建設業の変革に伴走する|現場Hubの挑戦(前編)

工事・メンテナンスの現場では、案件管理や見積り、発注、報告書作成、写真共有、顧客対応を同時に行う必要があります。ところが実務の現場では、情報が案件ごとに散らばり、担当者の頭の中に残り、社内外のやり取りも複数の手段へ分散しやすい状態が続いてきました。
現場Hubは、そうした分断を一つの基盤でつなぎ、工数削減だけでなく、属人化の緩和、働き方の見直し、採用や定着にも影響を与えるサービスとして広がっています。
前編では、現場Hub株式会社の代表取締役CEO岡田光正氏に、建設業界へ入ったきっかけや起業の原点、現場Hubが生まれた背景についてお話しいただきます。
目次
プロフィール

岡田 光正氏 (現場Hub株式会社 代表取締役CEO)
京都大学法学部卒業。学生時代はアメリカンフットボール部所属。
ダイキン工業株式会社に入社後、国内営業、海外事業、経営企画室を経て、CVC室でベンチャー投資と協業推進に従事。
現場経験を通じて気づいた建設業界の課題を解決するため、2022年4月に現場Hubを共同創業。

若狭 僚介 氏(nat株式会社)
神奈川県横浜市出身。青山学院大学社会情報学部卒業後、市場調査会社にて事業会社や広告代理店の様々なマーケティング業務に従事。
2022年1月にnat株式会社に参画。セールス部門、マーケティング部門の責任者を経験した後、現在は社長室にてScanatの事業推進を横断的に担当。
現場Hub立ち上げについて
—【若狭】ご経歴と、現場Hubを立ち上げた背景をお聞かせください。
【岡田】岡田光正と申します。現場Hubは2022年4月に立ち上げました。今日で4期目が終わって、明日から5期目に入るところです。
前職はダイキン工業で、2015年に入社しました。最初は営業として配属されましたが、空調機を売るだけでなく、工事の請負にも関わっていました。塾やオフィスのテナント工事では、何もないスケルトンの状態から、内装会社さんや電気会社さんと一緒に、空調の設計や見積りをして、最終的に納めるところまで携わっていました。
その仕事はすごく面白かったですね。現場ごとに条件が全然違いますし、協力会社と現場を回ったり、困りごとを職人さんに相談し「任せてくれよ。」と言ってもらい、本当にきれいに納まった経験などあります。何もなかった空間が、ちゃんと使われる場所として仕上がっていく過程に、強いやりがいがありました。
一方で、その現場を支えている工事会社さんからは、若い人が入ってこない、入っても辞めていく、という話をよく聞いていました。「自分は工事の仕事に魅力を感じていたのに、毎日現場に入っている人たちが、なぜそう感じてしまうのか。この仕事がなくなっていくっていうのはすごくもったいないし、何とかできないかな」と思ったのが現場Hubを立ち上げたきっかけです。
—【若狭】起業そのものには、もともと関心があったのでしょうか。
【岡田】ありました。学生の頃から、少人数の会社でインターンをしていて、事業を立ち上げて、困っている人の課題を解決していくことに魅力を感じていましたね。もともとは弁護士になりたくて大学に入ったのですが、本当に困っている人の役に立つ方法は、事業の形でもあり得ると思うようになりました。
そして、起業するなら、「誰の課題を解決したいのか」を考えた時、昔一緒に工事をやっていた現場の皆さんの顔が浮かびました。だから、建設業界をどうにかしたいという思いが自分の起業の原点になっています。
現場で見えていた課題とは
—【若狭】当時、建設業界の課題はどのように見えていたのでしょうか。
【岡田】最初から、現場Hubを作ろうと思っていたわけではありませんでした。課題が大きすぎて、何をどう変えればこの業界がもっと元気になって、人気のある業界になるのか、当時はまだはっきり分からなかったためです。
ただ、そういった中でも営業時代にずっと印象に残っていたことがありました。夏場は忙しい空調会社さんが秋口になると急に暇になって、「工事の仕事がないか」という相談をしてくれたことです。そこから、繁忙期と閑散期の差が経営に大きく影響していると実感しました。
その状況のなかで、若い人が入ってこない、入っても辞めてしまう、という話も重なっていたんです。「現場の仕事そのものは、すごく面白い。技術もあるし、経験が積み重なるほど価値も出るにもかかわらず、現場を支える会社ほど人の問題で苦しんでいる」そこに、自分の中では大きな矛盾がありました。
そういった点から、現場Hubの中では、その課題を3つのレベルで整理しています。
1つ目は、案件管理や見積り、発注、報告書作成、写真整理、スケジュール調整といった日々の業務負担です。個々の作業が重いだけでなく、業務同士のつながりが弱く、転記や確認が何度も発生してしまう点が大きな負担になっていました。
2つ目は、顧客管理です。設備情報や過去の履歴が十分に残らず、情報も個人や複数の場所に分散しやすいため、次の対応や提案につながりにくい状態がありました。
3つ目は、人の課題です。採用、定着、属人化といった問題は、業務基盤の弱さとも深くつながっています。
そのため、人の問題を解決するためにも、まず業務の土台から変える必要があると思っていました。現場Hubを考えるうえでの出発点になりましたね。
現場Hubはどのように生まれたのか
—【若狭】プロダクト開発は、どのように始まったのでしょうか。
【岡田】最初の発想は、もっと顧客管理に近いものでした。先々の改修工事やメンテナンスにつながる情報をちゃんと残せれば、閑散期にも仕事をつくりやすくなるのではないかと思ったんです。
ただ、自分はビジネスサイドの人間だったので、アプリをどう作ればいいのか分からない状態でした。周囲に、「こういう課題がある、こういうものが必要だと熱弁しても、いいアイディアだね」とは言われるけれど、一緒にやる仲間は見つかりませんでした。何十人に話しても、誰も一緒にやってくれなかったですね。
転機になったのは、大学時代から仲の良かった沖永(現・取締役CTO)と再会したことです。彼は大学の同期で、同じ法学部でもありました。卒業後は全然会っていなかったのですが、クラブハウスという当時流行っていたSNSがきっかけで久しぶりに話すことになりました。
その時、彼はエンジニアとして仕事をしていたものの、「自分の事業を持ちたい、ユーザーの顔が見える仕事がしたい」と話していました。つまり、私には強い課題意識があり、彼には問題を解決するためのアプリを形にする技術がありました。その点が噛み合って、一緒に立ち上げを行ったという流れですね。
立ち上げ初期は、工事会社さんの事務所に間借りして、職人さんと同じ空間にいました。毎日アプリを使ってもらって、その場でフィードバックをもらい、立ち上げ前からインタビューも重ねて、導入先ではほぼ常駐に近いぐらい入り込んでいました。
そのため、机の上で作ったものというより、現場の声に揉まれて形になったプロダクトだと思っています。
まとめ–BuildApp編集部感想–
ここまで岡田氏に建設業で感じていた課題と建設Hubが生まれた背景について詳しくお伺いしました。
後編では、現場Hubが実現したことやビジョンについて、今後の展開などについてお聞きします。
※【後編】公開予定:5月18日(月)AM_7:00