【BIMの日 独自取材③】BIMと関連するデジタル情報の連携や活用事例の研究|情報連携技術WG 柴田 英昭氏(FMシステム)
2022年2月22日に行われた「BIMの日」にて独自取材を行いました。
「BIMの日」とは、BIM建築やそれを取り巻く業務に求められる価値を考えることで、BIM の位置付けを改めて見直し、今後の活用のヒントになるようなシンポジウムです。BIM活用の生の声を全8回の連載にてお届けします。
第3回は、情報連携技術WG 柴田 英昭氏のWG発表です。BIMと関連するデジタル情報の連携や活用事例の研究についてのレポートを紹介します。
▼「BIMの日」その他の回の連載記事はこちら▼
第一回連載:BIMの祖型―CAD黎明期の試みに学ぶ | 建築情報学技術研究WG 種田 元晴氏(文化学園大学)
第二回連載: コロナ禍で見えてきたキャンパスBIM-FMのためのIPD | IPDコラボレーション研究WG 飯島 憲一氏(大阪電気通信大学)
第三回連載:BIMと関連するデジタル情報の連携や活用事例の研究|情報連携技術WG 柴田 英昭氏(FMシステム)※本記事です
第四回連載:建築性能の見える化によるSDGs 達成への貢献|林 立也氏(千葉大学)
第五回連載:デジタルツインが切り拓く近未来の世界~映画の世界が現実に~ |及川 洋光氏(清水建設)
第六回連載:from Room to Planet Mixed Reality ~空間デジタル技術の拡がり~ |伊藤 武仙様(ホロラボ)
目次
はじめに
情報連携技術WGではBIMと関連するデジタル情報の連携について調査研究をしています。2021年建築CAD・BIM利用実態調査報告では、デジタル情報の連携が各分野間で進捗していないことが明らかになりました。今回は、各分野での最新の連携事例についてWGメンバーから報告をまとめ、取り上げていました。分野は建築ライフサイクルを網羅する形で大きく5つのパートに分けています。WG主査:柴田氏の発表をレポートします。
構想→設計 安井建築設計事務所 幡宮氏
発注者や建物用途により、求められる要件は様々です。必要な検討を手早く行うために、都度、適したソフトを活用しています。例えば、PLATEAU、点群、国土地理院データなどです。取り込みの際に適切なプラグインソフトがないこともあり、その場合自社開発して対応しています。業務効率化の面でもスムーズな情報連携がポイントとなっています。近年はフロートローディングの思想により構想と設計のデータの境は曖昧になっています。設計段階に近づくにつれ、BIMソフト中心に展開していくイメージです。
意匠→環境 アルゴリズムデザインラボ 重村氏
これまで環境分析は意匠設計の後工程となりがちでした。しかし、近年のBIM導入で3次元設計が可能となり、環境分析が意匠設計と同時にできる時代になりました。BIMから環境解析に必要な3Dモデルのみを抽出し、解析した結果をまたBIMに戻すというような柔軟な使い方が重要になります。具体的にはBIMと環境解析ソフト:クライメイトスタジオを利用すると、解析時間や精度が圧倒的に向上したという事例があります。
意匠→構造 ARUP 富岡氏
これまで、意匠設計から構造設計へのデータ受け渡しでは手作業が非常に多くなっていました。PDFやAutoCADの2次元データはそのままでは構造解析ツールに取り込めず、前段階としてSS7やmidasで3次元化データに変換する必要がありました。それは全て手作業でした。現在は意匠設計からのデータがライノセラス→グラスホッパー→解析ツールという流れが自動化できつつあり、手間が省けるようになってきています。
逆方向の受け渡し、構造設計から意匠設計へのデータも同様にこれまでは手作業が多くありましたが、グラスホッパーやライノセラス、Revitを活用することで、図面化に大幅に工数を削減し、設計者へデータを渡すことが可能になっています。
これまで1週間かかっていたものが2日で終わってしまうという感覚です。大幅な工程短縮につながっています。エラーチェックがスムーズになった点もメリットだと言えます。
設計→施工 竹中工務店 山崎氏
これまで、施工に関わるゼネコン、サブコン、協力会社などは各々のワークスペースで情報活用をしていました。これからはより多くのメンバーで設計・施工の情報を共有できる場を活用する方向を目指しています。
竹中工務店ではStreamBIMを活用しています。BIMの共有だけでなく、課題解決のためのコミュニケーションや見える化も同時に行っています。ポイントは“みんなで階段を上がっていくこと”と“適切なアクセスコントロール”と考えています。
施工→FM FMシステム 柴田氏
FMフェーズでは不動産管理、ワークプレイス、メンテナンス、統合サービス、エネルギーなど様々な業務があり、各情報が連携していきます。さらに運営情報として、BMS、BIM/CADが取り込まれていきます。また、性能検証のデータも設計施工へフィードバックされます。FMではこのような建築に関するあらゆる情報の活用可能性があります。