インフラを守る点検会社を、DXで支えたい。TRASS代表・越智氏が描く維持管理DXの将来像 【後編】

橋梁点検の現場では、紙や転記作業の削減だけでなく、経験豊富な技術者の減少や働き方の改善といった課題も顕在化しています。TRASS株式会社は、現場起点で業務効率化を進めながら、こうした業界課題の解決にも挑戦しています。

その背景には、代表の越智氏自身が持つインフラ維持管理への強い思いがあります。家業である建設業との出会い、鉄道保線の現場で得た経験、そして起業に至るまでの歩みを通じて、越智氏は「点検会社が持続的に働ける環境づくり」を目指してきました。

インフラを守る点検会社を、DXで支えたい。TRASSが橋梁点検の効率化に挑む理由 【前編】

橋梁をはじめとするインフラの維持管理では、点検業務の重要性が高まる一方で、現場記録の整理や写真管理、成果品作成など、多くの手作業が依然として… more

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後編では、TRASSの開発思想や創業の背景、そしてインフラ維持管理の未来に向けた展望について伺いました。

現場の声を起点にプロダクトを磨き続ける

現場で使われてこそ価値が生まれる

―【若狭】開発では、どんなことを大切にしていますか。

【越智】改善の速さは、「いつ休んでるの?」と言われるぐらい評価していただいています。ただ、早く直すだけでなく、何に困っているのかを考えるようにしています。

たとえば、「ボタンを赤にしてくれ」と言われても、そのまま赤くするのではなく、理由を考えるんです。よく使うのに目立たないのであれば、場所を変えたり、関連する処理まで自動化したりする方がいいかもしれません。こういう「芯を食った改善」をする考え方は、以前働いていた建設系のスタートアップで学びました。

また、デライト・ベンチャーズの方にも、「とにかくお客さんにボコボコにされてきてください」と言われました。
完成してから売るのではなく、まず使ってもらい、お客さんと会いながら磨くという考え方ですね。

「段取り八分」の業界だからこそ期待値を調整

―【若狭】顧客との関係づくりでは、何を意識していますか。

【越智】「段取り八分」の業界なので、「今はここまでできます」と、できる範囲をしっかりと伝えます。うまくいかないことがあれば、全力で対応する姿勢も大切にしています。

現場単位の契約なので、一度使って終わりではなく、続けて使ってもらえる関係をつくりたいですね。

土木への思いから起業へ。TRASS誕生の背景

家業との出会いが、土木への道を開いた

―【若狭】起業を目指したきっかけを教えてください。

【越智】祖父が創業した会社を父が継いでいて、僕は4人兄弟の長男です。
昔から、自分で事業をやることには前向きでした。高校では野球をしていましたが、コロナ禍で甲子園がなくなり、寮を出て実家に戻りました。
そこで父に「仕事を手伝え」と言われて現場に出たのが、建設の仕事を考えるきっかけです。

父が「俺は財閥になりたい」と言い始めたときも、最初は驚きましたけど、ワクワクしたんですよね(笑)。
そのまま会社を継ぐだけではなく、自分で何かを起こしたいと思って、大学へ進学しました。

また、大学2年生の2022年に最初の事業を始めましたが、うまくいきませんでした。
そこからの2年間は「土木でやりたい」という思いで準備して、自分でプロダクトをつくるためにプログラミングスクールにも通いました。

そして、スクールを勧めてくれたのは、当時働いていた建設系のスタートアップのCEOです。社員がほとんどいない頃から、展示会のブースづくりなど、何でもやらせてもらいました。

最初は2回ぐらい断られたんですけど、あの手この手で採用してもらった経験は大きかったですね。

デライト・ベンチャーズとは、スクールの成果発表会で賞をいただいたのがきっかけです。
副賞として事業づくりのプログラムに参加し、検証費用や最初のエンジニアの支援を受けました。僕は「いいものをつくれば売れる」と思いがちでしたが、営業の大切さも教えてもらいました。
お金、人、営業面の支援がそろっていると感じて、出資していただきました。

点検会社とともに、インフラの未来を守る

点検データを活用し、維持管理のあり方を変える

―【若狭】維持管理に取り組む原動力は何でしょうか。

【越智】最初は「大きいことを成し遂げたい」「誰よりもすごくなりたい」という気持ちでした。インフラの老朽化による危機を防げたら、週末にお酒を飲んだり、家族の話をしたりする、普通の幸せを守れるかもしれないと思ったんです。

「みんなの生活を、自分の手で守れているかもしれない」という実感が心地よかったですね。今はお客さんや社員もいるので、自分のためだけの仕事ではなくなってきています。

点検業界には、社員同士の仲がよかったり、「好きだな」と思える企業が多いんです。そういう会社さんに潰れてほしくない、という思いがありますね。

情報がリアルタイムに集まれば、ベテランが事務所から現場の記録を確認する体制も考えられます。年間のデータから、一人ひとりの点検実績や得意な仕事が分かれば、受ける業務の判断や人員配置も支援できると思っています。

TRASSの優位性_サービス紹介資料より抜粋

今後の展望

点検から補修・施工までデータをつなぐ

―【若狭】TRASSが「成功した」と言えるのは、どんな状態でしょうか。

【越智】必要なのにできていない補修をなくして、補修工事の数をちゃんと増やすことです。道路の陥没事故をゼロにすることも、目指す姿の一つですね。

今は点検で情報を集めていますが、そのデータを計画や補修設計に生かして、施工までつなげたいです。
家業も施工が中心なので、そこまで行けたら、僕が土木に触れたきっかけともつながります。

まとめ

―【若狭】最後に、BuildApp Newsユーザーへメッセージをお願いします。

【越智】僕らだけでインフラの安全・安心を守ることはできません。実際に点検している会社さんを通してこそ、取り組めることなんです。

だから、そうした会社さんが仕事を続けられる仕組みをつくりたいですね。
一緒に、安全・安心が当たり前にある生活を守っていければと思っています。

参考サイト

TRASS_WEBサイト

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