ターミナルの改修など、大規模で複雑なプロジェクトに活用されました。

1990年代

1993年に、ローレンス・バークレー国立研究所が「Building Design Advisor」を開発しました。これには、性能データや建物や設備を付加できる機能が備わっているのが特徴です。

そして90年代後半~2000年代初頭にかけて、現在のBIMに繋がる枠組みが形成されました。オブジェクトや形状にはメタデータが完全に埋め込まれており、図形との相互関係や建物全体の関係を把握できるようになったのです。

2000年代

2004年には、設計者、施工者、エンジニア、オーナーといった各プレイヤーがBIM上で共同作業できるようになりました。具体的には、設計者がモデルに変更を加えると、窓の数やサイズなど、プロジェクトの調達リストも自動的に変更されるのです。

アメリカでは、2007年から工事発注仕様書において3次元CADデータでの施設情報納品が義務付けられました。これにより、BIMが一気に普及したのです。

そして2008年には、パラメトリックモデリングも一歩前進しました。複雑な形状の建築物では設計資料も膨大になりがちですが、BIMの導入で設計業務の効率化が実現しています。

さらにレーザースキャニングやリアリティキャプチャといった新技術により、詳細な情報を付加できるようになりました。現場での配管や梁といった干渉を自動的に検出することで、コストのかかる変更を回避できます。

将来的にはBIMとGIS(地理情報システム)が統合されることで、地理的情報も付加した設計が可能になると考えられています。

日本でのBIMの歴史

ここでは、日本でのBIMの歴史についてご紹介します。主に国土交通省が主導する形で、BIMの導入が推進されています。

2000~2010年代

2009年|BIM元年

2007年頃に、アメリカからBIMの考え方が輸入されました。それを受けて2009年にBIM導入のムーブメントが起こり、この動きは「BIM元年」と呼ばれています。

2010年|国土交通省、BIM導入プロジェクトの開始

出典:国土交通省ウェブサイト(https://www.mlit.go.jp/report/press/eizen04_hh_000003.html

2010年には、国土交通省が「官庁営繕事業におけるBIM導入プロジェクトの開始」を宣言しました。2010年度の工事では、主に基本設計段階でBIMを用いた設計を試行しています。

2014年|国土交通省、BIM活用ガイドラインを発表

出典:国土交通省ウェブサイト(https://www.mlit.go.jp/gobuild/content/001733648.pdf

2014年には、「官庁営繕事業における BIM 活用ガイドライン」が発表されました。設計業務や工事の品質確保を図り、生産性の向上に繋げることを目的として います。

また、設計・施工段階で作成したBIM データが、維持管理段階でも活用できるように知見の蓄積を図る狙いもあります。このガイドラインは定期的に改訂されており、2024年3月には「BIM活用例」の項目が拡充されています。

2019年|建築BIM推進会議の設置

出典:国土交通省ウェブサイト(https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/build/jutakukentiku_house_tk_000181.html

国土交通省は、2019年に「建築BIM推進会議」を設置しました。これは官民が一体となってBIMの活用を推進し、建築物の生産プロセスや維持管理における生産性向上を図ることを目的とした組織です。

会議では、各分野で進んでいる検討状況の共有や、BIMによる生産・維持管理プロセス、BIMのもたらす周辺環境の将来像の提示等が議論されています。さらに将来像に向けた官民の役割分担・工程表(ロードマップ)を作成することで、BIM普及の道筋を示しています。

建築BIM推進会議について詳しくは、下記記事をご覧ください。

2020年代

2023年|建築BIM加速化事業

出典:国土交通省ウェブサイト(https://r5-6bim-shien.jp/

国土交通省は、2023年から「建築BIM加速化事業」を開始しました。これは複数の事業者が連携して建築BIMデータの作成等を行う場合に、設計費・建設工事費に対して補助金を交付する制度です。

BIMは大手ゼネコン等では比較的活用されていますが、中小事業者ではまだ広がっていないのが現状です。そのため建築BIMの社会実装の更なる加速化により、官民連携のDX投資を推進する環境整備を図るという狙いがあります。

本事業は、2024年度も引き続き継続される予定です。前年よりも制度を拡充するため、何点か要件が緩和されています。具体的には、⾯積要件・階数要件が廃⽌されたことで規模によらず補助⾦の活⽤が可能になりました。

建築BIM加速化事業について詳しくは、下記記事をご覧ください。

まとめ

BIMに繋がる技術は1960年代に誕生しており、現在ではデジタル設計だけでなく属性情報も付加できるように進化してきました。日本ではまだ広く普及しているとは言えませんが「建築BIM加速化事業」といった取組により、業界全体への広がりが期待されています。