CDE(共通データ環境)の重要性と効果|BIMコンサルの視点で読み解く
毎月25日更新「BIMコンサルの視点で読み解く」は株式会社AMDlab(本社:兵庫県神戸市)のCEO 藤井 章弘氏による連載です。
今月はCDE(共通データ環境)についてです。
藤井氏は、BIMをはじめとする建設テックに精通した一級建築士の資格を持つ建築構造デザイナー/構造家です。BIMエキスパートの藤井氏が選んだ注目記事を見て、建設DXの最前線のキャッチアップに役立ててみてください。
BIMとCDE(共通データ環境)
これまで、BuildApp Newsの記事で、設計BIM(https://news.build-app.jp/article/21995/)や施工BIM(https://news.build-app.jp/article/24614/)のご紹介をしてきました。
世の中には様々な技術がありますが、ある技術を単体で使ってもできることは限られており、複数の技術を組み合わせることで初めて生まれる価値がたくさんあります。BIMも例に漏れず、他の技術と組み合わせることで更なる効果を生み出します。
共通データ環境(CDE:Common Data Environment)もその一つです。BIMソフトを使うだけでも実際に様々な業務はできるので、CDEについてはあまり聞き馴染みのない方も多いかもしれません。しかし、CDEは、世界的にも注目されており、BIMと合わせて今後一般的に使用されていくと考えられていますので、本稿で簡単にご説明できればと思います。
CDEとは
CDEとは、プロジェクト全体のドキュメント、グラフィカルモデルや非グラフィカルデータを収集、管理、配布するために使用される単一の情報源のことです。平たく言うと、全ての情報を管理するハブのようなものです。建築のプロジェクトは、多くの人が様々な情報を適宜交換することで成り立っています。
誰がどの情報をどこからどのタイミングで取得したかは、非常に複雑でそれらを追うことは業務上現実的ではありません。誤った情報を元に作業を進めてしまった、共有したつもりができていなかったなど、関係者同士の境目で起こるミスが多いのです。
大切なことは、プロジェクトに関わる全員が、正しい情報を適切なタイミングで取得できる環境にあることです。そこで、CDEのような全ての情報を一元管理する場所が必要になり、それがあることで下記に挙げるようなメリットを享受できます。
コラボレーションの改善
全ての情報を一元管理してプロジェクトを進めることができるため、コミュニケーションコストを削減し、関係者のコラボレーションを促進できる。
透明性とセキュリティの向上
CDEによって、関係者間での情報の透明性を高く保ちながら、管理も行いやすくなるので、情報の安全性をより高めることが可能になる。
CDEを運用するために
CDEは、BIM活用を前提としたISO規格であるISO19650においても言及されています。ISO19650については、BuildApp Newsのこちらの記事(https://news.build-app.jp/article/22818/)でも簡単にご紹介しておりますのでご参照ください。
ただし、ISOでは大きな考え方が示されているのみで、CDEの具体的な運用については個別で考える必要があります。BIMと合わせてCDEを整備して活用するには、相応の準備が必要です。例えば、命名規則や属性情報の分類や値の定義など各種データを適切に管理するには事前にルールが必要になります。
また、ISOでは、CDEにおける情報は、以下に示す4つのステータスで運用することが記されています。
Work in Progress
情報の作成者や作業チームが編集中の情報。他の人は閲覧やアクセスができない。
他の作業チームや発注者等との共有が承認された情報。
Published
詳細設計や施工、資産管理での使用が許可された情報。
Archive
情報トランザクションの記録。
それぞれのステータスは、基本的に誰かの承認をもらうことで変更され、必要に応じて各情報へのアクセス権を管理する必要があります。このように、システムを導入しただけではCDEの活用は難しく、責任者を決めて必要な運用のルールを整備する必要があります。
導入する企業それぞれに合う形で考えるべきこともあるので、見通しが立ちにくい場合は、専門家を入れて決めてしまって、運用フェーズまで一定期間並走するのも良いと思います。これはこうしておけば良かったなど、やってみてわかることは必ず出てくるので、徐々にブラッシュアップしていきます。作って終わりではなく、そうできるような体制や仕組みにしておいた方が良いです。
CDEについては、少し古いですがAutodesk社のこちらの記事(https://www.autodesk.com/autodesk-university/ja/article/ISO-19650-Common-Data-Environment-and-Autodesk-Construction-Cloud-2021)も参考になると思います。
その中でAutodesk BIM360(Autodesk Construction Cloud)が、CDEとして必要な多くの機能が搭載されていると紹介されており、中にはベストプラクティスも記載されているので、初めての方もCDEとして活用しやすいかと思います。ただし、有料のサービスですので使用が難しい方もいらっしゃるかもしれませんが、例えば他のCDEの選定にあたってどういった機能があると良さそうかなどといった点は参考になると思います。
CDEの導入は、運用を考えるとハードルが高そうに思えますが、用意するルールなどはBIMを活用することを考えれば、用意しておくべきものばかりですので、享受できるメリットを考えるとBIMと共に活用することをお薦めします。ただし、コストもかかり、うまく使おうとすると事前準備も大変、プロジェクトの規模が小さかったり関係者も少なかったりなど、人によって状況は様々ですので、現状全員に薦めるかというとそうではありません。
BIMはBIMで奥が深いので、まだBIMに触れたことがない方などは、まずはCDEのことよりもBIMの理解を深めることや実際に使ってみることに専念するのが良いと思います。CDEもまた奥が深く、本稿でご紹介できる情報には限りがあるため、本稿がCDEやBIMの理解を深めるきっかけになれば幸いです。