予算額40倍へ大幅アップ!国交省の「建築BIM加速化事業補助金」の内容とは|㈱キャパ メディア連携企画

 

海外に比べて、BIMの普及・活用が遅れていた日本の建設業界ですが、いよいよ国交省が本気で普及を加速させるために動き出しました。
令和2年の第二次補正予算で明らかになったその規模は、80億円と前年より大幅にアップしています。全ての公共事業へのBIM/CIMの原則適用についても、当初2025年までの予定としていましたが、2023年に前倒しするなどMAXスピードで普及促進に舵を切りました。
今回は、建築業界のBIM化を加速させるための「建築BIM加速化事業補助金」について、見ていきましょう。

「建築BIM加速化事業補助金」の概要

これまでも、年額約2億円程度の予算で細々と続けてきた、国内でのBIM活用・普及関連の事業でしたが、令和2年の第二次補正予算では80億円へと、約40倍の予算規模で実施されることになりました。
国交省住宅関連の補正予算が総額で約1,840億円あり、その中に「新しい資本主義の加速」という項目で80億円計上されているのが「BIM活用・普及関連の事業」の予算に相当します。

背景としては、物価高による資材高騰など経営環境の悪化に対応する経済対策の一環として、BIMの普及・活用を進めることで効率化・省力化・小コスト化を実現したいとの考えがあります。
「建設業界のIT化・高度化促進」では予算が取れなかったものが、「経済対策」の衣を被せれば一気に80億確保できるという訳です。

一口にBIMの導入・活用といっても、中小の事業者にとっては「新しいソフトウエアの購入」「周辺機器の購入」「高性能PCの購入」など、ソフト・ハードを揃えた上で、さらに「操作できる人材の育成」「ワークフローの変更」など大きな負担があります。
時間も手間も費用もかかる大変な作業であり、この解決が大きな課題となっています。

今回の「建築BIM加速化事業」では、大きく補助額をアップした上で機器の購入だけでなく社員に対するBIM研修費用などもカバーしており、中小事業者にとって大きなチャンスと言えるでしょう。

▼「建築BIM加速化事業補助金」の基本要件

https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/build/content/001586871.pdf

一番のポイントは「幅広く費用を補助する」という部分ではないでしょうか。
前述した通り、建築BIMを導入するといっても本格的に活用するためには、周辺機器の購入や参加するメンバーのトレーニングに加え、プロジェクト内でBIM運用のマネジメントなど新たな取り組みが必要です。

今回の補助ではこのようなさまざまな費用について、幅広く対象とすることが可能です。導入を検討しながら踏み出すことができなかった中小事業者にとっては、またとないチャンスになるのではないでしょうか。

対象となる費用や建築物について

では、どのような費用が補助対象になるのか具体的に見ていきましょう。
国交省の「関連資料」ページにある「令和4-5年度 建築BIM加速化事業補助金交付申請等マニュアル」を見ると詳細が記述してあります。

 ・国交省 関連資料

 ・令和4-5年度 建築BIM加速化事業補助金交付申請等マニュアル

マニュアルの7ページ「第1章第2項」には、全部で7項目に分けて補助対象経費が記載されています。

(1)BIMソフトウェア利用費

BIMモデリングソフトウェアはもちろん、アドオンソフト・アドインソフト・ビューワーソフト等、BIMを利用するために必要となるソフトウェアも全て含まれています。
とはいうものの、数多くのソフトウェアの中で何が対象となるのか判断に迷う部分もあるかと思います。そこで国交省では、対象ソフト・対象外ソフトのリストを提供しています。

AutoCADAutodesk社)のような単なる3D CADのソフトは対象外となっており、あくまでBIMソフトである必要があります。
リストには、対象ソフト152点・対象外ソフト32点が掲載されています。非常に具体的でわかりやすい「親切設計」です。 ※注2

(2)BIMソフトウェア関連費

パソコンリース料、ARゴーグルなど周辺機器の利用料がこの項目に含まれます。
ただし、(1)のソフトウェアと合わせて購入する場合に限られます。また、3Dプリンタなどは含まれません。
BIMデータの編集に必要となるPCやタブレット、ビューアーなどが必要経費であり、作成されたデータを利用した模型作成や、資材加工などを行うハードウェアには適用されないと考えれば良いでしょう。

(3)CDE環境構築費・利用費

CDEとはBIMデータを統合管理するためのデジタルハブとなる環境です。
「共通データ環境」と呼ばれ、プロジェクトに参加する各社がクラウド環境などを共有し、ドキュメント他のデータを収集・管理・配布するために利用します。
これにより、データの不整合や更新タイミングの違いによる混乱などをなくし、効率的にプロジェクトを進めることが可能となります。

ここまでが BIMを利用するための環境整備に必要となる、ソフト・ハードに関する費用です。
しかしせっかく「モノ」を入れても、その利用には「扱える人材」が必要不可欠です。その部分もフルカバーしてくれるのが、今回の補助事業の特徴とも言えます。

(4)BIMコーディネーターの人件費

国内ではまだ十分にその活動が認知されていない「BIMコーディネーター」ですが、BIM先進国では、重要な役割として知られています。
その業務は多岐にわたりますが、ここでは「建築BIM加速化事業補助金交付要綱」に記載されている国交省による定義を紹介しておきましょう。

◯ BIMコーディネーターの定義
「BIMソフトウェアの選定、CDEの選定及び建築BIMに関する講習の実施等のBIM活用環境の整備支援を行う者をいう。」

要するに、プロジェクト全体にBIMソフトウェアを導入し、その活用を図るための環境整備をする責任者というポジションです。これは事業者の社員であっても外注でも構いません。
また、特に資格要件や経験についても明記されていませんので、極論するなら「BIMに関して全くの初心者」であっても構わないということになります。
あくまでこれは「申請要件を満たすかどうか」だけの話であり、まともにプロジェクトを運営しようとするなら、それなりの経験や知識がある人物を任命するべきではあります。
 
しかし、今回の補助事業への応募をきっかけにBIM環境を整備しようとする企業の場合、経験の少ない社員を研修などを通じて育成し、コーディネーターとして任命できる余地を残しているとも考えることができます。

なお、特別な理由がない限りBIMコーディネーターは原則1名となっています。

(5)BIMマネジャーの人件費

BIMマネージャーの定義(建築BIM加速化事業補助金交付要綱)
「元請事業者等及び下請事業者等が作成した建築BIMモデルの管理等BIMの運営を担う者をいう。」

マネージャーは、実際のプロジェクトを進める上でBIM実務を掌握し、管理・運営していく人物ということになります。BIMコーディネーターと異なり、人数に関する制限は特にありません。

(6)BIMモデラーの人件費

◯BIMモデラーの定義(建築BIM加速化事業補助金交付要綱)
「建築BIMモデルの作成・編集を行う者をいう。」

実際にBIMソフトウェアを使って、建築BIMモデルの作成や編集を行う技術者のことを意味します。やはり人数に関しては特に制限はありません。また、実務能力に関する制約も特に記載されていません。

(7)BIM講習の実施費用

BIMを運用するためには、実際に運営に関わる技術者がいなければいけません。また、経験者であっても異なるソフトウェアを操作したり、新しい機能を使うためには知識をアップデートする必要があります。
関連するソフトやハードの取り扱い、CDE環境の利用など学ぶべき点は多く、参加者全員が最低限のスキルレベルでなければなりません。

BIMの技術や知識の向上のための講習に必要な、さまざまな費用を計上することができます。
講師謝金・会場費・テキスト印刷費・機器レンタル費等に要した経費や、委託料などが該当します。

※経費項目については「マニュアル」に記載されている順番を一部入れ替えて記載しています。

対象となる建築物と手続きについて

つづきは株式会社キャパ オウンドメディア内の記事「予算額40倍へ大幅アップ!国交省の建築BIM加速化事業補助金の内容とは」にてお読みいただけます。