ASP(情報共有システム)とは|国交省の取組やおすすめツール

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著者:小日向

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「ASP(情報共有システム)」についてピックアップします。国交省では「i-Construction 2.0」が策定されていますが、その中でASPの活用が目標に掲げられています。本記事ではASPの機能やメリット、具体的な種類をまとめてご紹介しています。

ASP(情報共有システム)とは

https://www.ktr.mlit.go.jp/ktr_content/content/000853347.pdf

ASP(情報共有システム)とは、工程管理、工事書類管理などの機能を備えたオンラインサービスのことを指します。受発注者間でのやり取りが簡略化することで、生産性向上に貢献します。

従来までは受発注者間で資料のやり取りが発生していたため、余計な手間が掛かっていました。資料の行き違いやデータ容量制限といったトラブルが起こると、業務の妨げになるのがデメリットです。しかしASPを導入することで情報共有がスムーズになるため、業務効率化につながります。

ASP(情報共有システム)の主な機能

ASPの主な機能としては、主に下記の項目が挙げられます。

  • 決裁処理機能
  • 掲示板機能
  • スケジュール管理機能
  • BIM/CIM活用(3Dビュー機能)
  • 書類管理機能

Webを介して決裁を行うことで、スピーディーに処理ができます。また決裁状況の見える化も図れるため、トラブル防止にも役立つのがメリットです。

さらに掲示板やスケジュール管理機能を使えば、質疑のやり取りや変更箇所などの過程を記録でき、状況確認がスムーズになります。検尺の立ち合いや打合せといった複数業務のスケジュールを管理できることで、日程調整などの効率化にも繋がります。

そして3Dビュー機能では、BIM/CIMデータをweb上で表示しながら打合せができます。変更事項を適宜反映できるため、BIM/CIMの利用がより便利になります。

ASP(情報共有システム)のメリット

ASPの主なメリットとしては、下記の点が挙げられます。

業務効率化に繋がる

ASPを利用することで、受注業者の書類作成業務が軽減できます。自社でシステムを構築・維持する必要がなく、ASPを利用するだけで即座にシステムを活用できるのもメリットです。これにより、業務改善や新しいシステム導入が迅速に行えます。

特に書類作成業務については、工事帳票等の書類をクラウド上で一元管理できるため便利です。クラウド上で大容量データのやり取りが可能で、必要な時にすぐ閲覧可能になります。

コミュニケーションが円滑になる

ASPでは、質問事項等のやり取りができる掲示板機能が使えます。これにより情報共有がしやすくなり、行き違いのリスクが減らせます。

また資料をメール送信する必要が無くなるため、誤送信防止にも役立つのがメリットです。工事監督支援業務、調査設計資料作成業務といった細かいやり取りに関しても、提出書類をまとめて管理できます。

オンライン電子納品に役立つ

出典:国土交通省ウェブサイト(https://www.ktr.mlit.go.jp/ktr_content/content/000853347.pdf

オンライン電子納品とは、情報共有システム上の電子成果品(打合せ簿、報告書、図面等)を、インターネットを介して納品することを指します。

これまでの電子データ納品では、CD-R等の記録媒体を用いるのが慣例となっていました。しかしオンライン電子納品ではインターネットを介して納品するため、業務効率化が期待されています。

ASPで決裁した書類を電子納品することで、業務軽減に繋がります。「電子納品」について詳しくは、下記記事をご覧ください。

ASPが注目されている背景

ここでは、ASPへの注目が高まっている背景についてご紹介します。

生産性向上の必要性

出典:国土交通省ウェブサイト(https://www.mlit.go.jp/tec/constplan/content/001738240.pdf

日本では少子高齢化が進んでおり、生産年齢人口の減少が課題となっています。またそれだけでなく災害の激甚化・頻発化が進んでおり、将来に渡る社会資本の整備・維持管理の必要性が高まっています。

建設業が社会的使命を果たし続けていくためには、施工能力の確保が不可欠です。そのため 建設現場のオートメーション化を進め、生産性を向上することが求められています。

建設現場で働く一人ひとりの生産量や付加価値を向上し、国民生活や経済活動の基盤となるインフラを守り続ける必要があります。

国土交通省、「i-Construction2.0」を策定

出典:国土交通省ウェブサイト(https://www.mlit.go.jp/tec/constplan/content/001738240.pdf

国土交通省では、2024年4月に「i-Construction 2.0」を策定しました。元々2016年度に開始されていた取り組みでしたが、今回の「2.0」では2040年度までに建設現場の省人化を3割・生産性を1.5倍向上することを目標にバージョンアップされています。

従来の「i-Construction」について詳しくは、下記記事をご覧ください。

出典:国土交通省ウェブサイト(https://www.mlit.go.jp/tec/constplan/content/001738240.pdf

「2.0」では「施工のオートメーション化・データ連携のオートメーション化・施工管理のオートメーション化」が新たな3本の柱となっています。

ASPの拡充を検討

出典:国土交通省ウェブサイト(https://www.mlit.go.jp/tec/constplan/content/001738240.pdf

「i-Construction 2.0」の中で、ASPは「データ連携のオートメーション化」に含まれています。ASPを用いることで、データ活用による書類の削減が期待されています。

具体的には、施工管理関連情報(工程、出来形・品質、図面、写真等)のデータアクセス、管理の効率化などの各情報の活用を図ります。今後プロジェクトチームが立ち上げられ、ASPの拡充検討を推進する予定です。

おすすめのASP|種類を比較

ここでは、公共工事でも採用されている主なASPの種類をご紹介します。

①情報共有システム|アイサス

https://www.i-sus.com

アイサスの「情報共有システム」は、工事に関わる書類やデータをインターネット経由でやりとりできるサービスです。現場業務経験者が設計に関わっており、他社にはない実用的な独自機能を持つのが特徴となっています。基本的な機能は、下記の通りです。

  • 書類の提出・確認・決裁
  • スケジュール管理
  • 書類の一元管理
  • 情報共有・事前協議
  • 掲示板
  • 電子成果品・電子検査データ

特に自治体での採用事例が多く、57,000件以上の利用実績があります(2022年度末時点)。市町での利用実績が多数あることで、導入のハードルが低く安心です。

②KOLC+|コルク

https://kolcx.com

「KOLC+」は、「BIM/CIM共有クラウド」としてBIM/CIMモデルや点群データをクラウド上で統合・共有・活用できます。国土交通省の情報共有システム(ASP)としても利用実績があり、幅広く使えるのがメリットです。基本的な機能は、下記の通りです。

  • 統合アプリ
  • BIM4Dダッシュボード
  • 4D工程表
  • Navisworks
  • クラウド連携
  • BIM野帳(3Dビューア)
  • 点群ビューア
  • 2Dマップ連携
  • 帳票作成・決裁(ワークフロー)
  • オンライン
  • 電子納品
  • ファイル共有
  • メッセージ
  • WEB会議(遠隔臨場
  • 日程調整ツール

③basepage|川田テクノシステム

https://www.kts.co.jp/service/product/basepage

「basepage」は、受発注者間で情報を共有できるクラウドサービスです。インターネットを利用して、高セキュリティデータセンターに情報を保管します。

国交省の定める工事・業務における情報共有システム機能要件を満たしており、数多くの実績があります。BIM/CIM対応をはじめとする各種コンテンツや、防災や維持点検、調査設計業務等、「工事情報共有」以外にも幅広く対応しているのが特徴です。

基本的な機能は、下記の通りです。

  • 工事情報共有
  • 業務情報共有
  • Web会議
  • オンライン電子納品
  • miRU360
  • VR/MR出力
  • BIM/CIMデータ共有
  • GIS

④CIMPHONY Plus|福井コンピュータ

https://const.fukuicompu.co.jp/products/cimphonyplus

「CIMPHONY Plus」は、建設業向けクラウドサービスです。3次元点群の現況データや3次元モデルの計画データを元に、進捗確認や分析・リスク検討、遠隔臨場・協議等ができます。基本的な機能は、下記の通りです。

  • 3次元地図上での現場共有
  • 撮影日時と位置情報で写真共有
  • 3次元データ共有
  • 遠隔臨場・VR・AR活用

まとめ

国土交通省では「i-Construction 2.0」を策定し、2040年度までに省人化・生産性向上の実現を目指しています。ASP(情報共有システム)を用いることで、業務効率化やコミュニケーションの改善が期待されます。今後、幅広い現場で採用されるか注目です。