AIで配筋検査するシステム「CONSAIT(コンサイト)」の活用事例について|深堀り取材【毎月更新】
建築BIM加速化事業にともない、BIMやDX化への注目および実施速度が本格化しています。第35回は、AIで配筋検査するシステム「CONSAIT(コンサイト)」の活用事例について解説します。
目次
AIで配筋検査するシステム「CONSAIT(コンサイト)」をゼネコン21社による協議会に提供
BIMとの関連で鉄筋工事を取り巻くデジタル援用が急速に進みつつある。施工BIMの援用の習熟度が高まる中で、複雑な鉄筋のモデル化を実施する事例も散見できる。構造計算データと仕様書から鉄筋部材をBIM上で自動配置し、モデル化するシステムの利用も進んでいる。精度の高いデバイスの登場により、現実世界をスキャンし、デジタルによって鉄筋工事など施工現場の検証を行う事例も増えている。
プライム ライフ テクノロジーズ(港区)では、建設DXサービス「CONSAIT(コンサイト)」の第一弾として、配筋検査品質の向上と効率化を支援する配筋検査専用アプリ「CONSAIT Pro(プロ)配筋検査」+オプションであるAIカメラ「CONSAIT Eye(アイ)」を共同開発してきた配筋検査システム協議会ゼネコン21※社向けに提供している。
※配筋検査システム協議会ゼネコン21:青木あすなろ建設、淺沼組、安藤・間、奥村組、北野建設、熊谷組、五洋建設、大末建設 髙松建設、 鉄建建設、東急建設、戸田建設、飛島建設、西松建設、日本国土開発、長谷工コーポレーション、ピーエス三菱、松村組、村本建設、矢作建設工業。
安藤ハザマが大津市で新築の和菓子の老舗たねやの新店舗に「CONSAIT(コンサイト)」適用
安藤ハザマでは、「CONSAIT(コンサイト)」AI配筋検査システムを施工中の建築現場における検査・記録に適用し、現場管理業務の生産性向上が実現することを確認したと公表した。現在、実施している滋賀県大津市に新築オープンする和菓子の老舗たねやの新店舗「LAGO(ラーゴ)大津」工事に適用したもの。
「CONSAIT(コンサイト)」の適用によって配筋写真や検査の効率化に加えて、進捗状況の見える化により作業所内のコミュニケーションが円滑かつタイムリーになった。業務の効率化だけでなく、「CONSAIT(コンサイト)」を用いた現場作業を通じて若手社員が鉄筋工事の知見を学ぶ機会も増えている。今後は、RC造の建築現場を中心に「CONSAIT(コンサイト)」の適用を拡大し、更なる生産性向上を目指していく。
1階から屋上の柱・梁・壁・スラブ+階段・パラペットなどの配筋に至る地上躯体全てに適用
老舗たねやの新店舗「LAGO(ラーゴ)大津」の鉄筋コンクリート造2階建ての建物の1階から屋上の柱・梁・壁・スラブに加えて、階段・パラペットなどの配筋に至る地上躯体全ての部位に「CONSAIT(コンサイト)」を適用した。
検査は、専用の3眼ステレオカメラを搭載したタブレット端末を用いて行い、柱、梁、壁及びスラブ配筋を立体的に検知し、鉄筋径・本数・ピッチを自動計測、帳票に記録した。ステレオカメラ方式による計測が困難な定着長さや重ね継手長さなどについては、電子マーカーと電子黒板を使用し、配筋写真を撮影している。これらの計測結果・配筋写真は、目視検査結果(かぶり厚さなど)と共に平面図に関連付けて一元管理した。
自動計測・電子マーカーの使用・帳票の自動作成により現場管理業務の時間を約60%短縮
生産性向上の成果について、具体的に検証してみる。最初に成果として現れたのは、効率良く配筋を写真撮影し、検査をすることが可能となったことによる現場管理業務の時間短縮であった。適用した配筋の数量について、従来手法で管理した場合と比較すると、自動計測、電子マーカーの使用及び帳票の自動作成によって現場管理業務の時間を約60%短縮できた。配筋写真用黒板の事前準備や帳票整理を※BPOで対応した場合でも、現場での検査・記録の部分で効率化が図れ、約40%の時間短縮効果が認められた。
検査記録の共有による管理やコミュニケーションの円滑化も認められた。現場作業所内のメンバー間で配筋写真や検査の進捗を共有したことによって、検査担当者だけでなく、作業所長や作業所メンバーも状況を確認できるようになり、現場作業所内のコミュニケーションが円滑になった。写真や検査記録は、平面図上に関連付けてクラウドで一元管理するため、各自のパソコンやタブレット端末から複数人でタイムリーに確認でき、品質管理や工程管理にも有用であった。
若手職員の育成、ヒューマンエラーの防止にも成果が見られた。撮影部位、検査箇所、検査項目などをパソコンやタブレット端末上で視覚的に確認できるため、若手職員の鉄筋工事に対する理解が深まった。検査担当者と「CONSAIT(コンサイト)」によるダブルチェックを行うことで見落としなどのヒューマンエラーの防止にも有用であった。
※BPO:Busuiness Process Outsourcing ビジネス・プロセス・アウトソーシング。自社の業務を外部に委託するアウトソーシングの一形態。バックオフィス業務や自社にノウハウのない業務などを外部の専門企業に委託することでコスト削減や業務品質の向上を期待できる。企業の業務プロセスの一部を専門業者に外部委託する経営戦略も指す。
「CONSAIT Basic」「CONSAIT Pro配筋検査」「CONSAIT Eye」の3つのサービスで構成
建設DXサービス「CONSAIT(コンサイト)では、パナソニックのAI&ICT技術を活用して開発した「CONSAIT Eye」が配筋を立体的に検知、鉄筋径、本数、ピッチを計測、登録した設計データと自動照合し、帳票フォーマットを自動作成する。これによって検査前の「検査用データ加工」「帳票作成」が「CONSAIT Pro配筋検査」で効率化されるなど、検査や記録の正確性及び検査品質の向上が可能となり、合わせて配筋検査の煩雑な作業効率化、作業時間の大幅短縮を実現する。
プライム ライフ テクノロジーズが行った実証実験による試算では、1カ所当たりの検査時間で比較すると、測定箇所当たりの事前準備・検査・写真記録・帳票化全ての合計時間を約半減化することに成功している。
「CONSAIT(コンサイト)は、「CONSAIT Basic」、「CONSAIT Pro配筋検査」、「CONSAIT Eye」の3つのサービスで構成されている。
「CONSAIT Basic」は、日々の建設現場の記録業務を効率化するアプリだ。全ての工種に対応し、使用頻度の高い機能(電子小黒板の簡単作成・写真撮影・是正管理・図面管理・報告書作成)に絞り、シンプルで直感的な操作で使いやすい。
「CONSAIT Pro配筋検査」は、検査前の「検査用データ加工」や「検査項目の設定」、「帳票作成」といった配筋検査業務を効率化するアプリだ。
「CONSAIT Eye」は、鉄筋を認識可能なAIと正確な計測を可能とする3眼カメラを搭載した専用デバイスだ。AIカメラ技術開発は、パナソニック、エレクトリックワークス、パーソルAVCテクノロジーが担当している。
「CONSAIT Eye」で撮影した画像を基に配筋を立体的に検知し、鉄筋径、本数、ピッチを計測、登録した設計データと自動照合し、帳票フォーマットを自動作成する。土木現場ではAIカメラの導入も進んでいるが、より正確性が求められ、導入が難しいとされる建築現場へのAI専用カメラ導入によるDX化で配筋検査業務に革新をもたらしている。土木現場向け対応も順次導入を予定。