現実世界をデジタル化して援用する最新事例について|深堀り取材【毎月更新】
建築BIM加速化事業にともない、BIMやDX化への注目および実施速度が本格化しています。第33回は、現実世界をデジタル化して援用する最新事例について解説します。
現実世界をセンシング、スキャニングすることでデジタルデータ化し、デジタルツインなど多様な用途、目的に援用する動きが顕著となっている。それらの最新動向を二つの事例から読み解き、活用促進へと繋げる。
目次
映像を自動的に3次元データに変換+建設施工・設備メンテにおけるデジタルツイン化実現
アプトポッド※1とLiberaware※2は、協働してアプトポッドが開発販売する産業向けの高速データストリーミング基盤「intdash」とLiberawareが開発する動画から3次元データを自動生成可能な「LAPIS」を連携することによって、ロボット・ドローンから収集した映像を自動的に3次元データに変換し、建設施工管理及び設備メンテンナスにおけるデジタルツイン化を実現する連携ソリューションを提供する。
データ収集から3次元データ生成までのワークフローの遠隔化・自動化と時間短縮を実現
Intdashでは、高速双方向のデータストリーミング環境を構築し、ロボット・ドローンの遠隔操作及び機体からのデータ収集を行うことが可能だ。LAPISでは、独自エンジンによって映像データから3次元点群や各種3次元データを自動生成することができる。
それらのソリューションによって遠隔操作するロボット・ドローンからストリーミングされる映像データをLAPISに自動転送し、LAPISのデータ生成エンジンにより様々なフォーマットの3次元データを自動生成することで、データ収集から3次元データ生成までのワークフローの遠隔化・自動化および時間短縮を可能にしている。
IoTとデータ解析技術を組み合わせたソリューションでデジタルツインによる効率化を提案
今般、提供するソリューションによって従来のワークフローに比べ、3次元データ取得に要するコストの削減や所要時間の短縮を実現する。ロボット・ドローンの遠隔操作によるデータ収集が可能なため、狭所や危険エリアなど人が入りにくい箇所でのデータ収集が可能となる。
建設業のみならず、あらゆる産業において労働人口は減少傾向にあり、現場での省人化、効率化が急務となっている。提供するソリューションでは、3次元データを用いたデジタルツイン化によって建設施工における出来形確認、プラントやインフラ設備での点検業務の遠隔化とワークフローの自動化を実現し、業務効率向上を目指している。
アプトポッドとLiberawareは、両者のIoT技術とデータ解析技術を組み合わせたソリューションを進化させ、建設、プラント、インフラ分野など、幅広い顧客ニーズに向けてデジタルツインによる効率化を提案していく。
◇デモンストレーション動画
遠隔制御された4足歩行ロボットに搭載した360度カメラ映像から自動で3次元データを作成する。
https://www.youtube.com/watch?v=xhEJ_XZDLnA
※1:高速双方向なデータストリーミング技術に基づき、産業向けの高速IoTプラットフォームミドルウェア及びクライアントアプリケーションからエッジハードウェアまでワンストップで開発・提供するテクノロジー企業である。自動車、ロボット、建機、農機など、様々なモビリティや産業機器をクラウドへリアルタイムで接続し、高精細な遠隔データ収集と分析、リアルタイム監視、遠隔制御及びデジタルツインの実現など革新的な産業DXに貢献している。
※2:「誰もが安全な社会を作る」をミッションに掲げ、「狭くて、暗くて、危険な」かつ「屋内空間」の点検・計測に特化した世界最小級のドローン開発とドローンで収集した画像データを解析し、顧客に提供するインフラ点検・維持管理ソリューションを行っている。ビジョンでもある「見えないリスクを可視化する」ことに邁進し続け、人々に安全で平和な社会を提供する。
研究成果として衛星リモートセンシング技術を用いた「容積充足率マップ」を試験公開
三菱地所設計と一般財団法人リモート・センシング技術センター(RESTEC)では、2020年度より衛星リモートセンシング技術を活用したまちづくりに関する研究を行ってきたが、今般、研究成果の第1弾として衛星リモートセンシング技術を用いた「容積充足率マップ」を試験公開した。
◇容積充足率マップへのアクセス
推奨環境:Google Chrome、Safari、Firefox、Microsoft Edge,Operaの最新安定版
https://www.mjd.co.jp/remote-sensing/
土地活用やまちづくりの基礎資料として広く用いることが可能となる「容積充足率マップ」
人工衛星に搭載したセンサで、遠隔(リモート)から地球を観測(センシング)する「衛星リモートセンシング」は、 地表面に関する多様なデータを高精度に取得できることから利活用に注目が集まっている。
三菱地所設計と RESTEC では、これらの最先端の空間情報技術を用いた「データ駆動型の新たなまちづくりのあり方」として、公共空間の利活用を含む将来のまちづくりの可能性を探り、実現すべく研究を行ってきた。
今般、公開した「容積充足率マップ」は、土地活用やまちづくりの基礎資料として用いることが可能となる、広範囲に渡る既存建物情報の可視化サービスである。当該システムの更なる発展と普及によって土地活用やまちづくりにおける新たな可能性を広げることを目指している。
既存建物の容積率を推定することにで容積充足率を広範囲に推定・可視化することが可能
衛星リモートセンシング技術とは、地球上の海、森、都市、雲などが放射・反射する電磁波を人工衛星に搭載したセンサで観測し、地表面のさまざまな空間情報を取得するものだ。都市環境においては、土地被覆や地表面温度、標高を始めとする多種のデータが取得・解析でき、活用の可能性が大きく広がっている。
「まちづくりDX事業」に取り組む三菱地所設計とリモートセンシングの先端技術をもつ RESTEC が協働することによって、都市を取り巻く環境の変化に柔軟に対応しつつ、開発用地の調査からエリアマネジメントまでの一貫したコンサルティングを提供することを目指している。
「容積充足率マップ」では、AW3Dデータ※を用いて既存建物の容積率を推定することによって容積充足率(現況建物の容積率・指定容積率)を広範囲に推定、可視化することが可能になった。
今後も人工衛星データを活用することにより容積率に関する情報に限らず、建物・都市に関する多様な情報を収集・可視化し、まちづくりに活かすことができるデータプラットフォームの開発を目指していく。事業者による開発事業用地の検索・調査、行政による都市計画検討の基礎資料、コンサルタントや設計事務所による設計・マスタープラン検討の基礎資料としても活用できるシステムの開発に取り組んでいく。
※AW3Dデータ:RESTEC とNTT データが共同で開発・販売している3次元地図データ。衛星画像を活用し、都市部では最高0.5m解像度の 3次元データを提供している。
◇容積充足率マップへのアクセス
推奨環境:Google Chrome、Safari、Firefox、Microsoft Edge,Operaの最新安定版
https://www.mjd.co.jp/remote-sensing/
左図:容積充足率マップ(C)Mitsubishi Jisho Design Inc., RESTEC
・AW3D Building(C)2024 Maxar Technologies, NTT DATA Japan Corporation
右図:測量法に基づく国土地理院⻑承認(使用)R 6JHs 355 東京都都市整備局都市計画決定情報GISデータをもとに作成(C)OpenStreetMap contributors