ゼロカーボンシティとは|簡単にメリット・事例を解説

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著者:小日向

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「ゼロカーボンシティ」についてピックアップします。SDGsな街づくりが求められている中で、環境に優しい都市計画の必要性が高まっています。本記事ではゼロカーボンシティのメリットや具体事例の他、建設業との関わりについてもご紹介します。

ゼロカーボンシティとは

ゼロカーボンシティとは、環境省の「2050年二酸化炭素排出実質ゼロ」に取り組むことを表明した地方公共団体のことです。ここでの「実質排出量ゼロ」とは、CO2などの温室効果ガスの人為的な発生源による排出量と、森林等の吸収源による除去量との間の均衡を達成することを指します。

ゼロカーボンシティは、気候変動や環境問題に対処するための新しいアプローチの一つです。これは、都市が温室効果ガスの排出をゼロに近づけることを目指す取り組みです。この考え方は、世界各地で持続可能な都市開発の一環として注目されています。

ゼロカーボンが注目されている背景

  • 2050年カーボンニュートラル宣言
  • SDGsの浸透

近年気候変動が深刻化し、温暖化や自然災害が増加しています。環境への影響を減らすため、日本では2020年10月に「2050年カーボンニュートラル宣言」を発表しています。これは温室効果ガスの排出を全体としてゼロにする挑戦で、幅広い産業分野での努力が求められています。ゼロカーボンシティは、この課題に取り組むための新たな取り組みとして注目を集めています。

また、政府や企業、市民社会の関係者が、SDGsへの移行やエネルギー効率の向上、循環型経済の構築など、さまざまな取り組みを推進しています。こういった背景から、ゼロカーボンが期待されているのです。

ゼロカーボンシティの事例

ここでは、ゼロカーボンシティの具体的な事例をご紹介します。

①山梨県|全国初のゼロカーボンシティ

山梨県は2009年に「CO2ゼロやまなし」を宣言し、2050年までにCO2排出実質ゼロを目指すことを掲げています。そして2021年には、全国で初めて「やまなしゼロカーボンシティ宣言」を行っています。

山梨県は日照時間が長く、多くの森林資源やそこから生まれる水資源など豊かな自然が魅力です。将来にわたり豊かな自然と人とが共生・調和できるよう、各自治体の特性を生かしながら、全県一丸となって今後さらに取り組みを推進する予定です。

②福岡県久留米市|ZEBで環境に優しい建築

福岡県久留米市では、2021年に「2050年までにゼロカーボンシティを目指す」ことを表明しました。具体的には「環境負荷が小さい都市への転換」としてZEHやZEBなど省エネ性能の高い建築物の普及を促進し、建築物の脱炭素化を図っています。

実際に、環境部庁舎の際にZEBの「BELS認証」を取得しました。これは、自治体所有の既存建築物において全国初となります。太陽光発電、蓄電池、断熱、LED照明といった設備の導入により、温室効果ガスの約80%削減に成功しています。

③東京都八王子市|ゼロカーボン

東京都八王子市では、2023年にゼロカーボンシティ宣言を表明しました。具体的には、下記の方針を掲げています。

  • 省エネ・再エネ・蓄エネ・高効率設備の導入による住宅・建築物のエネルギー消費量の削減
  • 最適な再生可能エネルギーの最大限の導入
  • デジタル技術を活用した脱炭素化の推進
  • みどりが持つ多面的機能の強化

2022年には東京電力パワーグリッド社と協定し、相互の強みを最大限活かした地域課題の解決に協働して取り組んでいます。

ゼロカーボンシティのメリット

ゼロカーボンシティのメリットとしては、下記が挙げられます。

  • 環境省からの支援がある
  • 地域活性化に繋がる

ゼロカーボンシティ宣言を表明することで、環境省からの支援が受けられます。たとえば2023年度の場合、「ゼロカーボンシティ実現に向けた地域の気候変動対策基盤整備事業」に8億円の予算が割り振られ、下記の支援が行われていました。

  • ①地方公共団体の気候変動対策や温室効果ガス排出量等の現状把握(見える化)支援
  • ②地方公共団体実行計画策定や計画の具体的対策・施策の検討支援
  • ③再エネの最大限の導入のための地域の合意形成等の支援

地方公共団体における脱炭素化(ゼロカーボンシティの実現)のための基礎情報を整備・提供することで、省エネ施策を促進する狙いがあります。

またゼロカーボンシティには、地域活性化の効果も期待できます。再エネ活用により新たな雇用が生まれて新規人口流入が見込めたり、エネルギーの自給自足による自治体の強靭化といった点がメリットです。

建設業のゼロカーボンシティの取り組み

建設業界でも、CO2排出量の削減が進められています。具体的には「設計段階」と「施工段階」に大きく分けられます。

設計段階での取り組み

建設業では、施工段階よりも供用時の建物からのCO2排出量の方が圧倒的に多いという特徴があります。そのため設計段階では、「ビルの運用段階のZEB(ネット・ゼロ・エネルギー・ビル)化」、「ZEH(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)の普及・推進」といった取り組みが求められます。

施工段階での取り組み

施工段階では、燃料や電力使用でのCO2排出がメインとなります。燃料においては、ダンプトラックや発電機と言った重機の軽油の使用量が多いです。また電力エネルギーは、工事での機器、事務所のエアコンや照明、現場の送風機などが挙げられるでしょう。

まだまだ化石燃料に依存している部分が大きいため、低炭素燃料の利用やハイブリッド・EV建機の導入が期待されています。

まとめ|ゼロカーボンシティで環境に優しい街づくり

ゼロカーボンシティは、持続可能な社会の実現のために欠かせない取り組みです。全国の多くの自治体で取り組みが始まっており、今後も増えることが予想されます。ZEBや再エネ発電など建設業との関わりも深く、さらなる広がりに注目です。