西松建設のBIMシステム活用|深堀り取材【毎月更新】
建築BIM加速化事業にともない、BIMやDX化への注目および実施速度が本格化しています。第12回は、西松建設におけるBIMシステム活用について解説します。
目次
BIMシステムによる施工図自動出力
西松建設では、施工現場においてBIMシステムから精度の高い施工図を自動出力するシステムの適用を開始した。
同システムにおいては、熟練技術者の暗黙知を形式知化、見える化し、BIMシステムに落とし込むことで、設計と施工の連動性が強化され、精度の高い施工図作成や効率向上を可能にしている。加えて、着工前の早い段階で顧客からの要求の実現性や施工の成立性を見極めることで、着工後の調整や手戻りを削減する効果も期待できる。
2030年までに施工図を不要とする「西松生産設計BIMシステム」の構築を目指す
同システムを自社施工の物流施設5プロジェクトにおいて実践適用し効果を実証している。「適用物件例」に図示したように、地上3階、S造、延べ床面積約100,000平米の物流施設のケースをみてみよう。
具体的には、施工図及び施工の情報を集約したBIMモデル(生産設計モデル)から加筆修正を最小とする施工図(杭伏図・基礎伏図・基礎断面図)を自動で出力している。
2024年度からは全ての物流施設プロジェクトに同システムを適用するだけでなく、集合住宅プロジェクトなど他の用途の建物へも適用範囲を拡大する予定となっている。2027年までには、設計BIMと連動した生産設計BIMを生産設計・工事計画・施工領域まで一気通貫で活用しながら横断的な変革を推進し、2030年までに施工図を不要とする「西松生産設計BIMシステム」の構築を目指すことで「より良い建築物を、より早く、より安く提供し、顧客価値と企業価値を高める」ことを実現するとしている。
現状では、設計での整合や施工図検討時の施工検討項目との整合は複雑で手戻りが発生する
設計と施工を架橋する施工図は、建築物全体における顧客要求・品質・コスト・工期面での実現性を担保する重要な図面であり、早期での施工検討の精度の確保は生産性向上に直結する。
一方で、設計での整合や施工図検討時の施工検討項目との整合は複雑で手戻りが発生しやすく、熟練技術者同士の暗黙知やノウハウによる擦り合わせに依存せざるを得ない状況がある。更には設計図から施工図への非効率な転記や施工図作成時の記入漏れ、複数図面に対する重複した修正作業なども非効率を顕在させている。
それらの対策として、一般的な設計段階の設計BIMから出力した2次元図面を施工図として活用しようとしても、詳細な施工要件を付与・修正しながら仕上げていく必要があり、変更のたびにBIMと施工図を同期更新する非効率を増長させることになる。その結果、着工後に施工検討項目を精査・整合し、施工図を作成することが一般的となっており、施工現場の手戻りや調整の増加など生産性を低下させる原因となっていた。
適用物件例
BIMでの設計・施工時の情報連携や半自動図面化ツールで、加筆修正が最少の施工図を出図する
2030年までに稼働を目指す「西松生産設計 BIMシステム」の概要をみてみよう。熟練技術者の暗黙的ノウハウを判定式やロジックなどを形式知化したデータとして実装し、設計と施工の連動性を強化したシステムとして定義付けている。
「変革後の業務流れ(西松生産設計 BIMシステム)」において図示したように、施工検討項目の90%を設計段階へフロントローディングして決定する業務プロセスに沿って、施工図レベルの情報を集約したBIM を活用し熟成することで、建築設計と同時に施工成立性を考慮した精度の高いBIMを早期に構築する。それによって、BIM上での設計・施工時の情報連携や半自動図面化ツールによって加筆修正を最小にした施工図の出図が可能になる。
加えて、熟練技術者の暗黙知やノウハウを形式知化したチェックリストやBIMのアドインツールを活用することで、経験値に依らない業務レベルの平準化や若手の技術力向上が実現する。
今後の展開