建設業の事故原因TOPは〇〇!デジタル活用の安全管理も紹介

トレンドワード:「デジタル×現場の安全」

デジタル×現場の安全」についてピックアップします。建設業は事故が起こりやすい点が課題ですが、どのように対策していけばいいのでしょうか。本記事では建設業の主な事故原因や、デジタル技術や最新ツールを用いた安全対策方法についてご紹介していきます。

建設業の労災発生状況

厚生労働省の統計によると、2021年度の建設業での死亡者は「288人」でした。2020年度は新型コロナウイルスによる工事減により事故も少なかったものの、2021年度にはほぼ全業種で増加してしまいました。

建設業の死亡者は全産業の中で最も多く、現場作業が「危険と隣り合わせ」であることが伺えます。建設業では重機や建材を扱うほか、高所など不安定な場所での作業も多いことが事故の要因となっています。

事故の原因TOPは?

2021年度統計の建設業における労働災害発生状況は、以下の通りです。

  • 1位:墜落・転落 (110人)
  • 2位:崩壊・倒壊(31人)
  • 3位:はさまれ・巻き込まれ(27人)
  • 4位:交通事故(道路)(25人)
  • 5位:激突され(19人)
  • 6位:飛来・落下 (10人)

死亡者は「墜落・転落」によるものが最も多く、全体の38.2%を占めるという結果になりました。厚生労働省ではこれを踏まえて、「足場からの墜落・転落災害防止総合対策推進要綱」に基づく「より安全な措置」等の一層の普及を促進しています。

またフルハーネス型墜落制止用器具の使用の徹底、はしごや脚立に関するチェックリストの活用など、現場での安全対策を呼び掛けています。

どうして事故が起こる?

建設現場での事故が起こる原因としては、下記が考えられるでしょう。

  • 若年層の経験不足
  • 高齢化による作業能力の低下
  • 慣れによる過信
  • 労働環境の未整備

まず労働災害発生率は、「若年層と高年齢労働者で高い」傾向が見られます。65〜74歳の労働災害発生率(千人率)を30歳前後の最小値と比べると、「男性で約2倍・女性で約3倍」です。やはり経験の少ない若年層のミスや、高齢化による認知力・体力の低下は事故の要因となってしまいます。

実際、建設業就業者は「55歳以上が約34%、29歳以下が約11%」と高齢化が進行しています。現場での安全管理のほか、次世代への技術承継も大きな課題です。

また現場作業に慣れてくると「このくらいなら大丈夫」「前もOKだったから今回もいいだろう」という考えに陥りがちです。しかし「慣れによる過信」は、事故を引き起こす原因となってしまいます。

人間誰でもミスをするものなので、失敗を前提とした環境を整えるべきです。しかし建設現場での労働環境は未整備の点が多く、まだまだ「現場力」に頼っているのが現状となっています。

現場の安全管理を紹介|デジタル技術や最新ツール活用

ここでは、建設現場での安全管理のために導入されているツールをご紹介します。デジタル技術の活用により、現場作業をサポートしてくれます。

①遠隔臨場|無人化で事故防止

遠隔臨場とは「公共工事において、映像や音声を活用して遠隔地から建設現場の状況を確認すること」を指します。

ウェアラブルカメラやスマートフォンなどを使うことで、その場にいなくても現場の確認作業が行えるのです。国土交通省が2020年3月に策定し、公共工事の建設現場において監督・検査作業効率を改善することを目的としています。

遠隔臨場では現場に赴く時間を削減できるため、確認作業により多くの時間が割けます。またウェアラブルカメラを現場に設置しておけば、後から問題が発生してもすぐ再確認できます。

遠隔臨場について詳しくは、下記記事をご覧ください。

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②着るエアコン|熱中症対策

作業服大手のワークマンは、服の下に着用するタイプの「WindCore 冷暖房服 ICE×HEATER ペルチェベスト」を2023年5月に発売する予定です。

建設現場の事故は「熱中症」によるものも多いですが、着衣で温度調節することで事故の防止にも繋がります。スイッチで冷却・加熱を切り替えられるため、夏冬どちらでも対応可能です。

またファン付きウエアや水冷服にありがちな「着膨れする」というデメリットがなく、身体の動きを邪魔しません。今後AI技術の活用が進めば「体温や天候に合わせて自動温度調整してくれる服」も登場する可能性があります。

③ICT施工|機械による自動化

ICT施工(ICT土工)とは「建設生産プロセスの各段階で、ICTを全面的に活用する工事のこと」を指します。「施工だけ」「設計だけ」という一部分のみの導入ではなく、「プロセス全体」での導入となる点が特徴です。

ICT施工では、ドローンやICT建設機械といったIT技術を活用します。そのため作業人員や日数を短縮でき、スピーディーな工事が可能となります。ICT施工を行うことで、建設業の安全性向上・働き方改革の実現等が期待されているのです。

「ICT施工」について詳しくは、下記記事をご覧ください。

ICT施工とは|サイバー攻撃で「建機乗っ取り」はあり得る?

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④VR・MR|安全衛生教育

バーチャルリアリティ(VR)は、ヘッドマウントディスプレイの装着で臨場感のある体験ができる技術です。大林組では、VRを用いた施工管理者向け体験型教育システム「VRiel」を開発しています。

受講者はVR上を移動したり、首を動かして視界を上下左右に動かしたりすることで、工事現場と同様の体験が可能です。また施工管理に必要な図面や基準図、計測用のコンベックス等もすべてVR上で確認できます。実際の工事現場と同様の環境で学習することにより、不具合に気付く感性を身に付けられるのがメリットです。

仮想空間の利用が広がる昨今においては、デジタルに求められる役割はより一層大きくなってきています。

大林組と共同開発|VR施工管理者向け教育システム「VRiel(ヴリエル)」販売

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⑤BIM・CIM|デジタルツインでシミュレーション

前述のICT施工やVRMR技術を実用するには「詳細な3次元モデルデータ」が必要になります。そこで重要となってくるのが「BIMCIMの3次元モデル」です。

BIM・CIMとは「計画、調査、設計段階を一元管理する3次元モデル」のことを指します。それだけでなく施工、維持管理段階に渡って情報共有を容易にし、一連の建設生産・管理システムの効率化・高度化ができます。

BIMやCIMを導入することで、建設機械・危険物・他作業との干渉等の「危険個所をあらかじめ把握する」ことも可能です。ヒヤリハットや事故が起こりやすい箇所をBIM・CIM モデル上で共有・蓄積すれば、事故の減少にも貢献できるでしょう。

BIM・CIMは国土交通省も普及を推進しており、「建築BIM加速化事業」に80億円を投じて導入費用をサポートしています。詳しくは下記記事をご覧ください。

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まとめ|デジタル活用で現場の安全管理

建設現場では危険作業を伴うため、事故が多い傾向があります。人間は誰もがミスをするものなので、「個々のスキルやミスに左右されない環境づくり」が大切です。デジタル技術や最新ツールの導入で、事故の少ない現場環境を整えることが求められるでしょう。