【独自調査】生産性向上の遅れは「施工・専門工事」が最多|芝浦工業大学 志手先生の調査に関するコメントも掲載
BuildAppで建設DXに取り組む野原グループ株式会社(本社:東京都新宿区、代表取締役社長:野原弘輔)は、「建設DXで、社会を変えていく」情報メディア「BuildApp News(ビルドアップニュース)」が2024年1月に実施した「建設業界従事者1,000人への独自調査」から、「デジタル化による生産性向上の実態」について結果を発表します。
政府は、2024年4月からの建設業への時間外労働時間の上限適用を見据え、2018年3月に「建設業働き方改革加速化プログラム」を策定しています。同プログラムでは、「生産性向上に関する取組み」が重点分野の一つとされ、「IoTや新技術の導入等による施工品質の向上と省力化を図る」旨の記載があります。
しかし、調査結果からは、建設プロセス全体のデジタル化による生産性向上には道のりが遠く険しい実態が分かりました。また、「デジタル化に対応できないと将来仕事が減るという不安」は20代で約7割に上っていました。
野原グループは、建設産業の生産性向上には、建設プロセス全体でのデジタル化、特にBIM活用による「建設産業の工業化」「省人化」が重要だと考えています。同時に、誰もが容易にBIM活用できる環境、仕組みの整備を急がなくてはなりません。私たちは、BIM設計-製造-施工支援プラットフォーム「BuildApp」でそれを実現し、建設DXで社会を変えてまいります。
目次
■調査実施概要 (調査元:BuildApp News 編集部)
調査期間:2024年1月15日~1月22日 | 回答数:1,000人 |
調査対象者:全国の建設業界従事者(20~70代) | 調査方法:インターネット調査(ゼネラルリサーチ株式会社) |
建設業界従事者への独自調査(総評)|デジタル化による生産性向上の実態
1.【デジタル化未対応による仕事の不安】
全体の6割強が「デジタル化に対応できないと将来仕事が減るのでは、という不安」を抱えている。
年代別では、20代・30代の若手、70代で7割近くに上り、最も割合が少なかったのは40代であった。40代は、建設業への従事年数も一定あり建設業に多いアナログ手法と、デジタルデバイスの両方に対応できている方が多いのではないか。
2.【デジタル化による生産性向上、業務効率化が遅れているプロセス】
1位「施工・専門工事(39.8%)」が2023年調査結果よりも4ポイント上昇、2位「施工管理(24.9%」)も同様に1.8ポイント上昇していた。
裏返せば、「施工・専門工事」、「施工管理」プロセスのデジタル化が生産性向上、業務効率化の鍵と言えるのではないか。
3.【デジタル化による生産性向上、業務効率化が進まない理由】
「デジタル化できない作業が多い(55.8%)」、「現場での変更が多くデータ更新が面倒(27.6%)」、「導入から運用までの煩雑さ(22.6%)」が、前年同様に上位に挙がっている。
デジタル化が難しい業務には、1位「施工トラブル(56.7%)」だけが前年の調査結果よりも4.3ポイント上昇していた。
4.【人手不足の解消に期待できるデジタル技術(複数回答)】
1位に「BIM(3Dモデルで企画・設計・施工・維持管理に関する情報を一元管理)(45.0%)」があがり、その理由には、BIMの情報管理性、分かりやすさから効率化や生産性向上を期待する声が多いことに注目したい。
5.【使いこなすことができればよいと思うデジタル技術】
1位「BIM(3Dモデルで企画・設計・施工・維持管理に関する情報を一元管理)(28.1%)」が、2023年度調査結果よりも3.5ポイント上昇していた。
芝浦工業大学 建築学部建築学科 教授 志手一哉氏より|調査結果について
“ 建設プロジェクトのプロセス改善は、個社ごとに行っても意味がなく、多数の企業から人が集まるプロジェクトで実施しなければ効果を発揮しません ”デジタル化による生産性向上は、2つの考え方に分類できます。
一つ目は、より便利なアプリケーションやツールを使うことにより個人の作業効率が向上することです。オペレーションを外注に委託していては作業時間を短縮できません。
二つ目は、建築生産プロセスの非効率を解消するために仕事のやり方を変革し、それを具現化するために便利なアプリケーションやツールを用いることです。例えば、実施設計段階にゼネコンやサブコンが部分的な設計を担うためにCDE(共通データ環境)を用いるようなやり方です。
いずれにしても、技術者自身がアプリケーションやツールを用いて仕事をしなければなりません。デジタル化すればおのずと生産性が向上するわけではなく、アプリケーションやツールを自ら使いこなさなければ生産性は向上しません。また、デジタル化が効率的なプロセスを提示してくれるわけではなく、プロセスの改善はあくまで人の強い意志が必要です。
そして、建設プロジェクトのプロセス改善は、個社ごとに行っても意味がなく、多数の企業から人が集まるプロジェクトで実施しなければ効果を発揮しません。それらの苦悩が垣間見えるアンケートの結果ではないかと思います。
(芝浦工業大学 芝浦工業大学 建築学部建築学科 教授 志手一哉)
調査結果の概要 ※詳細は別紙を参照願います
1.【デジタル化未対応による仕事の不安】
「デジタル化に対応できないと将来仕事が減るのでは、という不安」がある方は全体の61.3%だった。
2023年調査とほぼ変わらない結果となったことから、依然として、今後はデジタル対応が必要であることは、半数以上の建設業界従事者において認識されていると推測できる。
※事業規模別、従事業務別等の結果は別紙参照
年代別に「デジタル化に対応できないと将来仕事が減るのでは、という不安」がある方の割合をみると、40代が最も数値が小さく、未来を担う若い世代(20代・30代)とベテラン世代で多い傾向が見て取れた(40代を境に、若くなるほど、ベテランになるほどその数値が大きい)。
40代は、建設業への従事年数も一定あり建設業に多いアナログ手法と、デジタルデバイスの両方に対応できている方が多いのではないか。
2.【デジタル化による生産性向上、業務効率化】
業務プロセスごとに、「デジタル化による生産性向上、業務効率化」が進んでいるものと、遅れているものを尋ねたところ、遅れているプロセスの1位「施工・専門工事」は前回調査結果の35.8%から4ポイント上昇しており、深刻さが増していると言える。
「デジタル化による生産性向上、業務効率化が遅れていると思う業務プロセス」の1位「施工・専門工事」、2位「施工管理」が、生産性向上、業務効率化の鍵になりうると考えられる。(施工管理については、デジタル化による生産性向上と業務効率化が「進んでいる」でも3位に入っていることから「遅れている」「進んでいる」は二極化している可能性も)※前年度比、従事業務別、業種別の結果は別紙参照
■デジタル化による生産性向上、業務効率化 ※複数回答
進んでいると思う業務プロセス | 遅れていると思う業務プロセス | |
---|---|---|
1位 | 設計関連業務(設計・監理など)(40.2%) | 施工・専門工事(39.8%) |
2位 | 見積・積算業務(38.2%) | 施工管理(24.9%) |
3位 | 施工管理(34.0%) | 営業(22.5%) |
3.【デジタル化による「生産性向上、業務効率化が進まない理由」(複数回答)】
上位6位は次の通りで、前年の調査結果とほぼ変わらない結果であったが、1位「デジタル化できない作業が多い」の割合は微増、6位「従来のやり方が一番早いと思っているから」は微減している。
なお、デジタル化による「生産性向上、業務効率化が進まない理由の1位に上がった「デジタル化ができない作業が多い」に関連して、「デジタル化が難しいと思う業務」を尋ねたところ(複数回答)、順位は昨年同様の結果であった。しかし、1位「施工トラブル(56.7%)」だけが前年の調査結果よりもその割合が増えていたことに注目したい。
■デジタル化による「生産性向上、業務効率化が進まない理由」※複数回答
2024年調査 | 2023年調査 | |
---|---|---|
1位 | デジタル化できない作業が多い(55.8%) | デジタル化できない作業が多い(52.8%) |
2位 | 現場での変更が多くデータ更新が面倒(27.6%) | 現場での変更が多くデータ更新が面倒(29.9%) |
3位 | 導入から運用までの煩雑さ(22.6%) | 導入から運用までの煩雑さ(23.8%) |
4位 | 予算が確保できない(21.3%) | 予算が確保できない(22.1%) |
5位 | ツールの使い方を覚えるのが面倒(20.4%) | 従来のやり方が一番早いと思っているから(21.7%) |
6位 | 従来のやり方が一番早いと思っているから(19.5%) | ツールの使い方を覚えるのが面倒(20.1%) |
4.【人手不足への対策】
「建設2024年問題に限らず、人手不足問題に対して所属している会社はどのような対策を講じていますか?(最大3つまで回答可)」と尋ねたところ、1位「若手の採用(32.6%)」、2位「対策は出来ていない(検討もされていない)(31.5%)」、3位「従業員の給与ベースアップ(20.7%)」となった。
結果を総じてみてみると、「人手不足対策」は「採用活動(78%)」が最多であり、「デジタル化(ICT導入・DX化の導入推進)による生産性の向上(14.9%)」は進んでいないことが分かる。
一方で、今後の労働人口不足が確実と言われている中で、建設産業では、従来同様の「人」に頼りすぎる対策よりも、「デジタル化(ICT導入・DX化の導入推進)による生産性の向上」への移行が求められるのではないか。
4-1.【人手不足の解消が期待できるデジタル技術(複数回答)】「人手不足問題に対する会社の対策」の設問で、「デジタル化(ICT導入・DX化の導入推進)による生産性の向上」を選んだ方(n:149)に、「人手不足の解消が期待できるデジタル技術(機器・ツール)」を尋ねたところ、上位3位は次表の通りとなった。
官民で進める「BIM(3Dモデルで企画・設計・施工・維持管理に関する情報を一元管理)」が群を抜いていたことに注目したい。
■人手不足の解消が期待できるデジタル技術(機器・ツール) ※複数回答、n:149
1位 | BIM(3Dモデルで企画・設計・施工・維持管理に関する情報を一元管理) (45.0%) |
---|---|
2位 | 施工管理ツール (20.1%) |
3位 | 図面データ化ツール (19.5%) |
4-2.人手不足の解消が期待できるデジタル技術に「BIM(3Dモデルで企画・設計・施工・維持管理に関する情報を一元管理)」を選択した理由を尋ねたところ、BIMの情報管理性、分かりやすさから効率化や生産性向上を期待する声が多い結果となった。
※詳細は別紙参照
5.【使いこなすことができればよいと思うデジタル技術(複数回答)】
1位「BIM(3Dモデルで企画・設計・施工・維持管理に関する情報を一元管理)(28.1%)」が、2023年度調査結果よりも3.5ポイント上昇していたことに注目したい。
■使いこなすことができればよいと思うデジタル技術 ※複数回答
2024年調査 | 2023年調査 | |
---|---|---|
1位 | BIM(3Dモデルで企画・設計・施工・維持管理に関する情報を一元管理) (28.1%) | BIM(3Dモデルで企画・設計・施工・維持管理に関する情報を一元管理) (24.6%) |
2位 | 図面データ化ツール(15.1%) | 図面データ化ツール(17.2%) |
3位 | その他(13.9%) | その他(14.5%) |
5-1.実際にBIMを活用している方(n:376)の活用シーンは、設計(58.8%)、施工(29.5%)が上位であり、製造(15.4%)や維持管理(9.3%)はその割合が小さかったことから、建設に関わる全プロセスでのBIM活用には至っていないことが推測される。
5-2.実際にBIMを活用している方(n:376)にBIM活用に期待する理由を尋ねたところ、次表の通りとなったことから、BIMによる3Dモデルでの分かりやすさが活用メリットと感じていることが推測できる。
一方で、「ロボット、ドローン、VRとの連携がしやすくなる(5.6%)」は圏外であったことから、建設RXコンソーシアムを中心にゼネコン各社の連携による進むロボティクスの開発・実装と、BIMとの関連性(連携による可能性の拡大)の認知は進んでいないことが示唆される。
■BIM活用者の、BIM活用に期待する理由(n:376) ※複数回答
1位 | どこを切った図面でも瞬時に実施できる(44.9%) |
---|---|
2位 | 設計・構造・設備を総合的に判断できる(42.8%) |
3位 | 発注者から技能工まで完成イメージがわかりやすい(41.2%) |
4位 | 設計段階での手直しが一度で済む(38.8%) |
5位 | 人工の省力化ができて人手不足が解消される(19.9%) |
BIM設計-製造-施工支援プラットフォーム「BuildApp」※登録商標取得済み
「BuildApp(ビルドアップ)」は、設計事務所やゼネコンが作成したBIM設計データをより詳細なデータに置き換え、各建設工程で必要なデータとして利活用し建設工程全体の生産性向上を実現するクラウドサービスです。設計積算から製造・流通・施工管理・維持管理までをBIMでつなぐ複数のサービスにより、各プレイヤーに合わせたサービスを提供します。
設計・施工の手間・手戻りをなくし、製造・流通を最適化して、コスト削減と廃棄物・CO2削減に貢献します。
「BuildApp」は、建設サプライチェーンの抜本的な効率化と未来へ繋がる成長をサポートし、皆さまと一緒に建設業界をアップデートしていきます。
私たちがBuildAppで実現したいこと
- BIM起点のデータで建設関係者を繋いで連携を生む
- 工程の可視化や業務の自動化により業界内の無駄を解消するDXによる生産性向上や廃材・CO2排出量の削減を目指す建設企業とともに、サプライチェーンを変革し、「建設DXで、社会を変えていく」
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