東急コミュニティーにみる改修工事でのデジタル運用|深堀り取材【毎月更新】

建築BIM加速化事業にともない、BIMやDX化への注目および実施速度が本格化しています。第10回は、改修工事でのデジタル運用の目指すべき方向性と可能性について解説します。

改修工事でのデジタル運用

 東急コミュニティーは、オフィスビル改修工事において、野原グループが提供する米国Matterport(マーターポート)社の3次元撮影カメラ「Matterport Pro3」(マーターポートカメラ)と「Scan to BIIM」を採用し、改修工事に必要な2次元図面作成の効率化を実現した。本プロジェクトを主導する東急コミュニティーの小出昇平氏(ビル事業本部第二事業部企画課主幹)に、改修工事でのデジタル運用の目指すべき方向性と可能性について聞いた。

点群データからBIMモデルを作成し、2次元図面の生成などへ展開+図面に内在する課題克服

 「Matterport Pro3」は、屋内外の撮影に対応し、最大100mまで測距(距離を測定)できる米国Matterport社の3次元撮影カメラの新ラインで、野原グループでは、2020年8月からMatterport社の日本国内販売リセラーを務めており 、建設・不動産業界のプロセス変革の一環としてデジタルツインの活用支援に注力している。

 「Scan to BIM」は、既存建物のデジタル化(BIMモデル化)のみならず、改修工事における現場調査、図面作成といった維持管理プロセスの変革を支援する。3次元撮影カメラ「Matterport Pro3」を用いて既存建物をスキャニング(3次元測量)し、自動生成される点群データから「Revit」などのBIMモデルを作成、2次元図面の生成等へと展開し、従来の紙図面に内在する課題をデジタル技術で克服するクラウドサービスとなっている。

既存建物をスキャニングしBIMデータ化する手法によって、現状の施設管理の課題を解決

 今回の事例では、3次元撮影カメラ「Matterport Pro3」を用いて延床面積2,500平米程度の既存建物において屋上と外構を含めてスキャニングしており、所要時間は約7時間となっている。その後、点群データから作成したBIMモデルを使って複数の2次元図面(平面図や展開図など)を生成し、改修工事に活用した。

 具体的には、従来の現地調査と比較して、所要時間で80%減を記録し、図面作成については、作図時間の半減を実現している。

 現状では、BIMの援用は新築建物の設計施工から管理・運用までが中心であり、既存建物についてはBIMの援用以前に、デジタル化の手法さえも確立されていなかった。3次元撮影カメラ「Matterport Pro3」の出現にみられるように、既存建物を安価かつ容易にスキャニングし、BIMデータ化する手法によって、それらの課題解決をみている。

 建物のライフサイクルは長期に渡るにも関わらず、図面は紙ベースで保存され、デジタル化されていないケースがほとんどであり、図面と現況が不一致であるケースも多々ある。

 今回の事例では、東急コミュニティー側が3次元撮影カメラ「Matterport Pro3」によるVR撮影/3次元測量、点群データの取得を行い、それらを野原グループに提供、野原グループ側で点群データを活用したBIMモデルの要件定義、モデリングなどを行っている。

Matterport Pro3

BIMモデルから作成した2次元CAD 図面が現状比較しても十分な品質を確保したことを実証

 今回の事例における東急コミュニティーの見解を報告すると、以下のとおりである。

・FM(ファシリティマネジメント)業務への BIM やデジタルツインの活用を検討していたが、図面がデータ化されていない、図面と現況が異なる、図面そのものがないといった施設も多く、解決策として「Scan to BIM 」を試用した。

・BIMモデルを作成してしまえば、整合性のとれた2次元CAD図面ができるのがBIMのメリット。

・BIMモデルから作成した2次元CAD 図面は、若干の修正が必要なものの、改修工事には十分な品質のものであった。

・点群データからBIMモデル+2次元CAD図面の作成までの時間は思っていたよりも早く、大幅な省力化に繋がるとの期待大。

BIMモデルの詳細度に応じて点群データを取得する「Scan to BIM」 料金・標準納期を公開

 関連して野原グループでは、今回の事例などを端緒として不動産管理業務に関わる企業・組織と共に、維持管理を含む建物のライフサイクル全体におけるデジタルツイン(3D/VR空間モデル)活用と、BIM普及による業務効率化を加速化させていく。

 具体的には、野原グループでは9月よりエヌ・アンド・アイ・システムズのBIMセンターと協働して、MatterportなどのVR撮影/3D測量により取得できる点群データを使いBIMモデル化するサービスとして、「Scan to BIM」を開始している。

 「Scan to BIM」においては、Matterportなどの3次元撮影カメラを用いて、撮影から点群データの取得まで最短で1~2日程度で完了する。また、別紙「Scan to BIM」の料金表にあるように、BIMモデルの詳細度に応じ、ユーザー自らが点群データを取得する事例含めて、必要な料金・標準納期を明らかにしている。

 一例として、ユーザー自らが既存建物をスキャニングし、レベル1と定義している構造躯体、間仕切り壁、建具からなるBIMモデルを生成する場合は、標準納期約4日、最低価格198,000円(最低価格)と明示している。

【別紙】

https://news.build-app.jp/wp/wp-content/uploads/2023/11/81b22598d254c57e4c9cca9c781d2f84-1.pdf

※別紙:「Scan to BIM」の料金表。PDFファイル・ダウンロード可。

【東急コミュニティー 問い合わせ】
 ビル事業本部 第二事業部 企画課 兼 R&Dセンター 事業創造チーム
 小出 昇平 shohei-koide@tokyu-com.co.jp

【Matterport(マターポート)問い合わせ先】
リセラーサイト : https://www.nohara-vdc.jp/matterport/