【連載】「なぜ日本のBIMはだめなのか」講演再録:NOHARAのBIMとは(第三回)

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著者:伊藤 久晴

連載企画「なぜ日本のBIMはだめなのか?」では、BIMプロセスイノベーション 伊藤久晴氏の建設DX展BuildAppブースでの講演を再録します。

BIMエバンジェリストとして多数の実績を誇る同氏の日本のBIMの歩みについてや課題について、そしてあるべき姿など、BIMを活用する上で大変示唆に富む内容となっています。

第3回ではテーマの「NOHARAのBIM」について、課題となっている部分も踏まえながら解説していきます。

他の連載記事はこちら

第1回連載はこちら:「なぜ日本のBIMはだめなのか」講演再録:日本のBIMの現状とは?(第一回)
第2回連載はこちら:「なぜ日本のBIMはだめなのか」講演再録:日本のBIMの課題とこれから(第二回)
第4回連載はこちら:「なぜ日本のBIMはだめなのか」講演再録:BIM標準の違いを解決するヒントとは(第四回)
第5回連載はこちら:「なぜ日本のBIMはだめなのか」講演再録:日本の建設業の未来はどうなる?(第五回)

NOHARAのBIMとは

NOHARAの提供するBuildAppのポイントは、ゼネコンと設計事務所、それと工事店、施行する所とメーカーさんをつないでいくという仕事をされているということです。
これは多分日本でもNOHARAさんしかできないことだと思っているのですけれども、なぜそれができるのかというと、メーカーでもゼネコンでも設計事務所でもない、歴史のある建材商社だからできるのです。

その商社を通して仕事が流れていくからその仕組みをBIMに変えてしまおうというのが、基本的な発想になるわけです。BuildAppがこの中心となり、単に情報を作るだけではなくて、ここにありますような製作や取り付けまでのサービスを行うというのが1つのポイントなのです。
だから情報を作りっ放しではなく、物作りまでしてしまうというところが1つのポイントになろうと思います。

BIMの活用段階の1、2、3と考えると、後追いBIMや図面中心のBIMであるとなかなか本来の効果が出ないのです。
モデルが中心の設計や施工の仕事になってこないと、本来の意味は出ないだろうと思っているのです。もちろん第1段階、第2段階でもできることはできますし、効果ももちろんあるのですけれども、この第3段階になった企業こそが本来の価値を発揮するというふうに思っています。

そこでNOHARAさんは、現時点では内装と建具をやっているわけですが、内装と建具について私がNOHARAさんに言っているのは、「どうせだったら壁ってことにしないか」ということです。

こういった軽鉄や建具などよりも、壁を責任施工でモデルを作って、この壁自体を請け負うということが面白いビジネスモデルではないかなと言っているのですけれども。この壁が、非常に大きな要素の1つだと思っています。
ここの内装や建具についてどうしていくのかということは、細かい説明は省きますが、私が考えているNOHARAさんのビジネスモデルの注目すべきポイントを少し話します。

ポイントのひとつは情報詳細度の変化

情報詳細度がどうやって変わっていくのかというところが、非常に面白いのです。
何を言っているかというと、例えば意匠設計がLOD300の実施設計のモデルを作ったとして、施工のモデルのLOD350がどうやって変化していくのか
一番注目すべきは製造のモデルで、LOD400という世界をどうやって作るのか、それを使ってどういうふうに施工するのかというところは、皆さんが日頃抱えてらしている課題の1つだというふうに思うのです。これがどういうふうに変化しているのかというのが、1つのポイントになるわけです。

LODとは

まずはLODについて、少し復習をさせていただきたいと思います。
例えばLOD200、LOD300、LOD350、LOD400という言葉を皆さんはよく使われます。
例えば、「基本設計だったらLOD200だよね」、「実施設計だったらLOD300だよね」と、このLODは皆さんがよく使われる言葉だと思います。
しかし、このLODの200、300、350、400というのは、ここにありますようにBIM FORUMというグループのLEVEL OF DEVELOPMENT SPECIFICATION 2021に定義されているものなのです。
その定義を見てみたいと思います。実施設計までは壁の構成、軽鉄などまでは定義されてないのですけれども、LOD350の施工図の段階になると、その壁の構成まで考慮しなさいということになっています。よくよく見るとわかると思うのですけれども、開口周りだけはマストで、開口部周りの下地についてはきちんと入れなさいというふうになっているわけです。
なおかつLOD400になると、さらにその取付方法まで明記し、本当に製作ができるようなレベルまでやりなさいというのがLOD400ということです。

皆さんは、多分施工だとLOD350まで持っていかなければいけない、LOD400というのはメーカーや業者の世界であると思っているかもしれませんが、これを全部理解してやっていく必要があるということです。これが、LODというものだと考えてください。

そういうふうにLODの詳細度を変えていく、つまりそれはモデルであったり情報であったりが時系列によって変わりつつ建物を造っていく、というのがBIMによる建物の製作というかたちになるわけです。

私が言っていた問題点の1つであるのですが、各社によってBIMの標準が違うという話を皆さんにしました。それぞれの標準が違うことが、今NOHARAさんが直面している1つの問題で、設計事務所から実施設計のモデルをもらってきて、NOHARAさんはそれをNOHARAさんの規格に合うように再度調整しているのです。
要するに規格が違うために、実施設計モデルを再調整するために一部作り直しているというのが、現状です。それをゼネコンの施工図として渡す時も、各社によって施工図の標準が違うので、ここも苦労してらしているということなのです。
だからこうしたBIM標準の異なるというところが、やはりどうしても日数や工数などが高く見えてしまうのではないかと心配しているということです。

まとめ

今回は、次回の連載ではNOHARAのBIM(BuildApp)のポイントと課題をお話しました。
次回はこの課題をどう解決して行くのか、という点に触れていきたいと思います。